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“画力”をもたらす小松菜奈という存在~MVコレクション~

アーティストにとっての「新曲」は、今や音源だけではなく、MV(ミュージックビデオ)の存在も、かつてより不可分になってきています。
それは、YouTubeの普及からして避けられないものでもありますし、洗練されたクオリティーのビデオの制作は、国内外に向けたセールスに影響を与えるという意味でも、重要な要素であることは間違いないわけです。

現在、日本の音楽シーンにはいろんなジャンルのMVがありますが、そんな中で僕が思うに、一人異彩を放つMV出演俳優がいます。

彼女の名前は、小松菜奈です。

ここ何年かでの、出演本数は群を抜いていると思いますし、特に注目作が多い印象です。その数なんと21本(2009年から。Wikipedia調べ)。
要するにひっぱりだこ、売れっ子なのです。
しかも、アーティストのジャンルや、キャリアなどはさまざまで、まさしく今の日本の音楽シーンを横断していると言える、語られるべき貴重な存在だと思います。


ここで改めて、小松菜奈が出演しているMVをいくつか紹介し、それぞれに感じた印象や、曲と映像の魅力について書いていきたいと思います。




●お別れの歌/never young beach(2016)

大好きなネバヤンの2ndアルバム、『fam fam』収録の一曲。
僕の印象からすると、当時「明るい未来」で一気に認知度を高めた彼らが、さらにこの「お別れの歌」で、シティポップバンド界隈の地位を確立した感がありました。

このMVによって、ますますネバヤンのことが好きになったのは事実ですが、小松菜奈の衝撃的な可愛さも記憶にこびり付きました。
この頃小松菜奈は、すでに映画『渇き。』や『溺れるナイフ』などで注目を集めていた若手女優でしたが、自分が観ていなかったこともあってか、知る人ぞ知るいい女優さん、ぐらいの印象でした。

何といっても驚いたのがその構成。なんと映像が始まってから3分以上経ってから曲に入るのです。
どこにでもいるカップルの過ごしてきた思い出を、四季とともに振り返る、、といった内容ですが、スマホで撮っていることを意識させる画角にすることで、より普通のカップルの日常を各々で投影でき、そして充分その世界に入り込んだところでイントロが流れる作り。エモーーっ!!!

さらにすごいのが、その季節に応じて小松菜奈の髪型が違うこと。

「な、なんや、このMVは、、!どうやって撮ってるん、、?」
「え、、?これマジで小松菜奈の元カレとの日常見れてる?見て大丈夫なやつなんか、、?」

という気持ちにさせられるのです。
もちろんそんなわけはなく、奥山由之という映像監督が実際に撮影したもの。
「職権乱用やないか!」と言いたくなるくらい羨ましくなるそんな映像です。可愛い、微笑ましいとともに、だんだん腹立ってきますからね。笑

ボーカル安部勇磨のシャウトと映像とが絡み合って、めちゃくちゃ感傷的になるMVです。


●そっけない/RADWIMPS(2018)

2018年発売、RADWIMPSの9thアルバム『ANTI ANTI GENERATION』収録曲。

歌詞の世界観から読み解くに、女の子に片思いした男の子の心情を描いていますが、MVではその感じも引っ張ってきつつ、より直接的な描写に終始しています。

おそらく大学のサークルかなんかの宅飲みだったんでしょうね。部屋がお酒やお菓子で散らばっている中、若者たちが思い思いの場所で寝ているわけですが、隣になった好きな女の子に、「酔っていた」という不可抗力込みでのどさくさに紛れ、キスとかしちゃうあの感じ。
めっちゃくちゃリアルやないか、、!!!!

相手役に今を時めく俳優、神尾風珠くん。この時はまだ少し幼さもあり、悪女に振り回されている表情が秀逸です。

そして何より小松菜奈の演技がこれまた最高!
ショートボブとメイクの感じがいかにも小悪魔って感じを演出していますし、あの立ち上がって帰るときの虚無の表情。
あの、急にスンっとなる感じに胸がギューっとさせられると同時に、男のアホさ加減も際立たされます。

それは歌詞にも表れていて、

俺じゃないなら早く行ってよ そんなに暇じゃないんだ

って言っているにも関わらず、サビの最後には

「いいよ」って 君が言うなら 暇はいくらでもあるから

アホやなーー。笑
なに一回強がっとんねん。絶対最初から暇やろ。
この辺がうまく表現されていますよね。

君の分厚い恋の履歴に残ることに
興味なんかないよ 君のたった一人に なる以外には

ここもいいですよね。
「分厚い」と表現することで、相手女性の豊富な経験値を表しています。そんないい具合のビッチさを映像で見せてくれていますよね。

女友達が寝たフリして笑っているあたり、相当な遊び人で有名なんでしょう。
くーーっ。もう学校行ってもあの子とのあの夜の事ばかり考えてまうてー!
、、、と、まあ、そんな20代前半を思い出すMVになっています。


●踊り子/Vaundy(2021)

サブスク時代をリードする、新進気鋭のアーティストVaundyの13thシングル。

アレンジさえ変えれば、どこか昭和歌謡を彷彿とさせるメロディーラインの「踊り子」ですが、MVに出演している小松菜奈のメイクや衣装も、どことなくムード歌謡の歌手のようです。

先述の2曲と決定的に違うのが、小松菜奈1人での出演であることです。
歌って踊る姿を見せているだけ——という、そこまでストーリー性がもたらされていないにも関わらず、映像として不思議と見れる、見ていられる仕上がりになっています。

そう、稚拙な言い方にはなるんですが、絵になるんですよね。
それは、絶景でもあり、絵画でもあるというか、そこに物語はなくとも、人々が見惚れるに値するエネルギーが充満しているのです。

色使いや印象的なビジュアルもあってか、曲を聴くと思わずMVの映像が脳内に浮かぶ—―。
そんな、映像と音楽がリンクする、聞き手冥利に尽きる名MVです。


●八月は君の名前/くるり(2022)

去年配信のシングル。長いキャリアを歩んできたくるりの原点回帰ともいえる、優しいギターロックの一曲です。
そのどこか暖かい音色と、歌声に包まれるかのような演技を見せる小松菜奈。非常にマッチしています。

理髪店の娘?もしくは弟の散髪についてきた姉?に見える女性が、大切な人(恋人?家族?)と電話をして微笑む姿。

くるりの文学的な歌詞による世界観に溶け込む映像は、見る者に余白を与えてくれます。

お互い遠い場所にいて、想い合っているのかな。
“僕”が想像する、名前を呼んでくれる”あなた”の姿なのかな。
次はいつ会えるのかな。

受けての想像が合わさって、初めて完成される世界を作り出していますね。

そして何よりその構成。展開の起伏が無いので一見退屈なMVに思えますが、退屈させないのが彼女が持つ「画力えぢから」です。
不思議と見られるし、なんならずっと見ていたい。電話(もしくは散髪)がいつまでも終わってほしくない。

そう思わせる彼女はまさしく、「ワンシチュエーション長回し女王」なのでです。


●rose/KID FRESINO(2023)

このMVもワンシチュエーション。
「そっけない」にしても、「八月は僕の名前」にしても、ずっと同じ部屋にいますからね。
女王はそう簡単に外には出ませんよー!ずっと中にいますよー!

ラッパーKID FRESINOが小松菜奈に対して何やらインタビューをしています。リリックに散りばめられた英語もあってか、どことなくアメリカのトークショーの雰囲気も。
コメントを引き出そうとするインタビュアーと、核心を突かれないために、はぐらかすように見えるゲストのやりとりは、駆け引きを楽しんでいるかのようです。

その後、なぜかトランプを使ったゲームを繰り広げます。
本人たちは楽しそうに、また駆け引きしながらゲームに興じています。

互いに愛嬌あふれる笑顔を見せながらも、変則的なビートや黒の背景も相まってか、「どうなるんだろう」という、不穏な空気も漂っています。
目が離せない、急に何が起こるか分からない、と気がついたら釘付けになってしまいます。
実際、急に水掛けますもんね。意味が分かりませんよね。笑

少し不穏で、危険な雰囲気を醸し出させているのは、彼女が持つ目力に他なりません。
全てを見透かされてしまうかのようなその瞳を見ると、このMVの「駆け引き」という設定がとても合っているなと思います。

フレシノでなくても、相手がどんな人間でも翻弄される瞳ですよね。
現に日本を代表する大俳優がオトされたわけですから。



おわりに

ということで、今回は小松菜奈という一人の役者さんにフォーカスした記事でした。
前々から「画力えぢからすごいな~」と思ってはいたのですが、最後のKID FRESINOのMVを観て、一回まとめたいなと思い、この記事を書きました。

いや~、ほんとにすごい女優さんですよね。
彼女が1人存在しているだけで、画が締まるというか、一気に作品のクオリティーが上がりますよね。
オファーするのが一流のアーティストばかりなのも納得です。


今後も音楽に関する記事を、独自の視点で書いていければなと思います!

それでは、また!




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