2023年 個人的に良かった曲ベスト10
普段からライブに足を運んだり、Instagramのストーリーズにお気に入りの曲を投稿するなどしている、自称・音楽好きの僕ですが、今年はありがたいことに、ABCラジオ「ミューパラ」で、単発ではありますがパーソナリティを2度務めさせてもらいました。
Instagramやnoteでの発信を見てくれたディレクターさんのお誘いあってのことです。
芸人時代に一度もラジオ番組を持てなかった人間が、辞めてからラジオの生放送で音楽を語れるなんて夢にも思っていませんでした。
先日12/20の放送でも、今年の良かった曲の振り返りをさせていただきましたが、改めてこの記事では、個人的マイベストの10曲を紹介させていただこうと思います!
売り上げや知名度などは一切関係ありません。完全な主観による、“良い”と思った曲ばかりです。
是非読んでいただいて、少しでも皆さんの好みの音楽が見つかれば幸いです。
※基本ルールとして、2023年リリースの作品に限定します
※あくまでランキングではありません。順不同です
●自由/tofubeats
言わずと知れた神戸出身の天才トラックメーカー、tofubeatsが今年5月に配信した一曲。
僕が芸人を引退したのが、今年の3月。
新たな生活を送る中で、心に刺さったのがこの曲です。
特に「辞める」という選択に後悔はなかったのですが、「今後どうなっていくだろう」という不安というか、周囲の目とかは気になるもの。
そんな時、tofubeatsは「きっと大丈夫さ」と言ってくれました。
「好きなことしたいなら freeになればいい」と背中を押してくれたのです。
僕からしたら「やっぱそうやんな!ありがとう!」という感じです。
お金なんかなくても、「自分で決めたコースに行く」という決断が、何よりも「リッチな気分」になれるのです。
また、キーボードとスネアのみという音のシンプルさが、tofubeats自身が言いたいことをより際立たせているように思います。
そんな彼は僕と同い年。
『水星』のヒットからおよそ10年。若くして成功した彼が放つ言葉は、違う10年を歩んだ、同じ1990年生まれの男を勇気づけたのです。
何かを辞める人、そして何かを始める人に聴いて欲しい一曲です。
●Bad Bitch 美学 Remix (feat. NENE, LANA, MaRI, AI & YURIYAN RETRIEVER)/Awich
今年、これが一番かっこよかったんじゃないでしょうか(ランキングじゃないとか言っておきながらすみません笑)。
次世代を担うフィメールラッパーが一堂に会した『Bad Bitch 美学』。
オリジナルバージョンは、Awich、NENE、LANA、MaRIの4人体制で5月に発表されましたが、7月にAwich名義でリリースされたこのRemixバージョンには、既存のメンバーに加え、AIとゆりやんレトリィバァが参加。
それぞれが思う“Bad Bitch”(イケてる女性)を、順番にサイファー形式でぶつけていくのですが、そのどれもがカッコいい。
母という立場。10代の勢い。アンチとの対峙———。
多種多様な境遇から繰り出される言葉の数々に胸を打たれますし、女性ラッパー、ひいては女性アーティストの地位向上を後押ししていると言っても過言ではない大名曲だと思います。
MaRIの「撮影中も保育園からの電話 それ私のリアル」や、
AIの「人は助け合ってこそ長く持つ」など、記憶に残るパンチラインがたくさんありますが、やはり印象的なのはゆりやんレトリィバァのバースです。
“スターダムにのし上がった芸人”という立場から吐き出されるリリックは、何回聞いても鳥肌が立ちます。
批判を受けやすい彼女の芸風は、改めて「ヒップホップ」なんだなと感じましたし、その思いの丈を決してSNSなどで軽はずみに発言せず、作品として昇華させる姿がめちゃくちゃカッコよく思えるのです。
そして、ちゃんと「面白い」。
「面白い」と「カッコいい」が表裏一体になっていて感動すら覚えます。
「芸人・ゆりやんレトリィバァ」の確固たる地位を、あくまでヒップホップのマナーに則って見せつけたという意味でも、最強の曲だと思いました。
MVもとにかく最高。
戦隊ヒーローものを彷彿とさせる演出が、そのまま「強い女性像」、「新たなヒーロー(ヒロイン)像」を観る者に印象付けます。
とにかく、女性の生き様のカッコよさに痺れたい方に聴いて欲しいです。
●Love feat. Skaai/yonawo
福岡の若き4人組バンドyonawoと、中国や韓国にルーツを持つラッパーSkaaiの共作。
yonawoはライブにも何度か参戦するなど、僕が前から好きなバンド。
Vo.荒谷翔大の唯一無二の歌声と独特の言語感覚、そしてチルなバンドサウンドが魅力です。
Skaaiは前年にリリースしたyonawo、鈴木真海子とのコラボ曲「tokyo」で知るのですが、この「Love」でも魅力が前面に出ています。
父が中国系マレーシア人、母が韓国人のSkaaiは、幼少期にアメリカに留学するなどグローバルな生い立ちを持ち、さらに九州大学大学院に進むなど、ラッパー界でも異色の存在です。
彼が放つネイティブで優しい英語詞と、ラップの枠をはみ出るかのような心地の良いフロウが、yonawoのサウンドと上手く溶け合っていて、聴く者を包み込む中毒性があります。
ここが何回聴いてもめっちゃ気持ちいいです。
またyonawoに関しては、過去の楽曲のサンプリングも入っていて、ファンとしてはうれしい曲になっています。
MVのイメージ同様、冬の寒い夜に、愛する人と一緒に聴くと大好きになるであろうナンバーです。
※追記
執筆後の12/26、Vo.荒谷翔大さんがバンドの脱退を発表されました。
残念ですが、今後の活動も応援していきたいです!
●聖徳太子/水曜日のカンパネラ
モデルとしても活躍するアーティスト・詩羽と、音楽プロデューサー・ケンモチヒデフミによるユニット、「水曜日のカンパネラ」によるダンスナンバーです。
サビの一節目だけを聴くと、一瞬「ラブソングなのか!?」と思わせられますが、それはただのミスリード。
「同時に10人の話を聞いていた聖徳太子は、実は一人ずつ喋ってほしかったんじゃないか?」という、作詞・作曲を手掛けるケンモチ独自の解釈がただただ繰り広げられている楽曲です。
“初代”水曜日のカンパネラが好きだった僕。
その頃から続く、「歴史×ダンスミュージック」のエッセンスが今もしっかり受け継がれているのと、徹底した「ナンセンス性」が守られていて、この『聖徳太子』でも、難しく考えずにハッピーな気分になれます。
「調子どうだい 飛鳥時代」とか最高ですよね。
無条件で体が動き出しそうになるファンクなサウンドに、笛(尺八?)の音を入れることで、聖徳太子の生きた古代日本のイメージを持たせていて、音楽面でも遊び心満載の一曲です。
●Moonlight/Yo-Sea
沖縄出身のR&Bシンガー、Yo-Seaの1stフルアルバム『Sea of Love』収録の一曲。
彼を知ったのは、STUTSの『Pretenders(feat.C.O.S.A.,Yo-Sea)』という曲。
「なんやこのええ声の主は。。」と反応してしまい、彼名義の作品もディグることに。
この『Moonlight』は、2000年代を感じさせるポップなダンスビートに、彼の透き通った、ムーディーでロマンティックな歌声が見事にマッチしている、しっとりさの中にグルーヴ感も併せ持つ、大人っぽい仕上がりの曲です。
「絶対に不可能なのに真似したくなる歌い方」という観点から見れば、久保田利伸っぽさも個人的には感じます。
藤井風がこの曲を配信で歌うなど、にわかに注目が集まっていますし、Yo-Sea自身もインタビューで藤井風の影響を受けたと語っています。
今や日本を代表するスターにフックアップされた彼の動向に、今後も目が離せません。
●Life Is Good/DENIMS
2012年、大阪府堺市で結成されたバンドDENIMS。
1月発売の3rdフルアルバム『ugly beauty』には、元・BiSHのアユニ・Dとのコラボ曲も収録されるなど話題の一枚となりましたが、一曲目の『Life Is Good』は、個人的に聴きまくりました。
リード曲にふさわしい印象的なイントロ。
それまでのDENIMSらしさは残しつつも、コード進行が少し今までと違うかな?と勝手に思いました。
彼ら自身も掲げる通り、「お洒落だけど泥臭い」がバンドの魅力。
感度の高いリスナーに支持を集めるお洒落なサウンドとは裏腹に、ライブパフォーマンスはなかなかの熱さを秘めています。
歌詞も、綺麗事だけを並べるのではなく、現実を受け入れる大切さを説く事が多い印象です。
この曲のサビに言いたいことがギュッと詰まっていて(「醜いこの世も美しい~」はアルバムのタイトル『ugly beauty』に繋がっている)、10年以上バンドを続けてきて、酸いも甘いも経験してきた彼らだからこそ言える、“世の中”がそこにはあります。
目の前に横たわる現実を、決して大きくも小さくも変換せず、「お洒落に泥臭く」表現してくれる彼らの音楽を、今後も聴いていきたいです。
●Canvas/Kaneee,STUTS
北海道出身、23歳のラッパーKaneee(ケイ二ー)。
今年ABEMAで配信されたオーディション番組「ラップスタア誕生」に出演、優勝は逃したものの、トラックメーカーのSTUTSに見出され、5月にSTUTSプロデュースで配信されたデビューシングルがこの『Canvas』です。
日本最大級のヒップホップフェス「POP YOURS」の、STUTSのステージで急遽披露され話題になりました。
この時、大型のステージ出演は自身初の体験。
ヒップホップの世界に入ってわずか一年足らずで注目を集め始めた彼ですが、僕が思う魅力もその初々しさです。
歌い方がいい意味で完成されすぎていなくて、一生懸命さと爽やかさが歌声に詰まっています。
“新人”といえば、勢いがあってフレッシュな印象ですが、フックでは、「今までの苦悩を乗り越えて、夢を追いかける」という思いが綴られます。
「ラップスタア誕生」での負けや、これまでの音楽活動で上手くいかなかったという道程をリリックにしたようですが、それがSTUTSの暖かみのあるビートに乗ることで、図らずも聴く人の背中をそっと押す曲になっています。
あとビジュアルがめちゃくちゃカッコいいです。
ルーキーながらもすでに大物感を醸し出しているKaneeeにこれからも注目です。
●In Your Life/くるり
今年バンド25周年のメモリアルイヤーだったくるり。
主催のフェス「京都音楽博覧会」は初の2日間開催、自身のドキュメンタリー映画「くるりのえいが」公開など、精力的に活動を行なってきた一年でしたが、今年発売のアルバム『感覚は道標』は、収録曲全てが伊豆のスタジオに籠って作られたという意欲作。
ここ最近のくるりの曲は、原点回帰というか、初期のようなシンプルなバンドサウンドが前面に出ていて、「ああ、くるりが“くるり”をやっていて良いなあ」と感じていたのですが、それもそのはず。
今回のアルバムは、オリジナルメンバーの森信行を約20年ぶりに迎え入れ、“あの頃”の3人での音作りにこだわっている作品なのです。
「久しぶりに集まった仲間たちが、昔を思い出してまた一つになる」。
そんな光景を思い浮かべながら、曲の最後にやっと現れるサビを聴くと胸が熱くなりますし、MVに出てくる3人もくるりを彷彿としているようで、めちゃくちゃエモいです。
「あの痺れるような~」のメロディーラインが、個人的には“泣きメロ”です。
またこの曲はドライブがテーマの曲ですが、Vo.岸田繁が自動車免許を取得したからこそ描かれる情景があって、今までのくるりの歌詞とは一味違うと本人も語っています。
『ハイウェイ』で「車の免許取ってもいいかな」と思っていた男が、20年越しに免許を取り、「国道20号」を「時速50km/h」で走るようになるんですからね。
くるりの歴史を感じる曲にもなっています。
●99/LANA
僕的に、今年は彼女に釘付けになった一年でした。
湘南出身の19歳のラッパー、LANA。
彼女を知ったのは、先述の「Bad Bitch 美学」です。
「AwichがNENEとかAIとかと集まって作った曲がカッコいい」という情報だけで観たMVで、「だ、誰やこの子は、、!?」と衝撃を受けます。
とにかく耳を引いたのはその唯一無二の歌声。
他のラッパーが、怒涛にラップを繰り出す中、彼女だけ独特のフロウに乗って、自身の持つ歌声を思う存分発揮していたのです。
女性ラッパーの“声”にそこまで注目したことのなかった僕ですが、「なんや、この、セクシーさと幼さが共存した声は!」と、すぐさま虜になります。
LANAは、兄がLEXというラッパーで、姉もダンサーで活動するなど音楽一家の生まれ。
歌に関しては、演歌好きの母に美空ひばりや夏川りみを教えてもらったというから、そのバックボーンに裏打ちされたポテンシャルが半端ないのです。
そんな天性の才能と、演歌仕込みの歌唱力を持つ彼女が作詞・作曲を手掛けた『99』は、歌詞も最高です。
素行が悪く、強さを履き違えていた子供の頃。過去を清算し、今ならあの頃の間違いがわかると言うのですが、それと同時にやってくる切なさや葛藤。
大人になり始めていくにつれ、いつか子供の気持ちが理解できなくなっていくのではないか、、?
19歳の今しか語れない思いが、存分に吐き出されています。
自分自身で、「自分自身の今」を切り取る。
リアルや生き様を作品に込めるという観点からしても、この曲はめちゃくちゃHIP HOPだなあと感じました。
対して、トラックがキラキラしていてポップ。さらに歌声の力強さが心地いいアンバランスを生んでいて、より胸がキュッとなります。
「19歳」を味わった者なら、心を動かされないわけがない、ヒップホップ好きでない方にもオススメの一曲です。
●Mainstream/BE:FIRST
AAAのSKY-HIプロデュース、2021年結成の7人組ダンスボーカルグループBE:FIRSTの4thシングル。
僕は昔から旧ジャニーズが大好きな男ですが、他のボーイズアイドルに関しては詳しくありませんし、BE:FIRSTに関しても、未だにメンバー全員の名前が言えるわけではありません。
この『Mainstream』も、何の事前情報も入れずにYouTubeで観たところ、そもそも「男性アイドル」というフィルターがあったからか、「え、すご、、!ダンスうまっ!ほんで、アイドルが出す曲かこれ!?」と驚きました。
一番気になったのは、「サビどこ?」問題。
ここがいわゆるフックにあたる部分だと思われますが、メロディーが全然ポップじゃないし、音数が少なすぎる。
これまでのアイドルが表現するポップソングに、完全に背を向けたかのような曲に感じました。
「男性アイドル」というものの在り方が大きく変わった2023年。
J-POPのど真ん中で売れている、既成概念にとらわれたアイドルではなく、「俺たちがトレンドを作り出すんだ」という気概が表れていて、そんな曲のタイトルが「メインストリーム」なわけです。
この部分が日本のエンタメ界のこれまでを表していますし、
この部分に、アイドルに対する見方への言及が入っています。
歌詞に込められた想いだけではなく、合わせてその音楽性でも、今までの「男性アイドル像」と一線を画そうとする、ある意味業界全体へのゲームチェンジャー的役割を担った、今年の名曲だと思います。
現に、メンバー個々のアイドル性に魅せられなくても、ただただ「曲がカッコいい!」という理由で夢中になっている30代男性がここにいるわけですし、こういうのが音楽の聴き方だよな、とも思うわけです。
そういった視点からしてもBE:FIRSTのこの曲は、男性グループの新境地を示してくれているのだと感じます。
ちなみに社長であるSKY-HIが、現在の日本のエンタメ業界について語るYouTube(たしかテレビ東京のビジネス番組)がめちゃくちゃ面白かったので、興味のある方は是非とも観てください。
というわけで、以上が僕が選んだ2023年お気に入りの10曲でした!
若干ヒップホップを多めに聴いていたので、バランスに気を付けながら選びはしましたが、どれも今年に出会い、心に刺さった曲ばかりです。
一応、AppleMusicのプレイリストを作ったので、興味ある方は聴いてみてください。
来年もいっぱい良い曲に出会えますように!
それでは、また!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?