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プライドという鎧


先日、僕のために同期が集まって送別会を開いてくれた。
しかし各々予定があったりと、全員が来れるはずはなく、何人か来ていないな~と、少し気に留めてはいた。

中でも、ずっと一緒にライバルとしてやって来た2人とはまた日を改めて飲みに行きたいなとずっと思っていて、連絡してみようかなとやきもきしていた矢先、ひょんなことからその内の1人と出会う。

彼もまた、送別会に参加できていなかったことを気に留めていたらしく、改めて飲みに行きたいと思ってくれていたよう。

そう思ってくれてたと知ってめっちゃうれしくなった僕は、日程と場所を決め、もう1人を含めた3人で飲みに行くことになった。


いや~、とりあえず楽しかった。
お互いの現状や、これからの展望や、漫才論や、今ハマっているお笑いなど、話は尽きることなくあっという間に時間が経った。

2人ともお笑いが大好きなんだなと思ったと同時に、上に行く存在、売れる奴っていうのは、やっぱりお笑いが好きな人間しかいないんだなという答え合わせみたいな時間になった。

僕も辞めた身ではあるが自分の考えていることをぶつけまくった。
いや、辞めた身だからこそ、なんか気兼ねなく喋れた。

というのも現役の時は、特に最後の方は、結果が出ないことで、周りと比べて若干の引け目を感じていた。

しかも僕は、自己評価がもともと高かった人間。
周りに追い抜かされているにも関わらず、その現状を簡単に受け入れられずにもいた。

だから、売れている同期に対していつしか、こう、ガッと、真っ正面からコミュニケーションを取れずにいた。
いや、避けていたという言い方が正しいかも。
“ライバル意識”という名の殻をまとった、要らないプライドが邪魔をしていた。

だからこそ、辞めて2か月とはいえ、自分の中では完全にあの頃を清算した形で会えているので、スッキリとありのままで2人と向き合えているのが手に取るように分かった。

鎧を脱いで、心が軽い状態で話が出来ていた。

そんなもの、現役の時に脱いでいればどれだけよかったのだろうと思うのだが、その時はなぜかどうしても出来なかった。仕方がないとは言え、皮肉な話。

でも、別に結果オーライ。
逆に、今僕がこういう立場になったからこそ、彼らも彼らで気兼ねなく話せる領域もあるだろうし、「なんかこれはこれでアリな世界線なんだろうな」と、片肘ついてお笑い談義をしながら、眉間にしわを寄せる2人を見て、1人しみじみしていた。



閉店作業を始めた店の空気をひしひしと感じるまで居座ったところでお開き。

ここ何年かでは、お互いに一回も言ったことのない「また誘うわ」を交わし合い、解散した。

これからも普通に、気ぃ遣わずに、友達でおってほしいなと思った夜だった。




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