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芸人を始める前、ラウンジのボーイをしていた時の話。

大学卒業後、お笑い芸人になるために吉本の養成所NSCに入学。
その1年間は、京都の実家から約1時間電車に乗って通っていました。

ちょうどその時期に、ホテルの宴会サービスのバイトとは別に、知り合いの紹介から、祇園のラウンジでボーイのバイトを始めました。
今回はその時の話を書きたいと思います。


当初、夜の仕事をしたことがなかった僕は、正直あまりいいイメージを持っていませんでした。怖い人がバックについていたり、ヤ〇ザの抗争が店内で行われたりするんちゃうん。。などなど。

しかし、クラブとかほど規模も大きくなく、ママやマネージャーもとてもいい人だった事と、大阪で住むための資金を貯めるためには掛け持ちや!ということで、NSC卒業後の3ヵ月ぐらいまで続けさせてもらっていました。

場所は、祇園の末吉町という夜の街。
近くに白川という川が流れていました。
南側には、花見小路。
四条通を東に行くと突き当りには八坂神社。

観光名所と共生している繁華街があるという点が、いかにも京都らしいですね。
ちなみに、僕は実家からチャリで通っていました。いかにもシティボーイらしいですね。

そんなシティボーイ・ボーイの仕事内容はというと、雑用です。いろんなことです。
掃除して、お出迎えして、荷物預かって、チャーム(おつまみ)やお酒を出して、灰皿を変えて、時には女の子に交じってお客さんとお話しして、、など。

よくおつかいにも行きましたが、近くにタバコ屋、花屋、果物屋、ドレスのショップ、薬局など、夜のお店には必要不可欠なお店が揃っており、「祇園」という1つのコミュニティーがしっかりと形成されているんだなと感心していました。

在籍の女の子、キョウコさんは姉貴肌でいい人でしたが、酔うとヤンキー感が増します。
テーブルが盛り上がってないと見るや、「なんか歌ってや!」とカラオケを歌わされることもしばしば。
ボトルがもうすぐで空きそうとなれば、「英吉、あんたも飲み!」とよく飲まされました。
もともとそんなにお酒が強くない僕ですが、売り上げの為の努力なんだなと、協力体制で頑張りました。

キョウコさんに限らず、女の子の愚痴もよく聞きました。
僕が皿洗いをしていると、タバコを吸いに来たついでに、お客さんの不満をぶつけたりします。
そら人間ですから。
ほとんどがいいお客さんでしたが、ちゃんとキモイお客さんもいます。
カラオケでひたすら下ネタで替え歌するオッサンとかめっちゃキモかったです。

お客さんはいろんな方がいました。
社長さんや、弁護士さんなどやはりお金持ちの方が多かったように思います。

何度かチップをもらったことがありますが、そのいずれの方もお坊さんでした。
京都は言わずと知れた、寺社仏閣がひしめく街。
あらゆる宗派の総本山が京都に集中しているので、東京のお坊さんや北海道のお坊さんが、宗派の集会などで来られた際に、来店されるのです。スーツ姿で。
おそらくお盆の時期などは稼ぎ時なのでしょう。
とても羽振りが良かったことを覚えています。
ぼんさん恐るべし。

ママはいつも上品な着物を着て、しっかりとした中にも気さくさを持ち合わせた方でした。
従業員に対しても面倒見がよく、ママの家でみんなでバーベキューしたこともありました。

そんなママは、仕事の時は厳しくなります。
少しでも気づくのが遅いと、よく叱られました。
少し離れたところからママがチラッとこっちを見たり、合図を送ると、何かあるかもしれないと常にアンテナを張っていました。

気配りや、お客さん第一の精神はこの時すごく勉強になりました。
時に厳しいけれども、優しいママからは、今でも正月や誕生日などには必ずLINEをくれます。
気配りの鬼です。いや仏です。


NSCを卒業してすぐの時、ママとマネージャー、店の女の子何人かで、わざわざ大阪にライブを観に来てくれたことがありました。

おそらく観光ついでに観に来てくれたのでしょう。お笑いのライブ自体もそんなに見慣れていない一行は、僕のコンビが出てきた瞬間「よーっ!英吉ー!待ってましたー!」と声援を送ってくれました。
僕たちはその日コントでした。
漫才ならまだ、

「あーっ、ありがとうございますー」

とか受け答えが出来ますが、コントです。
世界観がとても大切です。
しかもちゃんとした劇場ではない、自分たちで小道具などを設置するライブ。
明転の中、勉強机を運びながら、顔が真っ赤っ赤になったことも、今ではいい思い出です。


その他、僕の送別会を開いてくれたり、大阪に引っ越しする際には、家財道具を譲ってくれたりと、本当に優しい方たちばかりでした。

今となっては勉強になることばかりの一年ちょっとでした。
お笑いを始めてからのバイトの話はまたいずれ。

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