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わずか374人の訪日観光客で免税売上1704億円?~転売目的の影響度を簡単に調べてみた~

月間最大220万MAUを誇る日本最大級の訪日観光メディア「tsunaguJapan」を運営しインバウンド事業を展開している株式会社D2C Xの中西です。厳しいコロナ禍を経て、我々のビジネス環境も大きく変化し、おかげさまで毎日忙しい日々を過ごしています。

最近は民間企業の方々からの相談が非常に増えてきておりますが、そんな中で目を疑うようなニュースが今朝(11/29早朝)飛び込んできました。

訪日外国人(インバウンド)への消費税の免税制度をめぐり、免税品を1億円以上購入した人が2022年度に374人にのぼることがわかった。その多くが免税店で買った商品を、日本国内で転売している可能性があるという。

”免税品を1億円以上購入した人が374人か、何買っているか分からないけど、それぐらい買う訪日観光客は存在してそうだな” そのぐらいの感覚で流しながら読み進めていたが、次の文章で衝撃を受ける。

1億円以上の人の合計購入額は1704億円にのぼり、1人平均4・5億円となる。

1704億円!? 一人平均4.5億円もすごいが、たった374人で1704億円の免税購入金額があるということに衝撃を受けた。ほぼ間違いなく転売目的ではあると思うのですが、この文章を読んだ瞬間に、免税売上全体に対しての影響度合いはどの程度あるのだろうか?と気になり始め、今回急いで筆を取りました。


1. そもそも免税とは?

ご存じの方も多いと思いますが、改めて免税とは何か?ということを整理したいと思います。国税庁HPを確認すると以下のように明記されています。

外国人旅行者等の免税購入対象者(※)が、土産品等として国外へ持ち帰る目的で輸出物品販売場において、免税対象物品を一定の方法により購入した場合には、その購入に係る消費税が免除されます。

これは、免税購入対象者が土産品等を国外へ持ち帰ることは、実質的に輸出と同じであることから設けられている制度です。

国税庁HPより

消費税が免除されるということですね。適用される条件としては以下です。

イ 日本国籍を有しない非居住者については、出入国管理及び難民認定法に規定する短期滞在、外交または公用の在留資格を有する者等

ロ 日本国籍を有する非居住者については、国内以外の地域に引き続き2年以上住所または居所を有することについて、在留証明(注1)または戸籍の附票の写し(注2)であって、その者が最後に入国した日から起算して6月前の日以後に作成されたものにより確認された者

国税庁HP

輸出物品販売場における免税対象物品は、通常生活の用に供する物品(注1)のうち、次の範囲の物品となります。

なお、金または白金の地金は免税対象物品からは除かれます。

(1) 一般物品(消耗品(注2)以外のものをいいます。)の場合は、同一の免税購入対象者に対する同一の販売場における1日の販売価額(税抜)の合計額が5,000円以上であること。

(2) 消耗品(注2)の場合は、同一の免税購入対象者に対する同一の販売場における1日の販売価額(税抜)の合計額が5,000円以上50万円以下であること。

(注1) 免税購入対象者が事業用や販売用として物品を購入する場合は、免税となりません。
(注2) 消耗品とは、食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品をいいます。

なお、一般物品と消耗品のそれぞれの販売価額(税抜)が5,000円未満であったとしても、その合計額が5,000円以上であれば、一般物品を消耗品と同様の指定された方法により包装することで、免税販売することができます。この場合、その一般物品は消耗品として取り扱うこととなります。

国税庁HPより

細かく書いてありますが、端的に説明すると、訪日観光客が主な対象で5000円以上の買い物に対して消費税を免除するということになります。

2. 百貨店の免税売上推移

今回の免税購入総額1704億円は2022年度の数値ということで、2022年4月から2023年3月までの1年間における免税購入金額となります。2022年10月から水際対策が大幅に緩和されたので、約半年は訪日客が戻り始めている状況ということになります。

百貨店の売上については、上場大手百貨店企業の決算資料を確認するという手法もありますが、今回は日本百貨店協会が発表している月次の免税売上高・来店動向【速報】の数値を利用させていただきました。

具体的な対象店舗は記載されていないのですが、調査対象店舗 : 88店舗【インバウンド推進委員店】というセグメントで表記されていまして、恐らく大都市圏の主要店舗の免税売上を集計していることから、ほぼ現実の免税売上に近いかと思います。

日本百貨店協会:2023年10月 免税売上高・来店動向【速報】より抜粋

2019年からの推移を月別で纏めている数字ですが、少し読みづらいため、私の方で集計してグラフ化しました。

2022年4月~2023年10月までの月次免税売上推移(日本百貨店協会)

2022年度の百貨店免税売上の合計値は1572.2億円でした。今回の報道の374人の総額の方が大きいですね。。。とはいえ、免税売上は様々な企業が導入しているので、公開情報を基に他の業態も調べてみたいと思います。

3. ドン・キホーテ、ビックカメラの免税売上

免税売上を細かく公開している企業はまだ多くないのですが、その中でも非常に規模が大きい企業としてPPIH(ドン・キホーテ)とビックカメラの免税売上が決算資料で公開されていました。

PPIH:2023年6月期 通期決算業績説明資料
PPIH:2023年6月期 第3四半期決算説明資料
PPIH:2023年6月期 第3四半期決算説明資料
ビックカメラ:2023年8月期 通期決算説明会資料

それぞれ決算期が異なり、国の決算期とも異なるため、数値の比較が非常に難しいのですが、以下となります。

PPIH:1Q=7-9月、2Q=10-12月、3Q=1-3月、4Q=4-6月
ビックカメラ:1Q=9-11月、2Q=12-2月、3Q=3-5月、4Q=6-8月

つまり、今回の2022年度=2022年4月~2023年3月までの数値と同期間で比較しようとすると、以下の期間で比較すると現実に近そうです。

PPIH=1Q~3Q (2022年7月~2023年3月)
ビックカメラ=1Q~2Q (2022年9月~2023年2月)

上記を前提に決算資料の内容から一部推定も含めた免税売上は、下記となります。

PPIH:約210億円 (2022年7月~2023年3月)
ビックカメラ:約80億円 (2022年9月~2023年2月)

※ビックカメラの数字は、決算説明会資料のグラフから目視でざっくり算出しています。

4. まとめ

主な業態や企業の免税売上を調べた結果は以下です。

今回調べた3者の免税売上が全ての免税売上における高いシェアを占めているということは全くなく、ドラッグストア、ブランド店舗、中古品流通業者、無印良品や資生堂、ユニクロ等のSPA企業など、多くの事業者を含んでいないので、あくまで参考値となります。

しかし、この374名が購入した1704億円は、日本全ての免税売上に占めるシェアがある一定を占めていることはほぼ間違いなく、現在議論されている免税販売制度の見直しによって払い戻し型の免税制度に切り替わると、転売目的が締め出されることになるため、一部の業態には大きな影響を与える可能性があると考えられます。

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2023年に入ってから、様々な企業や自治体の方から訪日インバウンドに関する相談を頂いておりますが、まだまだ足りておりません!また、訪日メディアtsunaguJapanを活かしたアライアンスなど、様々な提携も検討できる土壌がありますので、是非お気軽にご相談いただければと思っておりますm(__)m

また、伝統工芸品を世界へ販売する事業も順調に成長しておりまして、先日実施した包丁のプロジェクトは、240人ほぼ100%欧米の方に購入いただき、合計759万円の売上になりました。こちらも拡大していきたいので、是非ご相談くださいm(__)m

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