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訪日中国人消費単価 74.7万円は少し高すぎる? ~訪日外国人消費動向調査(23年1-3月)をやや深堀りしてみた~

月間最大220万MAUを誇る日本最大級の訪日観光メディア「tsunaguJapan」を運営しインバウンド事業を展開している株式会社D2C Xの中西です。2022年10月からの大幅な水際対策の緩和を経て、我々のビジネス環境も大きく変化し、毎日忙しい日々を過ごしています。

そんな中、非常に驚きのニュースが先週4/19(水)に発表されました。

なんと、2023年1-3月での訪日外国人旅行消費額が1兆円を超え、コロナ前の9割近くに達したとのことです。日々現場で様々な方々とお話ししているので肌感覚的にはかなり消費が進んでいるのを実感していましたが、既に1兆円を超す規模までとは想像していませんでした。

また、国籍別でみると以下とのことです。

国籍・地域別では、韓国がトップで1999億円(19.7%)、次いで台湾1535億円(15.1%)、中国1069億円(10.5%)、香港1054億円(10.4%)の順。一般客(クルーズ客を除いた訪日外国人) 1人あたりの旅行支出は21万2000円と推計。国籍・地域別では、中国が最も高く74万7000円、次いでオーストラリア35万8000円、フランス30万円が続いた。韓国は12万5000円、台湾は19万5000円。すべての国籍・地域で2019年を上回った。

トラベルボイスより引用

『韓国が全体でシェアが高いのは納得だな、一人当たり単価では中国が一番高いのか、富裕層が来て爆買いでもしてるのかな?』

初めてこの情報に接したときはその程度の認識でした。しかし、何となく喉に何かが詰まってしまったような感覚を覚えて、もう少し深堀りしてみようと思い、今回筆を取りました(実際にはパソコンではある)。

※本題へ入る前に、現在積極採用活動中です!(営業職とディレクター職) もし少しでも当社にご興味ありましたら、Wantedlyよりポチっと応募いただけると嬉しいですm(__)m 事業理解度を深めていただく為に初回は私から事業紹介させて頂きます。質問何でも回答します。(すべての人に面談の機会をご提供できるわけではないことはご承知おきいただけると幸いです)

訪日中国人消費単価74万7000円

全体平均の消費単価は21万2000円の中で、その3.5倍以上の消費単価となった訪日中国人。とはいえ、これを鵜呑みにしてよいのか?少し疑問を持つと調べずにいられなくなる性格の私は、二日酔いとスマホの使い過ぎによる首の痛みに耐えながら、追い打ちをかけるワインに手を伸ばして調べ始めた。(私は安くて旨いワインがかなり好きで資格も取得し色々買い込んで飲んでいる人ですが、ワイン達には嫌われており飲むと激しい頭痛が襲ってくる)

調べ始めてすぐに大きな違和感を発見する。

訪日外国人消費動向調査(2023年1-3月)

見つかりましたでしょうか? 拡大しますね

訪日外国人消費動向調査(2023年1-3月)

平均泊数が75.8泊?????

私が見る限り、訪日消費額が1兆円を超えたことや中国人の消費単価が70万円を超え一番大きいことを伝えるメディアは数あれど、平均泊数について報道しているメディアは無かったと思います。常日頃から一次情報にアクセスすることを反射的に意識している私は、これは原文やデータを見に行くしかないと決意する。

訪日外国人消費動向調査の原文・データ

ニュースではよく接することが多い訪日外国人消費動向調査ですが、実際に原文やデータに触れたことがある人は少ないかもしれないので、ここで紹介させて頂きます。

統計情報は全て上記のページに過去の分も含めて格納されています。今回の2023年1-3月期の速報概要はこちらです。

そしてその中に ”集計結果” というEXCEL表があります。

今回はこのEXCEL表を開いて中身を見てみようと思います。
※今回、頭痛および首の痛み、酔いの効果があり、筆のノリが芳しくなく精度を欠いている可能性があるため、もし気になる点や間違いがありましたら、遠慮なくTwitter等でご連絡いただけると嬉しいですm(__)m

訪日外国人消費動向調査 集計表

上記画像は表紙です。内訳はさらに細かくシートが分かれておりまして、数値も多い。嫌われているワイン達と共にこのシートの中身を紐解くのはかなり辛いなと思いながらも、今回は訪日中国人に絞って中身を”やや”深堀りするだけだと自分に言い聞かせ奮い立たせ EXCELを読み進める。

実際の集計表です

どこから見ていこう?と考えたときに元々少し当てをつけている項目がありました。”娯楽等 サービス費” です。一人当たり単価で宿泊費や買物代より高くなっていまして、コロナ前は高くなかった項目なので、まずはここから深堀りしようと。

国籍・地域別にみる一般客1人当たり費目別旅行支出(全目的)

娯楽等 サービス費

そもそも娯楽等サービス費の定義は何だろうか? 集計表を見てみると内訳が判明した。

表2-1 国籍・地域(21区分)別 費目別購入率および購入者単価

今回詳細は割愛するが、他国と比べても中国はこの娯楽等サービス費を利用した回答者数が多い。その中でも、黄色に塗ったマッサージ・医療費その他娯楽等サービス費に目を付けた。私の頭の中は、これは医療ツーリズムで訪日した長期滞在者かなという確信に近い仮説をこの時点で持っていたが、単価の大きいその他娯楽等サービス費をもう少し深堀りしてみる。

その他娯楽等サービス費

訪日外国人の消費動向 年次報告書

めちゃくちゃニッチな回答項目だ! それが一読した時の第一印象だ。誰が釣り堀の利用を調査選択肢に追加したんだろうか?フリーアンサーで回答があった項目なのか?もしかして釣り堀はかなりユニークなJapanese Cultureなのか?これは我々のオウンドメディア「tsunagu Japan」でも取り上げた方がいいんじゃないか?いやその前に中央線の市ヶ谷駅付近を通るときに車窓から見える釣り堀で体験した方がいいんじゃないか?様々なことが頭を駆け巡る。ワインがうまくなってきた

話を元に戻すと、この ”その他娯楽等サービス費” に含まれた選択肢の中で気になった選択肢が2つある。(ギャンブルとかのめり込むとすごい消費になりそう)

公営競技(競馬・競輪等)の入場料・投票券(馬券・車券等)
学校、専門学校等の授業料

訪日外国人の消費動向 年次報告書

しかし、これ以上は集計表から深掘りすることは難しく、他のデータを見てみることにする。

国籍・地域(21区分)別 平均泊数

表4-1 国籍・地域(21区分)別 平均泊数

元々やたら平均宿泊数が多いという観点から疑問をもっていたことを思い出し、平均泊数の内訳をのぞき見ると興味深いことが分かりました。なんと

・91日以上1年未満の宿泊回答者数が多く、平均198泊
・性別/年代別で見ると、男女ともに20代が最も長く100泊以上

この前の時点で医療ツーリズムの可能性を仮説として強く持っていたので、かなり意外な結果でした。もっと40代以上の方の滞在日数が長くなっているような数値をイメージしていたからです。そしてこの時点から、あれ、これはもしかして留学生のことかな?という疑念を持ち始めます。

国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価

参考1 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価

ここへきて疑念が確信へ近づく。20代が最も消費単価が高いのだ。通常20代の消費単価が高いということはあまり考えづらい。しかし、あくまで仮説の域を出ないのでもう少し他のデータも見てみる。

参考1 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価

ここで疑惑がほぼ確信に変わる。”主な来訪目的”の回答者合計316名中、85名が”留学”と回答しているのだ。そして宿泊施設に関する回答も”学校の寮・会社所有の宿泊施設”が多い

そして”留学”と回答した方の一人当たり平均消費単価は、1,670,990円だ

まとめ

あくまで推測の域は出ないですが、今回調査した結果、2023年1-3月の訪日中国人消費単価を大きく押し上げているのは、留学生である可能性が高いと考えています。そうなると、平均宿泊日数が75.8泊であることやその他娯楽等サービス費の消費単価が高くなる≒留学費の年間学費を回答している?ということも納得できるかなと思います。

・平均宿泊数を押し上げているのは20代の男女
・平均消費単価が最も高いのは20代の男女
・主な来訪目的の回答者約25%が留学と回答
・利用した宿泊施設の内、学校の寮の単価が高い
・その他娯楽等サービス費には、学校の授業料が含まれている

また、1-3月は旧正月期間であったことから一時的に帰省する中国人留学生も多い可能性があり、その方々が空港での調査対象になった可能性はあると思います。

最後に、今回のnoteでは言及しませんが、訪日外国人消費動向調査には ”観光・レジャー目的” の方に特化した集計表もありまして、そこでは訪日中国人旅行者の回答サンプル数はそもそも42人しかありません。(訪日韓国人旅行者のサンプル数は1,050人です)

上記から、今回の2023年1-3月期訪日外国人消費動向調査の中国に関する結果については、あくまで参考値として捉えるのがベターかなというのが私の結論になります。

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