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Snow princess angel.



明日はクリスマスだ。


去年なら喜んで彼女と街に繰り出して、灯るイルミネーションを観に行っていただろう。


しかし今年は違う。

かれこれ3年付き合っている彼女・芽実はクリスマスの明日、日本を発つ。


仕事の都合なので仕方ないとはいえ、さすがに3年も付き合っていたんだ、悲しくないわけがない。



明日は初便に乗らなくてはいけない。今日はどこにも行かずに一日家でのんびりと過ごした。そして少し早いが同じ布団に包まって寝ることに。



暫くすると



「ねぇ。」


突然芽実が俺に呟く


「何?明日早いからもう寝なよ」

俺は芽実にそう答える。優しい言葉を貰ってしまうと、涙が出そうだったから。



「何も無いよ。」

芽実は悪戯っぽく笑う。ダメだ、眠れそうにない。



「芽実、ちょっと散歩に行かない?」


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「さっむ…。」



二人、寒空の下近所の公園でブランコに座っていた。


言葉は何もいらない。


「もう帰ろう」に辿り着いてしまうと、全てが終わってしまう気がしたから。



「そういえばさ」

芽実がポツリと呟く。


「浮気すんなよ〜」


また笑った。

「は?しないが。」


笑って答えるが俺は芽実の顔を見ることが出来なかった。


もし芽実が泣いていても、本当に笑っていても溢れて来そうだったから。


でも、どんな顔の芽実も想像できた。



「だよねー。こんな可愛い彼女がいるのにねー」

「なぁ、芽実」


「ん?なに?」


「ありがとう。」


「…やめて。」


「俺、芽実と一緒にいられて―」


「やめてって言ったでしょ!」


「…ごめん」



「…あのね、本当はすっごく寂しいの。でも、いつかまた会えるよね。」


「…うん。俺が絶対に会いに行くから。」



「ありがと。」







すると空から舞い降りる白い雪。それを包み込むように二人はキスを交わした。








この先、今日の事が幻に変わってしまったとしても、構わないと思えた。









だって、芽実と過ごした夜は忘れても、芽実といたことだけは絶対に忘れないと誓ったから。

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