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未来図。

俺の彼女は無口だ。


そして、俺の彼女は素直じゃない。



おそらく、世界で一番。

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「おーい○○!今日カラオケ行かね?」

「わり!今日は夏鈴と買い物行くんだよ!」

俺は友人からの誘いを申し訳なさそうに断る。

「まーた彼女かよ〜ラブラブだねぇ笑」

「うっせ!」

俺は冷やかす友人に強めにツッコむ。

「しっかし、お前の彼女可愛いけどさ、あんまこういう事言うのもあれだけど無愛想じゃね?」

随分ハッキリと言うなコイツ。

「わかってねぇなぁ。確かにあんまり口数は多くないけどさ、ちゃんと愛情表現はしてくれるぞ?」

「ま、お前が幸せならそれでOKです!」

舐めやがって…

「おっと、夏鈴を待たせる訳にはイカンからこれにて失敬!」

俺は全速力で廊下を駆けていく。

「ホント、○○のやつ一途だねぇ笑」

友人がポツリと呟いたのを、俺は聞き逃してしまうぐらい、夢中だった。

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学校の正門の所に、最愛の人はいた。

「おーい夏鈴!」

夏鈴は一瞬キョロキョロと見回すが、すぐに俺の姿を捉えると手を振って微笑む。

「そんなに走らなくってもいいのに。」

夏鈴は苦笑いしたまま俺に言う。

「何言ってんだよ!夏鈴に1秒でも早く会いたかったんだよ!」

「も、もう!意味わかんない!」

夏鈴は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。

そんな仕草ひとつ取っても愛おしい。

「じゃあ、行こっか!」

「うん。」





4つの足音が心地よいリズムを奏でる。

「ん。」

夏鈴はそれだけ言うと、下を向きながら何かを伝えようとする。

俺にはわかっている。手を繋ぎたいのだろう。

俺は何も言わずに手を握る。

「えへへ。」

夏鈴は満足そうに笑っている。

「今日は何買うの?」

手を繋いだまま、俺は問い掛ける。

「服。」

「お、いいじゃん。夏鈴なら何着ても似合うだろうけどさ、楽しみだなぁ。」

「…ばか。」

夏鈴は顔を真っ赤にして口を尖らせた。

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「ど、どうかな?」

夏鈴は気に入った服を試着して、俺に見せてくれた。

「…もうめっちゃ可愛い!世界一可愛い!宇宙一似合ってる!」

「も、もう!やっぱりこれやめる!」

夏鈴はまた顔を真っ赤にすると、カーテンを勢いよく閉めてしまった。

暫くすると、夏鈴が試着室から出てくると、驚くべきスピードでレジへと向かった。

それを眺めていた俺は、また愛おしさが溢れるようで、一人微笑んでいた。



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買い物を終えた俺達は近くのカフェへと来ていた。

「何にしよっかな〜」

俺がウキウキでメニューを捲っていると。

「………」

夏鈴がお店の壁に貼ってある何かをじっと眺めていた。

その視線の先には

『カップル限定・ビッグいちごパフェ!』

の文字があった。

「夏鈴?」

「ふぇ?な、何?」

驚いたように目を見開く夏鈴。

「あれ食べたいの?」

「…別に。」

そう言って夏鈴は俯いてしまう。

「一緒に食べよ?」

「……うん」



そして、イチゴがたっぷり乗った大きなパフェをペロリと平らげた俺たちはお店を後にする。

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そして、あっという間に日が暮れる頃だ。

「じゃあ、そろそろ帰ろっか。」

俺が言うと夏鈴は一瞬寂しそうな表情を見せるが、すぐに無表情になり。

「うん。」

と、それだけ俺に応える。

二人手を繋いで帰り道を歩いていると。



「○○。」

夏鈴がふいに俺の名前を呼ぶ。

「うん?どうしたの?」



「いつもごめんね。」

俺が驚いた表情を見せると、夏鈴は続ける。


「時々不安になるの。私、ほんとに口下手だから。○○に嫌われちゃうんじゃないかって。」


今にも泣きそうな声で伝えてくれる。


「だから、今日こそはちゃんと自分が言いたいこと伝えなきゃって思ってたんだけどね…」


「夏鈴。」

俺は溢れそうになっている夏鈴の言葉を遮る。

「大丈夫。夏鈴の気持ちはちゃんと伝わってるよ。だからさ、そのままでいいよ。」

「でも…」

「俺はさ、エスパーじゃないから夏鈴の全てはわからないかもしれない。でもさ、夏鈴が嬉しいのとか、悲しいのとか、それはわかる。だって、俺は夏鈴の彼氏だから!」




夏鈴は立ち止まると涙を流していた。

でも俺は続ける。



「俺は絶対夏鈴を一人にしたりしない。だから、夏鈴も同じ気持ちだったら嬉しいな。」


「……………うん」



夏鈴は涙でぐちゃぐちゃになりながら頷いた。




「夏鈴」









俺が幸せにするんじゃなくてさ。










二人で幸せになろうな。







俺の彼女は無口だし、素直じゃないけど。









世界で一番可愛くて。






世界で一番愛情をくれる女の子だ。



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