来季の浦和におけるストーミングの可能性とその考察

Jリーグ最終節が終了し、約3週間。
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
僕の年末年始はバイトの連勤で埋まりそうです。 

みなさんは浦和首脳陣の会見記事(リンク)は読みましたでしょうか?
来シーズンを応援するにあたって一度目を通すことをおすすめします。
会見記事による考察は96さんのブログがおすすめです。

浦和のサッカーについて

さて、この会見記事で浦和のサッカーというものの定義がされました。読んだ方は飛ばして大丈夫です。

チームコンセプトを説明します。今お話ししました『浦和の責任』というキーコンセプトをベースに、チームコンセプトを3つにまとめました。
1つ目は、『個の能力を最大限に発揮する』。2つ目は姿勢として『前向き、積極的、情熱的なプレーをすること』、3つ目は『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』。浦和らしいサッカーとは何かと考えると、攻撃的でなければならない、2点取られても3点取る、勝つために、またゴールを奪うために一番効果的なプレーを選択すること。ファン・サポーターと選手が共に熱狂できる空間を共有し、一緒につくりあげていく、それを表現できるのは、埼玉スタジアムであり、浦和レッズにしかできないことだと思っています。
まず、攻守一体となり、途切れなく常にゴールを目指すプレーを選択することです。具体的に簡潔に説明しますと、守備は最終ラインを高く設定し、前線から最終ラインまでをコンパクトに保ち、ボールの位置、味方の距離を設定し、奪う、攻撃、ボールをできるだけスピーディーに展開する、そのためには積極的で細やかなラインコントロールが必要になると思います。
攻撃はとにかくスピードです。運ぶ、味方のスピードを生かす、数的有利をつくる、ボールを奪ったら短時間でフィニッシュまで持っていくことです。相手が引いて守るときには時間をかけることも選択肢としてありますが、フィニッシュを仕掛けるときにはスピードを上げていくことが重要です。攻守において、認知、判断、実行のプロセス、全てのスピードを上げることが重要になります。このプロセスをチームとして共有して、パフォーマンスとして見せることを目指します。

この定義の善し悪しは置いといて、ここの会見文には何個かキーワードが散りばめられてます。
「攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする」「守備は最終ラインを高く設定し、前線から最終ラインまでをコンパクトに保ち、ボールの位置、味方の距離を設定し、奪う、攻撃、ボールをできるだけスピーディーに展開する」「ボールを奪ったら短時間でフィニッシュまで持っていくこと」

このキーワードがいわゆるストーミングの概念と近いこともあり、TwitterのTLで「来期の浦和はストーミングサッカーをするのでは?」と話題になりました。

そもそもストーミングサッカーって何?

今回僕はここの項を書きたくて記事にしました。笑

「ストーミング」とは英語で 「Storming」と書かれます。その歴史は新しく、17/18シーズンのチャンピオンズリーグ総評記事でサイモン・クーパーという方が「リバプールのサッカーは『ストーミング』とでも呼ぶべきものに進化した」と論じたところから概念として理解され始めました。まぁ名付けられる以前からある程度の戦術認識はあったみたいですが。

ストーミングを端的に言うなら、「ボールを手放すことを厭わず、それを再度回収することを前提とした戦術的思考」となります。

この考え方はドイツでラルフ・ラングニック氏が編み出したとされるため、ストーミングを志向する監督はしばしばラングニック派と呼ばれます。

ストーミングって何するの?

ストーミングのサッカーの真髄はゴールを奪うための手段というところにあると僕は考えます。

そんなの当たり前じゃないか!というのは置いといて、まずはサッカーの4局面について説明します。

サッカーには4つの局面があり、①ボール保持時、②ボール非保持時、③ネガティヴトランジション、④ポジティブトランジションとされています。

トランジションとは、いわゆる「切り替え」の時間のこと。ボールを失った!ボールを奪った!というタイミングでは攻→守、守→攻という「切り替え」の時間が発生する。この攻→守をネガティヴトランジション、守→攻をポジティブトランジションと呼ぶ。

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ストーミングサッカーではこのトランジションがキーとなります。

現代サッカーでは相手が守備ブロックを構築してからの攻撃は成功率が低いとされ、そのために得点を取りづらくなります。
「じゃあ相手が守備ブロック整える前に攻撃しちゃえば良くね??」
という発想がストーミングサッカーの根幹となります。

ストーミングサッカーは自チームがいかに有利な状態でファイナルサード(攻撃目線での相手陣地深く)に人とボールを送り込むかに重きを置きます。
もう少し噛み砕いて言うと、相手が崩れてる状態こそ点を取るチャンスでしょ!ガンガンいこうぜ!!って感じです。

ではどのようにしてそういう状況を作り出すのか。

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上の図では青チームがボールを保持しています。これから青の攻撃が展開されるんでしょうね。ただ、ストーミングサッカーをしている赤チームは違います。この状況がチャンスと考えます。

どういうことか。ボールを持ってる青の選手位置でボールを奪えば自分たちが決めたいゴールはもう目の前です。そうです。ここでボールを奪っちゃえばいいのです。
赤チームはボールを奪うためのプレッシングをかけ、なるべく高い位置で奪いきり、ショートカウンターを狙います。

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この後ボールにアタックしている赤チームの選手がボールを奪います。すると...

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奪った瞬間、いわゆるポジティブトランジション時にはもう多くの選手が前線に向けて走り出してます!(ちょっと誇張表現してますが。笑)

これがストーミングサッカーのゴールを奪うための手段という発想に繋がります。

さらに、最初に挙げた「ボールを手放すことを厭わず、それを再度回収することを前提とした戦術的思考」というフレーズにストーミングのさらなる秘密が隠されています。

ストーミングサッカーではボール保持時でもいざという時はボールを手放すことも許容します。ボールを手放し、前線に50/50のボールを蹴り込むことで、そのままマイボールならラッキー。失ったら前で"すぐ"奪おう!となり、そこで奪い切ることで二次攻撃につなげます。

かの有名な結城康平さんの言葉を借りるなら、「自軍のバランスが崩れること」を許容しながらも、「相手のバランスをさらに崩して」優位性を生み出す。となります。

さらに、ストーミングサッカーのキーとなるこのネガティヴトランジション時の即時奪回はリバプールを率いるクロップ監督の代名詞、「ゲーゲンプレッシング」にもつながってきます。

ストーミングの鍵、ゲーゲンプレッシング(即時奪回)

よく、クロップはゲーゲンプレッシングがすごい!だから強いんだ!(小並感)みたいな感想を見ます。最近は減りましたが。

現在のプレミアリーグの力関係の中でよく、クロップvsペップ(ゲーゲンプレスvsポジショナルプレー)みたいな例示をよく見ます。しかし、これは厳密には間違っていると言えます。

ペップもゲーゲンプレスはやります。何ならクロップのゲーゲンプレッシングはペップの戦術から発想を得た、と言われています。ではクロップのゲーゲンプレスと何が違うのか。ペップはゲーゲンプレスを「ボール保持のための道具」、クロップは「点を取るための道具」と考えているからです。
ペップはボール保持をするためにゲーゲンプレスをします。しかしクロップは前述の通り、相手の布陣が崩れている状態の時に攻めるためにゲーゲンプレスをします。

ボールを即時奪回し、保持し続ければ失点しないし怖くなくね?というペップの発想に対し、クロップはボール奪った!ゴールへGO!という発想です。

ストーミングサッカーの問題点

ここまでストーミングのここがすごいぞ!!みたいな話をしてきましたが、もちろん問題点もあります。

1.フィジカル(身体)的疲労

これは割と想像しやすいでしょう。前からガンガンボールを取りに行くサッカーのため、身体的疲労がすごいです。筋肉系の怪我を起こしやすいです。走力が必要とされる点で、若い選手が重宝されやすいです。ドイツのブンデスリーガでストーミングサッカーをしているRBライプツィヒはスタメンの平均年齢が24.4歳だったりします。

2.ボールの奪取と長いパスの展開両方できる選手が必要

ゲーゲンプレスでボールを奪ってもその選手が自分で何もできなきゃしょうがないです。そこからカウンターにつなげる必要があるので自分で奪って、自分でカウンターの起点となる必要があります。いわゆる何でもできる選手が必要です。
元浦和の選手ならCMF起用の遠藤航、現役Jリーガーなら山口蛍でしょうか。
潰し屋!ってだけじゃ務まらないです。

3.一人一人の質が求められる

ボールを奪いにいっても軽くかわされちゃしょうがないです。また、前へ!前へ!となっている状態でプレスを剥がされるととても危険です。リヴァプールがファン・ダイク、ファビーニョを補強した理由はそこら辺にもあります。

4.引いた相手に弱い

これが最大の弱点です。ストーミングは相手のポジティブトランジション時(自チームのネガティブトランジション時)を狙う戦術なので、「ボール保持する気ありません!」というチームにはなかなか点を取れなくなります。

リヴァプールやライプツィヒはこれを解決するためにボール保持時はポジショナル要素を組み込んでます。

ポジショナル要素:超簡単に言うなら、ポゼッションサッカーの究極系の概念といったところでしょうか。

5.戦術の落とし込みに時間がかかる

これはJリーグだとさらに顕著に現れそうな問題点です。海外でストーミングを志向しているチームも、補強した選手は即起用することは少なく、カップ戦などで試しながら少しずつ馴染ませていく傾向にあると思います。これにはストーミングサッカーという戦術の緻密さに理由があると思います。ボールを失った後に即時奪回できるように構える、二次攻撃に繋げられるように構える。要するに攻撃のための守備をし、守備のための攻撃をする必要が生まれます。(ストーミングに限った話ではないですが。)

浦和が記者会見でも明言していた通り、来年も我慢の年になるというのはここらへんの戦術の落とし込みにも理由があるかもしれません。

来季の浦和を考察する

ストーミングサッカーについてなんとなくわかったところで、来季の浦和について考察してみたいと思います。

まず、浦和は来季は変革元年とし、得失点差+2桁以上&ACL圏内を目標に掲げました。
選手については来季まで契約が跨っている選手がほとんどで、多くの戦力は現有戦力のまま戦うと発表されています。

ここで、来シーズンのスタメンを予想してみましょう。
移籍の噂が流れた選手も勝手に組み込んでます。

myboard浦和

ベースは僕の好きなリヴァプールと同じ4-3-3にしましたが、相手の配置などにより変わることも多いので特別気にしなくていいと思います。

パッと見ストーミングに向いてそうなのが、橋岡、鈴木、マウリシオ、長澤、柴戸、興梠あたりでしょうか。
興梠は年齢も考えるとピーキーな感じになるかもです、
去就は不明ですがマルティノスもスプリント能力を考えると局所的には活きるかもしれません。
こう見ると頑張ってエヴェルトン買い取りそうですね...

レオナルドの守備貢献がどの程度なのか私、気になります!(える風)
あと、健勇が空中線絶対勝てるマンになれば健勇センターも普通に有り得そう。月額2980円払うからそろそろ覚醒してくれ。

以前、会見記事で補強ポイントは前線とCBと挙げていました。前線はレオナルド意識した発言かなと思ったのですがCBはどうするんですかね。一応橋岡あたりはCBもできるのですが、正直岩波のところが心配です。プレス剥がされて、晒されると結構怪しい選手なので。

あと正直なところ、どう頑張っても柏木をここのメンツに組み込めなかったです。年齢を感じながらもいい選手なのは間違いないんですが、ストーミングという点で考えると厳しい気が。

まとめ

ここまで書いて来季全然違うサッカーをしいていたらなかなか笑えます。この記事の存在意義!!ってならないように僕は本日も他力本願寺に参拝に行きます。多分、ほとんどのサポーターの方が来季に不安をいだいていると思います。しかしこればかりは蓋を開けてみないとわからないです。多分監督にもわからないです。会見で土田SDが仰っていた通り、来季は我慢の年になると思います。我慢でもいいのですが、少しは希望が見える内容だといいですね。

参考文献



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