「はたらく」に正解はないの

就活時、「⚫︎⚫︎はこれをやった方がいい」ならまだ良かったが、「なんでこの大事な時期に社会人と話さないの?」と責め立てるような聞き方で近寄るクソパーマがいたモノだった。頼んでもいないのにあのクソパーマは寄ってきたから厄介だった。

今思うことは、社会には「正解がない」ということだ。メラメラと闘志を燃やす就活生に対してキャリアアドバイザー以外の大人たちが手を差し伸べない理由は、「自分の手で彼らの尊くて先の長い人生を変えてしまいたくない」という怯えとやさしさだと思う。もし大人のアドバイスが若い人の「正解」になってしまったら、半永久的に一つの正解に縛られてずっと苦しむことになる。

大人から押しつけられる正解 の例としてこれはどうだろう。「仕事は絶対寝坊してはいけない、会議には10分前にいなくてはいけない。」やや厳しめの教え方をされてきた僕にはこれが普通に思えていた。が、実際その「社会」というものに飛び込んでみると違った。昼まで寝てサボる同僚もいれば、会議に毎回数分遅れる4〜50代の人もいる。そうなると僕にとっての正解が僕を苦しめ、そして半永久的に今も(少しはましになったが)苦しめている。

昭和のバブル崩壊によって終身雇用というものは絶対的事実ではなくなってしまった。だから大企業=安定ではないのが社会の常識になっている。会社が潰れる時は大抵、本人が知らないところで小さい波が大きな波に変わり、気づいた時にはもう遅い状態になっていることが多い。この類の話は今後もどんどん増えていくに違いない。昨今の例を見てもわかる。有名なスーツメーカーは、在宅勤務の拡大によりその売上高は減少。店舗型英会話サービス企業はビジネスパーソンが多い都心を中心にスタジオの数を減らして希望退職を集めている。また航空会社も入社したての社員を中心に希望対象や某家電量販店への出向を命じた。

「安定」というものが揺らぎ始めている社会で、私は同じ時期に大学を卒業していった同志たちとボーナスや会社名の比較合戦をしたいわけではない。その安定が絶対的存在ではなくなった今、将来をきちんと見据えた個人として、生活スタイルや拠点、収入源、限られた人生で本当にやりたいこと等、少し哲学に近い話などそういった話がしたいのだ。

でも人々はうるさい。本当に「うっせえうっせえうっせえわ」だ。こんなことを話すと「病んでるのか」「大丈夫か」と心配してくる。これが病んでるのだとしたら、僕は数年前からずっと病んでいることになるし、これで病んでるのだとしたら、安っぽい映画のメンタルゾンビ役で助演男優賞を取れるくらいの実力はある。

話は変わるが、数日前に「手紙屋」という本を読んだ。就職活動中の少年が、書斎カフェに通う途中、とある新聞広告「手紙屋」に目をつけ、顔も知らない何者かと手紙のやりとりを始める話だ。そして毎度、その手紙屋は少年に助言を与える。その文通は10通目を迎えると同時に終わってしまうから、手紙屋の懐の深さと少年の成長ぶりがスピーディに伝わる。

三通目の手紙。手紙屋からの返事にはこんなことが書かれている。大事なことはお金だけじゃないと諭した数十日後の手紙で、あなたがどれだけ最初の数年頑張っても給料は変わらないという内容で始まっているのだ。

『ところが、現実は多くの場合違います。まったく同額なのです。 あなたが寝る間も惜しんで働いて会社のために貢献したとしても、あなたの目から見て手を抜いていたり、外回りに行くと言って出ていっては車の中で寝ていたりたり、陰では上司の悪口ばかりを言っていたりする社員とまったく同じ金額をもらうのです。
どうなっていくかというと「自分も手を抜いたほうが得だ……」と考えるようになってしまうんです。   自分本位に考えてみると、同じ金額がもらえるなら楽なほうが得だと思うかもしれません。でも、そういう過ごし方は、自分の力で生きていこうとする姿勢に欠けています。結局は会社の持っている財力や、他のまじめに働いてくれる人の頑張りがあるから、手を抜いても給料がもらえているという事実を忘れてはなりません。
平時はそれで生きていけるかもしれませんが、会社が荒波に飲み込まれそうになったときに、当てにされるのはそういう社員ではありません。どんな働き方をしてももらえる額が同じなら、身を粉にして働くのがばかばかしい。そう思って、みんなが競ってできる限り少ない
労働力で多くの権利を得ようとし始める中、絶対に一人はいるんです。いつまでも文句を言わずに頑張り続ける人が。 他の人に「まじめに働いてると馬鹿を見るよ。適当に楽しんでいかなきゃ」と言われながらも、割に合わないとかを問題にするのではなく、純粋に仕事を一生懸命やることに生きがいを感じる人が。   何かあったときに頼りにされるのはそういう人であり、他の人たちはそのときになって、「あ、安泰じゃなかったんだ」と初めてわかるんです。』

感動した。小説を5〜6年おさらばしていたから余計にじんとした。

今思うこと—— 社会には「正解がない」ということ。それを理解すると同時に、もう一つ今僕が思うこと—— 「自分の中の正解を持っておく」こともとても重要ということ。

あともちろん、サボることもとても大切。

以上

外資系専門商社でBtoB, BtoG営業をしています。さまざまな社会問題や身の回りに起きた出来事を発信しています。「新しいモノ・コトで人々の生活を豊かにする」