そりゃデッキを光らせたい

 タイトル通りである。光らせる、とはカードのレアリティを上げることを指す。デッキに採用されているカードを可能な限りレアリティを上げることをフルレア・フルパラ(パラレル)と呼ぶが、そこはタイトルによって微妙な差異があるようだ。ちなみにノーマル仕様でもイラスト違いのカードは存在するので、光ってなくてもカードを光らせたことにカウントする。

 今私がお熱のデジモンカードゲームのプレイヤーはよくデッキを光らせている気がする。周りのプレイヤーやSNSで繋がったプレイヤーを見渡しての感覚的なものなので、バイアスはかかっていると自覚している。さらに大阪日本橋という全国でも指折りのカードショップ集合地で遊んでいるので、そりゃ熱量が高いプレイヤーが集まりやすい環境なのも十分承知している。あくまで切り取った偏見にも似た観測なのでそこはご容赦願いたい。
 カードショップで知り合いとばったりと会い「〇〇探しているんですよね…」「おっ!それなら××で280円で置いてましたよ!」「いや、パラレルで…」「あっ…」といったやり取りを何回かした記憶がある。ショーケースを一緒に見ていても「いや~〇〇買おうかな…どうしよっかな…」「580円だともうちょい安く置いてそうな店ありますもんね」「いや、パラレルで…」「あっ…」と見る場所が違ったこともある。気まずさを覚えてしまう。きっと自分側だけだろう。

 「効果は同じなんでしょ?それなら安いほうでいいじゃん」という意見もあるだろう。確かに効果は同じだが、レアリティをあげる利点をレアリティをあげない私が説明する。
 第一に満足度が違う。昨今の各タイトルの高レアリティの加工は目を見張るものがある。魅力的なイラスト、レリーフ仕様(表面がざらざらしており立体的になっている加工)など眺めているだけでも気分が高揚するのは間違いなし。どうせ遊ぶならより楽しく。同じ1時間でも遊びのパフォーマンスを上げることへの投資と考えると一理あるように思う。
 第二にそのカードに向き合う心構えを作りやすい。これだけ資金をはたいて集めたカード・デッキをしゃぶりつくすように遊ぶ、そしてプレイを突き詰めて結果を残すという気概になるだろう。背水の陣にも似た面持ちかもしれないが、覚悟の現れと言っても過言ではなさそうだ。
 そして最後の理由が最も重要だ。カードを手放すことを考える。カードゲームでは新弾が出る度に過去のカードはゲーム環境の変遷によって価格が下がる。再録によって出回る枚数が増え、価値がさがることだってある。タイトルは変わるがそこが顕著なのがポケモンカードゲームだろう。定期的にその時の環境カードをまとめて収録しつつ別イラストや色違いポケモンのハイレアリティを収録した商品が発売される。そうなると再録された通常レアリティのカードの価値は半分以下になる。それはそれで利点があるが、それはまた別の機会に。しかし、過去収録したハイレアリティのカードの価値はどうか。別種で同格のハイレアリティは収録されたがそれぞれの魅力があり、価値はさほど変わらない。もし手放したとしても当時購入した金額が返ってくるなんてこともある。とどのつまり、長い目で見ると価値が損ないづらいハイレアリティを購入したほうがいいということだ。ここまで価格が下がるケースの話をしてきたが、カードゲームでは過去弾のカードの価格があがるケースもある。しかしその場合には通常レアリティがあがればその高レアリティも同様にあがるので問題はない。

 ここまでだらだらと高レアリティのカードのすすめを述べてきた。それなら何故お前は通常レアリティなんだと突っ込まれるだろう。そこでタイトルに戻る。そりゃ私だってデッキを光らせたい。立ちふさがるは「私が自由に使える懐事情」つまり資本金だ。元手がなければ始まらない。元手、つまりお小遣いだ。私の心細い財布の中身の話はいささか憚られる。私だって臆病な自尊心をいっちょ前に持ち合わせているので堪忍していただきたい。独り身だったらと虚しい妄想だってする。言い訳がましいが結婚したことを後悔しているわけではない。決してない。ただ、高レアリティで構築されたデッキを見るといいなぁと指をくわえる幼子のようになるしかない。元手がなければ、財務大臣に申請する術だってあるだろう。んな無茶な。転落するゴールが見えるのに走り出す愚者はいない。我が家ではカードゲームに市民権はない…と思いつつも多分これがゴルフクラブやつりざおでも申請は却下されそうなので、もしかしたらどこの家庭でもある風景なんだろうか。しかしプレゼントを購入する時に、一瞬だけ(このお値段ならあのデッキを…)と考える自由と未練がましさぐらいは許してほしい。完全に脱線するが、オートクチュールや貴金属の世界もここまで述べてきた「光らせる」に通ずるものがあるようでなかなか興味深い。昨今の情勢もあり過去のバッグが今では…なんてこともある。デッキを光らせるか、奥さんを光らせるか二者択一である。君は十分に輝いているよ。さすればおめこぼしを。

 最後に、通常レアリティでプレイしている人を否定しているわけではない。通常レアリティのイラストだって魅力的だ。決して人様の遊び方や向き合い方に水をさすようなつもりはない。純粋に私の心情を情けなく吐露しただけである。あしからず。

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