運が絡むからおもしろい

 カードゲームで遊んでいると、初手やトップドローなど運要素で一喜一憂する場面がある。シールドトリガーやトリガーチェック、サイド落ち、セキュリティチェックなど独自のシステムをゲームに取り込んでいるタイトルもある。サイド落ちはやや性質的に異なるような気もするが、ここでは一緒くたにさせてもらう。
 
 私はカードゲームに運にゲームが左右されるような要素はあってほしいと思う。この運こそにゲーム性・駆け引きを見出すことができるからだ。それに加えてジャイアントキリングがあるかもしれない、と思わせてくれるからこそ新規ユーザーの獲得につながるはずだ。

 ここで言うゲーム性とは何か。私は極力運の要素をできるだけそぎ落としていく行為とハイリターンを見込んでワンチャンスを見出しアクセルを踏み込む行為のことを指すと考えている。カードゲームはデッキ構築・プレイングで不確かさを嫌う。初動札の枚数や環境に対するソリューションとなるカードの採用、ゲーム中に何回プレイしたいかによって変わる採用枚数など構築の段階ですでに駆け引きは存在する。メタカードをしっかりと採用するもその仮想敵となったデッキとはマッチングせず、デッキの出力が落ちた状態で戦わざるをえなかった…なんていう笑い話は誰しもが聞いたことがあるかもしれない。できるだげ事故を避けデッキがコンセプト通りまわる構築も良し、ノイズになり得る恐れはあるが局所的に活躍するカードを1枚採用してここぞというタイミングで最大値を狙うのも良し。プレイヤーの性格だけでなく、ゲームへの理解度やカードプールの知識量、勝負師としての側面も伺える。この深みが出るのは運が介在するゲームだからこそであろう。他のテーブルゲームとは違う面白さが滲み出る瞬間だ。

 こういったゲーム性が熟成しきると如実にプレイヤースキルの差がはっきりと出る。強い人が勝つ。勝負の世界では当然のことであり、腕を磨いたものが報われることは必然である。しかし、その土俵に新規ユーザーが上がれないとなるとそれはゲーム性というよりも商材としての衰退を意味する。新規ユーザーへ門戸を開くにはどうするか。それは、技術だけではない領分となる要素を残す。それが先述したゲームデザインに盛り込められたものだ。一発逆転の要素は不利な状況でも活路を見出し、最後までゲームがどう転がるかわからないものにする。また熟練プレイヤーへも一矢報いることができるかもしれない。ここで重要なのは、初心者に一見そう思わせることができることだ。蓋を開けてみると、その要素をケアして…とやはりプレイヤーに問われるものはある。ただそこに「ひょっとしたら自分でも勝てるかも」と思わせてくれることがポイントである。また、勝利という成功体験はゲームにのめりこむためのアメである。そのアメを新規でも味わいやすくするデザインはプレイヤー人口の獲得につながるだろう。逆に敗北の理由を運になすりつけることができるのも新規ユーザーが腰を落ち着かせるまでの過程では必要な要素であろう。誰だって負けたくはないが、勝敗が伴うゲーム上、そこには勝者と敗者が生み出される。その時に敗者の慰めとして運が悪かったとそのゲームに諦めをつかせて、次のゲームへ目線を移動させるための装置としての役割もある。ここも突き詰めていくと、運に甘えず自身のプレイを見直しブラッシュアップすることができるがご新規さんにこれを押し付けるのはいささか厳しい。ここにも面白さは存在するが、新規が自身でそこに辿り着かなければ意味がない。ゲームにのめり込むには段階を経ていかなければならない。運はその第一歩になる。
 
 ただ、面白いもので他プレイヤーからも強いと噂され、実績を残す常勝プレイヤーは存在する。運のゲームと腐ることなく、確固たるプレイスキルを磨く意味がそこには確かにあり、それもまたカードゲームを味わい深いものとしている。よく各タイトルのゲーム性の指標として、構築:プレイ:運の比率があがることがある。同タイトルのプレイヤーでもゲーム観によって異なることもある。このすり合わせをするだけでも楽しく感じてしまうのはややカードゲームジャンキーめいたものを自身に見てしまいやや自嘲ぎみに笑ってしまう。

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