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「孫に自慢する 」4年 本江右京

平素よりお世話になっております。今回部員ブログを担当する経営学部経営学科4年の本江右京です。

毎年の恒例となっている部員ブログですが、私は自分がその時思っている一番熱いものを、少しでも伝われば良いなという思いで綴ってきました。そして、引退間近となった今思うのは「自分が部活動をしてきた意味とは何だったのか」ということです。竹内のブログでは、ありきたりなテーマと厳しい指摘をされていましたが、4年間の集大成として書く題材としては悪くないのではないかと思います。この最後のブログが自分と同じような葛藤を抱える人に届き、部活と向き合うきっかけとなることを祈ります。

小さい時からサッカーをやってきた中で、何人もの人がサッカーを辞めるのを見てきました。プロへの道を閉ざされた人、他にやりたいことを見つけた人、勉強に打ち込みたい人、怪我をした人、留学をする人、時間的拘束が苦しい人など、それぞれにそれぞれの理由がありました。高校生くらいまではそんな人たちを冷ややかな目で見ていたと思います。なんとなく部活を辞めずに続けるということは正しいことなのだと信じていました。

そんな 絶対的正義が揺らいだのは大学で部活に入ってからです。

大学を卒業したのちに待っているのは社会です。環境が変化する時にはいつも緊張や不安を感じますが、今までとは比べられないほどそれらが大きくのしかかってくるような気がします。私は大学にいる間に、社会に立ち向かうための武器を準備しなくてはいけない、時間を無駄にせず自己研鑽に励まなくては生きていけないと感じていました。これからはVUCAの時代で行き先が読めないとか、人生100年時代でスキルアップを生涯求められるとか、グローバル化が進んでいるから英語は喋れないと話にならない、なんなら中国語まで必要だとか、簿記が!ロジカルシンキングが!ITが!プログラミングが!

サッカーやっている時間なんてないじゃないか!!!

正直にいえば、何度も部活を辞めたいと思いました。首脳をやっていた時なんかは毎日家でやめたいと言っていた気がします。(時効だと思うので許してください)部活さえなければ、もっと社会にとって有能な人材としての鍛錬を積むことができたかもしれません。旅行に行くことや、自分の趣味を突き詰めることも出来たでしょう。そんな中で部活を辞めていく人を見ると、引き止めるどころか辞めるという決断をした勇気をこそ讃えたいとまで思ってしまいました。

そんな状況の中でも趣味の読書は続けていました。私は本を読むのが好きです。時代小説はまだ読んだことないですが、ジャンル問わずなんでも好きです。部活に対して鬱屈とした思いを抱えていた中読んだのが穂村弘さんという歌人の方が短歌の楽しみ方について説明してくれる本でした。詳細は省きますが、そこには「生きる」ことと「生きのびる」ことという二つの概念が登場します。

本の内容と必ずしも通じているとは言えませんが、私は本を読んで、「生きのびる」ことに必死になっていたのだと感じました。時間という資源を消費して、成果物を生み出す。そんな時間をいかに効率的にハックしてより社会的に有用な成果を生み出すかという価値観です。その考えの下では部活は最悪です。無駄でしかありません。なんなら疲れるのでマイナスかもしれません。今も別にその価値観を持っていないわけではありませんが、本との出会いがきっかけで「生きる」という価値観が自分の中に明確なものとして生まれました。「生きる」ことというのは人生を豊かに分厚くしてくれるものである気がします。そう考えると部活をやるのも悪くないなと思います。

部活って最高に生きていると思いませんか?

ただの丸いボールを知らない人に蹴り込まれて止められなかったことを何日も落ち込んだり、でも練習したら次の試合では止めることが出来たり、同い年の怪しい監督(愛を込めて)に炎天下の中走らされたり、そんな走りの中で仲間の背中を支えて走る奴がいたり、試合終了間際に逆転して地面を叩くほど喜んだり、その勝利を60人の大好きな仲間と大騒ぎして祝ったりする。

そんな不条理で無意味な、後悔や成長、苦痛、感動、熱狂、友情を堪能できる。他ではきっと味わえない、自分の限界や快適な範囲を超えることによってのみ得られる豊かな経験をもたらしてくれる。部活ってそんな場所です。4年間の結論はこれです。

「生きのびる」ことも必要です。ただ「生きる」ことを忘れていたくないと強く思います。社会に求められる価値というのは社会自体が変容していく中で、その価値の軸というものもどんどん変わっていくのだと思います。自分だけの評価軸、心の中にしかない尺度で誇れるもの以上に不変のものはなく、死ぬ直前に感じる幸せを規定するのは部活や趣味などの「生きる」ことによる思い出なんじゃないでしょうか。今年は全然勝てないなどの苦しいシーズンを送っていますが、今もがき続けている経験は一生忘れないでしょう。それでも、サッカー人生の最後にもう一度最高の熱狂と感動を味わいたいなと思います。

人生で一番の熱狂と感動です。

母はよくYNUFCのインスタライブに出現します。試合後にはメッセージもくれます。いつも「悔しかった!」みたいな返信しか送れなくてごめんね。次は勝ってこっちから連絡します。

試合の日に起きると、恋人からメッセージが来ています。内容が勝利に向けてから全力を尽くせるようにと変わってきたのは見逃していません。気遣いはいりません。次は勝ちます。

我らのキャプテンが泣いていました。あのクールな男がです。ここにいる皆と勝って喜びたいと言ってくれました。だから次は勝ちます。

GKの後輩達、入ってきてくれてありがとう。わがままなのと自分よりたまに上手なのが気に食わないですが感謝しています。まだまだ君達は未熟なのだということを試合での私のプレーを見て学んでください。よって次は勝ちます。

応援最高です。ナイスキーパーとか名前を呼ばれるだけで何であんなに力が出るのでしょうか。お通夜みたいな試合後の挨拶では何のお返しにもならない。だから次は絶対に勝ちます。

同期の皆さん、4年間最高に楽しかった。同期11人でスタメンを埋めてみたいという個人的な夢が叶わないで終わってしまいそうなのだけが心残りです。最高の思い出の最後が降格はあんまりです。だから勝ちましょう。自分達が出来る全てをこの部活のために捧げ切りましょう。

勝ったら最高ですよきっと。
ユニホームとか破いちゃうかもしれません。
これ以上に生きていると感じられることあるのでしょうか。

おじいちゃんになっても孫に自慢したくなるような
人生で一番の熱狂と感動。

そんな経験ができる部活、最高です。

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