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スモールビジネスの戦略を立案する「戦略構築ステップ2:探査領域において、儲かっている企業を発見し、儲かる手法を知る」

この節は非常に重要であるため熟読をいただきたい。

理由は市場・領域選定の観点となるためである。
この後、顧客ターゲットの課題・ソリューションを考えていく際にもどの市場・領域を選んでいるか?が非常に重要になる。その市場を選ぶ羅針盤となる。

この節では、自らが進める市場(自分で選んだもの or 与えられたお題)において、儲かっている企業を発見し、儲かる手法を知ることがゴールとなる。

特に、ここで言う儲かっているの定義は「営業利益」である。どういうことだろうか?

利益のおさらい

もう一度、利益のおさらいをするとシンプルにまとめれば

売上(Revenue):お客様からいただいた金額
粗利・売上総利益(Gross Profit):売上-原価
営業利益(Operating Profit):粗利-販管費(販売費および一般管理費)
経常利益(Ordinary profit):営業利益+本業以外の利益・損失
純利益(Net Profit):経常利益+臨時の利益・損失ー法人税

利益の概略

なお、ProfitはIncomeで表現される場合もある
図示すると以下の通りである。

引用元: https://doda.jp/companyinfo/contents/finance/006.html

なぜ営業利益か?


営業利益は本業の利益を示すものである。一方、粗利は売り上げから原価を引いただけのものである。

本書籍では営業利益に着目せよ、ということになっている。

私も同感です。なぜなら、まず、利益を見る必要があると言うことは大前提。(年商100億でも利益はマイナスというビジネスを作ることは簡単である。仕入れて付加価値をつけずに売るだけで良い。販管費がかかってマイナスになる)

その上で、粗利は事業の構築の際に重要ではあるが、粗利は高いが販管費がかかって儲からないビジネスもたくさんある。だから営業利益なのだ。

少し前の事例でいえば、タピオカ屋はこの分類に入るかもしれない。当初は物珍しさや、店舗の少なさから、非常に原価の安いタピオカを仕入れて売ることで、粗利も高く、販管費も少なかったため営業利益はたくさんあった。

ただ、ブームが過ぎ去った今となっては、一部の大手や本当に美味しいタピオカドリンクを提供する(原価が高くなる)、もしくは、原価は安いが、必死に宣伝をしてなんとか売る(販管費が高くなる)をしなければならない。

このように粗利だけに着目せず、販管費を含めた営業利益で見ておくことが大切である。粗利は営業利益が高いための前提条件と考えれば良い。

少し毛色は違うが、特に国内のSaaSは粗利は高い(クラウドサービスなので原価が安い)が、販管費が非常に高いため、単年の営業利益は赤字の会社が多く、LTVで見たときにやっと黒字になる場合が多い。昨今は、この類のグロース市場に対する風当たりも厳しいようである。

決してサブスク型を否定しているわけではないが、粗利だけで見ると販管費の観点が抜けてしまう。興味のある方は以下を参照ください。

昔、堀江さんが紹介していた儲かるビジネスの4原則も参考にアップしてお
く。

堀江さん曰く、
「この原則に従わないビジネスでももちろん儲かる。あくまで小資本で始める場合の一つの考え方」


とのこと。逆にこの原則に従ってやっても、ITのようなレッドオーシャンに入っていくと結果的に利益は出ない可能性もある。

どんな企業を儲かっている企業として考えるか?

さて、今後、儲かっている企業=営業利益が高い企業、を調査することになった。では具体的にどのくらい儲かっている企業を考えればよいのだろうか?その指針としては

「自分の営業利益目標の10倍を稼いでいる会社が容易に、たくさんある市場の中の領域を選ぶこと」

と本書では定義されている。その根拠は2つで

1、マイナーチェンジのコピー品でのスモビジを考える際に、目標の10倍稼いでいる会社があれば、自分の目標程度の利益は創出できる可能性がある

2、そのような会社が、たくさん存在しない市場は、儲かっている会社があったとしても、模倣・参入が難しかったり、そもそも市場自体が大きくない可能性がある

である。

つまり、次にすることは、

・自分がトライする市場(自分の強みなどから算出、もしくは、検討を指示された市場)の中で

・どんな領域ならば儲けている(営業利益が高い)企業が多いかを調べていこう

・その中から、最も優れている(営業利益が高い)エクセレントカンパニーを抜き出し、まとめよう(方法は追って説明)

どうやって儲かっている会社を調べるか?

とはいえ、どうやって儲けている企業を探すのか?ここでは具体例を挙げて説明したい。

結論から言えば、バフェットコードの利用をお勧めする。

https://www.buffett-code.com/

バフェットコードは無料で業界ごとの利益率・額の調査が可能で使いやすい。一部の非上場、ベンチャーにも対応しているため汎用的である。最近は少しづつ無料プランでできることは減ってきたかもしれないが、まだ有用と考えられる。

もちろん、SPEEDA、INITIAL、bloombergや、帝国データバンク、官報、証券会社が出しているツールやその他の情報源を使うのも良いが、費用がかかる場合があるため、広く一般的に利用するのならばバフェットコードが良いだろう。

バフェットコードを使って営業利益の高い企業を見つける事例

例えば、今、自分が探索する領域をゴム製品の業界としたとしよう。今までの説明に従って、営業利益が目標の10倍ある企業があるかどうかを調べる。そのために、例えば、以下はゴム製品で営業利益10億円以上の企業を選んでみました。

https://www.buffett-code.com/global_screening/search?q[0][]=50&q[0][]=1000000000&q[0][]=gteq&i=10&r=jp

調査をする際の注意点:大企業の場合事業セグメントごと利益を見る必要がある

一つ注意点があり、たいていの大きな企業は様々な事業を進めている。そのような場合、セグメントごとの利益に分解して確認しよう。

会社全体の営業利益を見ると大きいが、自分の興味ある領域の利益は少ない、というのは十分に想定できる。

以下は、先ほどのゴム製品の中で、バンドー化学をピックアップした。セグメント利益がどうなっているかの事例として参照いただきたい。

https://www.buffett-code.com/company/5195/

調べるための他の方法

まずは上記の方法で調べるとして、その他の方法としては以下がある。

1、企業の個別のIR系プレスリリース:例えば株探のプレスリリース

2、官報による非上場企業の動きのウォッチ

3、投資情報
4、業界誌における紹介や人づての情報
5、PRtimesに掲載されているニュースリリースからの推測

少しピックアップしてどのような特徴があるかコメントしておくと

1については、インターネット上に完全に公開されているためウォッチしやすい(一方、決算書をしっかり時系列で読み込めるスキルは必要)

2については、特に非上場の企業の動きを把握するのに良い。自分の狙っている市場がどれくらい儲かるのか?(例えばサッカークラブの運営は儲かるか?)などを学べる。

4については、特に信頼できる人づての情報は精査が必要だが価値はある。スモビジの目指す市場感であると、上場はできないが、しっかり稼ぐという会社が多いため、情報があまり世の中に出てこない。ここは人から聞くことも有効である。儲け話は、一部の人しか知らない、という現実があるわけである。

官報において貸借対照表しか掲載されていない場合は?

なお、官報において、損益計算書(PL)が掲載されておらず、貸借対照表(BS)のみが掲載されている場合もある。

その場合は、負債及び純資産の部にある、利益余剰金の中にある、当期純利益を参照すると良い。これは、先ほど紹介したPL上の純利益と一致する。

引用元:https://kanpo-kanpo.blog.jp/archives/41556659.html

コピーすべきエクセレントカンパニーの抽出

さて、今までやってきたのは、「ある市場の特定の領域において営業利益が多い会社」を調べることである。その中でも特に儲かっているエクセレントカンパニーが見つかったとして、次はどうするべきか?

次は、エクセレントカンパニーがなぜ儲かっているか?を抽出しよう。これが模倣品を作るヒントになる。

筆者の例を借りると、全体の流れは以下になる。

  • 家電をOEMしてD2Cで売る、というアイデア・市場を考えたならば

  • その市場において儲かっている会社がたくさんあるかを調べる

  • その中のエクセレントカンパニーを調べる(営業利益を見たときに、アイリスオーヤマが自分の望む利益水準と合致したとする)

  • 次に、なぜアイリスオーヤマは他社と比べて頭ひとつ、儲かっているか?を調べる

なぜ、エクセレントカンパニーを調べるのか?

ある市場・領域において各社が儲かっている中で、特に儲かっているエクセレントカンパニーは、何かの成功要因(KSF)を掴んでいるはずである。いわゆる強み、競争優位性、参入障壁といったものである。

同じ市場にいる大手の会社は、お互いに模倣しあいながら改良し、競争をするわけであるが、成功要因は何か?を掴めるかどうかがポイントになる。要は儲けのポイントは何か?を掴むことである。

事例:インソース

詳しい説明は行わないが、以下の事例を紹介する。

教育・e-learning講座を展開するインソース(東証プライム 6200)の決算は以下の通りである。営業利益率は30%台後半をキープしている。

引用元:https://www.insource.co.jp/resource/pdf/ir/23110611.pdf

この会社は一つのエクセレントカンパニーと考えられる。そのKSFとしては、コンテンツIPを時流に合わせて作成できる能力、であろう。

この業界では、普遍的な学びのコンテンツもあれば、DX/AIといった最新のトレンドに応じたコンテンツも必要になる。その際に、インソースは自社内でこのコンテンツを作成でき、結果として品質が高いものを早く、かつ、IPとしての資産にできる(LTVで見た時にも利益がしっかり出る)。

既存の販売販路なども活用しながら、次々と新しいコンテンツを出し、この素晴らしい営業利益率を叩き出していると想定される。

引用元:https://www.insource.co.jp/resource/pdf/ir/23110611.pdf


本節のまとめ

この節では

自らが進める市場(自分で選んだもの or 与えられたお題)において、儲かっている企業を発見し、儲かる手法を知る

ことをゴールとした。ここで得たエクセレントカンパニーの儲かる手法は、ここからの節で使っていくのでしっかり覚えておいてほしい。

受講者へのお願い


1、自分が現在考えている領域で目標としている営業利益の10倍を確保している企業が3つ以上あるか?バフェットコードなどを使って検索してください。

2、もし企業がある場合、その中でも一番儲けている企業(エクセレントカンパニー)を調査して、何が儲けのポイントか?を確認して説明してください。

補足:もし、自分の担当領域の調査が難しい場合は、自分の興味ある業界(美容、健康など)において、1、2を実施してください。