見出し画像

[棚田で米を作ってみる](その9)「交流イベント」

開催日: 2023/10/22

 快晴。この前までの酷暑を忘れさせるようなすがすがしい秋晴れです。
棚田オーナーとしての5月に始まった一連の”米づくり”作業は前回(脱穀・糠摺)で終了いたしました。
 この度は、<棚田オーナーの方、棚田ボランティアの方、オーナー田の地主さんらとの交流会を行います。内容は、お餅つき、焼き芋、縄ぬい教室(しめ縄づくり)などです。>(「仰木八王子地区 棚田オーナー制度 2023年度 米づくり暦」より)のための集まりです。

 一連の作業の日々では、作業に邁進するあまりきわめて近しい方と数語かわす程度でしたが(もっぱらコミュニケーション力が乏しい小生のため…)、この会での後半では、初めていくらかお話しさせていただくことができました。前述のとおり、棚田オーナー制度に参加の方々、サポートしていただいた農家の方々、そしていち田んぼを運営されていた成安造形芸術大学の学生のみなさんも参加されていました(みなさんお若い、当たり前だけど…若い方がものづくり、芸術に参与される佇まいは美しく見えます)。
 ふらふら色々見ているうちに、女性学生から「あ、同じSONYのカメラですね」とお声をかけていただいたり、、。

 日本だけでなく、世界の多くで祭りは収穫祭(:収穫を神に感謝するまつりごと)であったり、収穫前に今年の種付けが滞りなく実りに結ぶように願う(:適度な降雨と青天を神に委ねるまつりごと)であったことでしょう。
 日本の場合には、収穫祭の意味合いが多いと思います。神輿を担ぐ神事も収穫を八百万の神に感謝する示しであると思います。
 この会では派手なまつりごとではありませんけれども、秋の実りを食しながら、労働を労うという趣旨では立派な集いのように感じました。

 小生の興味は、食べるよりも「しめ縄づくり」でした。
 わらを編むとはどのようになすものなのか。ひとの手しごととその歴史に興味があるもので。
 冒頭説明では、米藁よりももち米の藁が向いているそうです。比較すると米藁よりももち米藁の方がいくらか背丈が長いです。10~20%程度ほど長い様子でした。この会では事前に準備いただいていましたが、本来はもち米藁を木槌などでよくたたいて柔らかくしておくそうです。
 さて、実際のわら編み。
 小さなわら束を二つに分け、手を合掌の状態から右手を半手前に出し、それそれ親指と手のひらで束を保持しつつ、右手前だった合掌を右手後ろになるまですり合わしてきます(1)。この工程で左右それぞれの手のひらにあスライドさせなが撚っていきます。左手を軸に右手を向こうから手前にスライドさせながら撚るので時計回りにそれぞれのわら束は撚れます(2)。
 そして、左手(右手が手前に来ているので、左手わら束は向こうにあります)の束を右手手前から右手向こうに持っていきます。つまり反時計回りに撚られたわら束を持っていきます(3)。そうすると、(1)行程前の状態に戻るわけです。この工程((1)→(2)→(3))を繰り返してゆくと藁が編めるという理屈です。
 ですが、これがなるほど!となるのは、(1)工程が時計回りであり、解けよとする力は反時計回りにはたらきが、(3)工程で反時計回りに[撚られたわら束を]編むので、解けようとする力は時計回りにはたらきます。その逆作用によって、わら編みが解けない、形状を保持する均衡状態に保たれるというわけです。
 文章ではわかりませんよね…youtubeで見つけたわら編みリンクを(無許可で)張らせていただきます↓
(*動画中の方は、左手を前に→そして左手を手前にずらしながら撚っているので前述説明とは逆になります。あしからず)

 この一連は、ティム・インゴルド『メイキング』にて読んでいたのですが、実体験は初めてで感慨深いものがありました。
 ティム・インゴルド曰くですが、石器や土器など初期人類の発掘される痕跡は明確だけれども、風化によって発掘されない(もしくは発掘されにくい)結ぶ、編むといったいわば「発明」はその後の人類史の礎となりうるような重要な要素であったというものです。
 人類の原初に思いを馳せながら、編んでみました。

おとなりの編み作業を撮影させていただきました

 カロリーを摂取するための米づくりと、その遺物であるわらを編み収穫物を収集する道具、または歩むためのわらじなど、ひとの身体をもってなされる成果物とは尊いものがあります。

 「仰木八王子地区 棚田オーナー制度」に衝動的に応募・参加しましたが、とてもとても良い経験ができました。サポートいただきました運営みなさまに感謝いたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?