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おもに読書感想文というより備忘録として。ジャンルは雑多:思想・哲学、言語・人類学、自然…

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おもに読書感想文というより備忘録として。ジャンルは雑多:思想・哲学、言語・人類学、自然科学・脳科学などに興味があります。自己啓発、Howto系はあまり読みません。東京生まれ、関西育ち。Amazonのアソシエイトとして適格販売により収入を得るプログラムに参加しています。

最近の記事

『規則より思いやりが大事な場所で』(カルロ・ロヴェッリ著、冨永星訳、NHK出版)

読書日: 2024/4/16  青、赤そして緑。著者執筆の3冊目でした。  専門の物理学テーマをわかりやすく読ませるシリーズとは異なり、彼の日常の思考や行動を垣間見るような綴りです。新聞雑誌記事などからの志向の派生、そして科学する人間の正義感や倫理観の大切さを感じられるようです。科学と思想・哲学の間…人類学のような捉え方が好ましく思えました。  科学分野の(自分にとっての)新しい知見、情報に触れることができる喜びもありますが、それよりも思想、哲学的な分野での知らないことに

    • 『サピエンス全史(上)(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、河出文庫)

      読了日: 2024/4/10  以前から本書(単行本)を知っていましたが文庫版が出たので購読しました。  ホモ・サピエンスが巡ってきたながい時間を”認知革命”、”農業革命”、”科学革命”という3つの革命(第3部には”人類の統一”が入っています)に区分してとらえてゆくという志向はおおむね納得でき、ふむふむとなります。文字の発明により外部記憶が可能になった部分にも触れており、抑える点は抑えているとも感じました。最大公約数を探す意識でもって、様々な本を読でいくとこのようなまとめに

      • 『親ガチャの哲学』(戸谷洋志著、新潮新書)

        読了日: 2024/4/1  「親ガチャ」という言葉を知りませんでした。流行語大賞のトップテンにも入ってたりもするらしいです(流行語に興味がないので…)。 親ガチャとは、出生の環境を選べないため、その環境は生後の人生に大きな影響を与えるということです(らしです)。 社会的成功(主に金銭面)は、自助努力によるものか、出生によるハンデがあるのかというマイケル・サンデルの講義を見た記憶があります。こういうことでしょう。  自分の生まれた環境が好ましくないと感じる、または虐待など

        • 『水中の哲学者たち』(永井玲衣著、晶文社)

          読了日: 2024/3/27 哲学Barなるものに短時間参加したことがあります。どう振舞っていいのか分からず、後日日経日曜版で哲学Cafeの特集があり、ある程度のルールが書かれてありました。専門的な哲学用語を使わない、哲学知識を見せびらかす場ではない、ほかの人の発言をよく聞き否定しない、など。 哲学というと難しい用語を使った、独特の理論展開で、結局”ことば”のこねくり回しなんじゃないの、と思われそうですが、本書はとてもやわらかく、現実の生身の人間の「なぜ」からはじまる親し

        『規則より思いやりが大事な場所で』(カルロ・ロヴェッリ著、冨永星訳、NHK出版)

          「生命とは何か 物理的にみた生細胞」(シュレーティンガー著、岡小天・鎮目恭夫訳、岩波書店)

          読了日: 2024/3/20  文系脳の小生には、数学、物理などは特にに難しく完全理解には到達できそうもありません。ゆえに本書のような説明書を読もうとするのですが、本書においても弊理解は空中を漂っているようで、着地しようとしている地点への目測を誤っているとも感じます。  シュレーティンガー著の本書の存在を知ってはいましたが、手に取ろうと思ったきかっけは『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著、竹内薫訳、ダイヤモンド社)でした。  量子論研究で有名なシ

          「生命とは何か 物理的にみた生細胞」(シュレーティンガー著、岡小天・鎮目恭夫訳、岩波書店)

          「昨夜の記憶がありません アルコール依存症だった、私の再起の物語」(サラ・へポラ著、本間綾香訳、晶文社)

          読了日: 2024/3/18  酒を飲みすぎて、”ブラックアウト”何度も経験しているらしい。かなり酔っぱらって昨夜の会話のディテールが思い出せないなど、年ごとに少しずつ多くなっている気はしますが、どうやら”ブラックアウト”とは、それとは幾分違うようです。  ふと気がつくと”あったこともない男の上に乗っている”こともあるらしい(著者は女性)([前奏 光の都]より)。つまり、”ブラックアウト”中は行動や判断を自分の中の別の人格が担っているような感じだろうか。読み進めると、いやま

          「昨夜の記憶がありません アルコール依存症だった、私の再起の物語」(サラ・へポラ著、本間綾香訳、晶文社)

          「ハンナ・アーレント 屹立する思考の全貌」(森分大輔著、ちくま新書)

          読了日: 2024/2/29  ハンナ・アーレント(本書表記に倣う。ちくま学芸文庫では"ハンナ・アレント"表記です)の著作は『人間の条件』だけ読んだことがあるのですが、なかなか難解で大いに時間を要しました。2019発刊の本書を書店で見つけて手に取りました。  アーレント解説本は他にもあるでしょうが、本書は全体主義への理解、批判をベースとしてアレント作品の『アウグスティヌスの愛の概念』、『ラーエル・ファルンハーゲン』、『全体主義の起原』、『人間の条件』、『革命について』、『エ

          「ハンナ・アーレント 屹立する思考の全貌」(森分大輔著、ちくま新書)

          「ダーウィンの呪い」(千葉聡著、講談社現代新書)

          読了日: 2024/2/27 0.はじめに  『理不尽な進化』を読み進化論や自然科学に興味を持ち、先月『利己的な遺伝子』を読みました。書店でたまたま本書に目が留まり(以前に著者の『招かれた天敵』(みすず書房、2023)を読み、とても良かったので)、購読した次第です。 本書はテーマ設定が明確であり、進化論をめぐる歴史と歪みがギュッとうまくまとめられていると思います。新書の紙幅都合もあるかと思いますが、ギュッとしすぎているとも少し感じました。 以下、記事が少し長くなりますので

          「ダーウィンの呪い」(千葉聡著、講談社現代新書)

          「ボックス21」(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂訳、ハヤカワ文庫)

          読了日: 2024/3/2  シリーズ2作目まで遡ってきました(1作目『制裁』は既読)。エーヴェルトのパートナー(アンニ)に何があったのか知りたかったので。  その点は充足されたのですが、予想外だったのは、シリーズ中本書が最も面白いということでした(『3時間…』『3年間…』は未読です)。  初期作品でありややディテールの粗削りなところはありますが、ストーリーの構成と複層感とても良くできていると感じました。これはシリーズ化に邁進するだろう。  表紙帯に「ラスト三行、心をえぐら

          「ボックス21」(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂訳、ハヤカワ文庫)

          「グレイラットの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          読了日: 2024/2/2  シリーズ4作目で最大ページ、そして1番おもしろかった。ゴタゴタの範囲は警察組織を越え、MI5、軍隊へ広がりました(FBIは前作から登場)。  やや伏線はあったものの推理の展開と登場人物の関わりが程よく複雑で、700ページ超も適当なボリュームに感じました。  既刊文庫本は現状ここまでなので、同著者は一旦休憩(前シリーズには戻らないでおこう…いまのところ)。  本国では次作がリリースされているようです。

          「グレイラットの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          「利己的な遺伝子 40周年記念版」(リチャード・ドーキンス著、日高敏隆、岸由二、羽田節子、垂水雄二訳、紀伊国屋書店)

          読了日: 2024/1/27  本書を知るきっかけは「理不尽な進化」(吉川浩満著、朝日出版社)でした。それから随分時間が経ちましたがようやく読了しました。  初版は1976年(英国、邦訳は1980年「生物=生存機械論」として発刊)、第2版が1989年(英国、邦訳は1991年)、30年記念版は2006年(英国、邦訳共)に発刊されています。  第2版では”第12章 気のいい奴が一番になる”、”第13章 遺伝子の長い腕”が追加され、30周年記念版では序文「30周年記念版に寄せて」

          「利己的な遺伝子 40周年記念版」(リチャード・ドーキンス著、日高敏隆、岸由二、羽田節子、垂水雄二訳、紀伊国屋書店)

          「洞窟壁画考」(五十嵐ジャンヌ著、青土社)

          読了日: 2024/2/17  洞窟壁画を「何を」(第Ⅰ部)、「どうやって」(第Ⅱ部)、「なぜ」(第Ⅲ部)、「いつ」(第Ⅳ部)、「どこに」(第Ⅴ部)、「だれが」(第Ⅵ部)にわけて考察してゆきます。  いずれも発見当時(主に19世紀~)からの各分野の研究者の論考を紹介しながら、研究者らしい脚色のない事実を示してくれています。  旧石器時代の人類がなぜ、いかに(冒頭部建てのとおり)壁面に画像を描いたのか、人類学や芸術を跨ぐ分野でとても興味深く(「おわりに」にあるように著者の興

          「洞窟壁画考」(五十嵐ジャンヌ著、青土社)

          「キュレーターの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          読了日: 2024/1/23  キュレーターとは学芸員のことと思っていたのですが、ここではプロジェクトの管理運営責任者のような扱いのようです。  本書でもポーの慧眼と推理の深掘り、展開の面白さが十分にあります。けれども最終的に犯人が◯◯であったこと、動機が※※であったことが、残念でした。  キャラクター設定やストーリー展開はいずれも面白いのですが、結び方がやや残念に感じる傾向にあります(あくまで個人的に)。けれども4作目にも着手中です、、

          「キュレーターの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          「ブラックサマーの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          読了日: 2024/1/10  M・W・クレイブン作品の2冊目です(読了本として)。  本シリーズで拠点となるのが英国カンブリア州、主人公刑事の住まいがハードウィック・クロフト(Herdwick Croft)という場所です。聞いたことないのでwebのマップで検索してみました。バーミンガムの南西の湖水地帯で景観のよいところのようです。小説内でも景観や気候については都度ふれられているのですが、岩だらけのごつごつとした、というよりは草原の丘陵のようです。場所によって違うのでしょう

          「ブラックサマーの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          「自殺帳」(春日武彦著、晶文社)

          読了日: 2023/12/13  自殺をテーマとしてあつかう場合には、十分な配慮が必要とされるのが一般的だろうか。自殺は推奨されるべきではなく、何としても抑止し自死せずに生き続けるべきであり、”いのちをムダにしてはならない”と訴えるべきである、という定説に世界は満たされていなければならないという雰囲気を小生も感じるし、著者も感じているのかもしれません。  故に、「はじめに」が2バージョン付されていると思います。 一応の世間に対する配慮ののち「はじめに(別バージョン)」にて本

          「自殺帳」(春日武彦著、晶文社)

          「ストーンサークルの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)

          読了日:2023/12/26  本著者の本は初めて読みました。  最近までは(北欧サスペンス好きの道のりで)「三秒間の死角」シリーズを読んでいましたが、ほかの味わいも試してみたくなり、手をのばしてみました。  英国推理作家協会賞を受賞しているらしいですが、そんなことはどうでもよく、文庫本帯の「まだ読んでないの?いちばん面白いミステリ」に惹かれたわけでもなく、なんとなくタイトルと、ボリューム感(582ページ)が理由でした。  登場人物のキャラクター性も効いていて、推理展開の

          「ストーンサークルの殺人」(M・W・クレイブン著、東野さやか訳、ハヤカワ文庫)