あの頃のバンギャ、アラフォーにしてXGに出会う

ふと思うことがある。十代の私はなんであんなにビジュアル系が好きだったんだろう。

楽曲が好きだったというのはもちろんだ。兄に教えてもらった黒夢のpvを初めてみたとき、背中に稲妻のようなものが走ったのがわかった。9歳だ。今思えば随分とませているというか、どういう感性してんだ?ディズニー映画を見たことがなく、プリンセスに憧れるということ自体知らなかったが、そこにいくかな〜。兄の目を盗んで読むコロコロコミックは大好きだった。とにかく、初めて見た清春というお兄さんは美しく妖艶で、その歌声は聞いたことのない不安定な揺らぎ、この世にこんな妖しく輝く世界があるのか!という驚きがすごかった。そこからL'Arc〜en〜Cielや、もっと深いところまで潜りまくる思春期を送るわけだが、そこは今日は割愛させていただく。今でもいい思い出だし、よく楽曲も聞いている。

さて時は過ぎ、私も小学生の子の母となり、マイペースに自営業(デザイン仕事)をこなす日々を送っていた。ビジュアル系の後は男性アイドルにも女性アイドルにもハマったが(今だと沼るというのか?)、アイドル文化自体から十年近く離れていた。元々音楽自体のオタクというか、オールジャンル構わず聞く、という習慣はずっと持ち続けていて、いつも通り作業bgm
に悩んでいると、たまたまyoutubeであるガールズグループにたどり着いた。

Kpopか、守備範囲外だな〜と思いつつ、なぜだかサムネから目が離せない。90年代風のCGロゴ、マトリックスみたいな色味のデジタルアートを施された今どきの女子。なんか既視感あるな〜、Y2Kファッションも流行ってるしなあ、と思い、動画を再生した。

驚愕した。
冒頭の文に戻る。
[十代の私はなんであんなにビジュアル系が好きだったんだろう。]
その解答がここにあったのである。

彼女たちはXGという、全員日本人のガールズグループらしい。
研鑽と鍛錬を積んだのであろう、無駄のない美しい動きは、ダンスなどミリも通ってないズブの素人の私でさえ理解できた。
彼女たちの才能と、それに甘えない努力を前に言葉など無意味だ。伝えきれるわけがない。そんな研ぎ澄まされた彼女たちにふさわしいプロデューサーやクリエイティブ陣が揃っているのだろう、作品のクオリティは凄まじかった。一介の主婦が偉そうなことは言えん。ただこれだけは言いたいのだ。

90年代から00年代にかけて青春を送ったかつての女の子たちには、「選ばれる」ことが非常に重要だった。ファッション誌には「モテる」「愛され系」などという言葉だらけで、表紙モデルの向こう側にぞろぞろとぼやけた男たちが並んでいるのが見えるようだった。アイドルの総選挙なんかもわかりやすい例である。私たちは選ばれなくてはいけない。その無言の(無言ですらなかった気がする)強制力たるや、親から学校からメディアから四方八方、私たちは完全に出口を塞がれていた。わずか13,4の女の子にまでそれを強制する狂った世の中だった。その暗澹たる思いの中、少女だった私が見つけ、縋ったのがビジュアル系と、それに付随するファッションだったのだ。選ばれてたまるものか、と中指を立て大好きな音楽とファッションに囲まれて過ごした青春は、変わり者扱いをされ辛いこともないとは言えなかったが、少なくとも呼吸はできた。何より「私が私でいてもいい」と許してくれるような光だったのだ。だから私は、ビジュアル系が大好きだった。

そんなかつてのバンギャ、アラフォーに足を突っ込んでいる私は、強い眼差しで唄い、力強く踊るギャルたちを見て、喜びが込み上げてきた。確かにこの子たちは選ばれたからここにいる。ただそれは自身の行動原理に基づいたものであり、おそらく他人に強制されたものではない。そして今この自信に満ちたパフォーマンスはまるで「今度は私が選ぶ番♡」とまで聞こえてきそうな強さと気高さに溢れていて、胸がぎゅうっとなり、涙がこみ上げてきた。おそらくこれは、13歳の私の涙だったんだと思う。だから思った。今を生きる十代のメンバーに、「答えをくれてありがとう、お姉ちゃんたち」と。

私はあの頃縋った一筋の光を、今も心に灯している。そしておばさんになって、今度は自ら強大な輝きを放つ女の子たちに出会えた。
ありがとうXG。応援してますよ。

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