よだか診療所

鳥取県米子市の在宅療養支援診療所。「降っても散っても愉しい暮らし」をテーマに、暮らしに…

よだか診療所

鳥取県米子市の在宅療養支援診療所。「降っても散っても愉しい暮らし」をテーマに、暮らしに息づく愉しみ・心地よさを患者さんや家族のみなさんにご提案できる医療者でありたいと考えています。

最近の記事

在宅医療と介護:安心できる医療環境を作るために

皆さんこんにちは。米子市の在宅医、前角です。 最近久しぶりに本屋さんに立ち寄りました。生活雑誌コーナーの最新号2冊に、「介護生活特集」が載っていました。 親御さんのお世話をするひと、あるいは自分自身の介護について考えるひと、そのような方が迷ったり困ったりされることがやはり多いのだなと感じました。 ですからきょうは「安心した介護療養」のために、どうやってよりよいセーフティネットを作ればいいのか、ご提案したいと思います。 医療と介護の両方の側面からこれは準備が必要ですね。

    • 在宅医療:いつから適応になるのか

      みなさんこんにちわ、米子市の在宅医療「よだか診療所」の院長、前角です。 今日は、どんな患者さんに在宅医療の適応があるのか、について考えてみたいと思います。というのも、一人でも多くの方に自宅で「安心して過ごせる」ようになってもらうことが、私たちの願いだからです。 ―【通院できている】で安心? 例えば、何か持病があって、長らく大きな病院で専門外来の先生にかかっておられる方がおられるとします。 1か月から3か月に1回などの定期通院でお薬をもらっている方は、多いですよね。待合

      • ― ホスピスカー 米子の街を走る ―

        みなさんお元気ですか、鳥取県は米子市の在宅医、前角です。 今回は、当院が県内で初めて昨年認可を受けた医師同乗の緊急走行車両(通称ホスピスカー)について、のお話です。 まだまだ馴染みの薄いホスピスカーですが、その存在意義、「救急医療にACPを持ち込む」ことの大切さについて、熱く語りたいと思います。 「在宅医療」「緩和ケア」と「救急車両」の繋がりは分かりにくいものがあると思います。 ホスピスカーは、当院が独自にご案内している、県内初の試みです。 患者さんからの相談を受け

        •  食べること 生きること-「在宅医療の現場から」-

          こんにちは、米子市の在宅クリニック「よだか診療所」の前角です。 突然ですが皆さんは、食べることは好きですか。 今日は何を食べましたか。誰と何処で、どんな風に食べましたか。 愉しかったですか。美味しかったですか。お腹はいっぱいになりましたか。 今回は在宅医療の現場から「食べれなくなる」ということの意味について考えてみます。 食べることは生きることの基本です。私たちは毎日何かを食べて、エネルギーを得て、活動しています。 食べることは複雑な行動で、目が覚めている状態で、

        在宅医療と介護:安心できる医療環境を作るために

          「ACP(Advance Care Planning):家族と共に考える、心の折れない選択」

          夏至が終わり、本格的な夏が始まろうとしています。ご無沙汰しています。みなさんいかがお過ごしでしょうか。 今回は私たちから、在宅療養にまつわる重要なテーマについてお話しします。それは、「本人の心が折れてしまうのが辛くて」告知をためらうご家族と一緒に、自宅で過ごす患者さんについてです。 「降っても散っても愉しく」をモットーに、私たちは数年間にわたり、このような患者さんと接してきました。 重病の病名や、将来的な予後の告知というのは、ご本人はもちろん、医療者にとっても家族にとっ

          「ACP(Advance Care Planning):家族と共に考える、心の折れない選択」

          新年所感 -確かさとやさしさを大切に-

          今年もすでに1か月が過ぎました…光陰矢の如し。 昨年はあまりにも記事を書かなかったので、もはや忘れ去られてしまったであろう この場所に、昨年の振り返りと本年の抱負について記したいと思います。 一昨年、新鮮な驚き・気づきとともに、様々な記事を書かせて頂きました。 昨年はなぜ書けなかったかというと、 「何かこれどっかで聞いたことある感」と「こんなぼやき書いたってどうしようもない感」に苛まれ、やむなく泣き寝入りしていたということです。 壁を感じるほど何かに挑戦している証

          新年所感 -確かさとやさしさを大切に-

          【2021年所感 ~近未来感がすごいのに~】

          新しい1年が来ました。 2021年。何か1歩踏み出した感がある数字ですね。 昨年はコロナ、コロナだらけ。 コロナしかなかったかと言われれば、決してそうではありません。 かのイタリア近代童話作家、ジャンニ・ロダーリが 私たちに伝えたかったこと― 「この両腕を使って 今までなかったもの・足りなかったものを 世界に生み出し続けていくこと」を、 自分たちなりに考え、取り組み、一時ごちゃごちゃになりつつも、 そんな時はしばしば焼き肉を食べ、小児と同レベルの仮眠を取り、 仲間たちで再

          【2021年所感 ~近未来感がすごいのに~】

          食べる延命 食べれない延命…そもそも延命とは

          「延命療法」という言葉が忌み嫌われて久しい。 「治癒の見込みがない状態での生命の存続を図るための対称的な治療」 の意である。 「これって延命治療ですか」「延命はしたくないです」 皆が口にする言葉である。 賛否両論あると思うけれど、在宅医療の現場は延命治療で溢れている。 それがいいか悪いかという物差しはどこにも存在しない。 何故なのかということをここにお話ししておく。 治せない病気、抗えない老い。 その中で人は今日も生きる。明日も生きる。 それを支えてくれている人が必

          食べる延命 食べれない延命…そもそも延命とは

          【「地域包括ケア」掲げられた理想と 光と影】

          慌ただしかった夏が過ぎていきました。 様々な経験を通して、なかなか記事が書けずにいた今日この頃、やっと秋になり、静かな気持ちになって、言葉を紡ぐ準備が整いました。 「あの家族に本人があの状態で、家で介護ができるわけないじゃないですか」 いったい誰の発言なのか。 どちらにお住まいで、何のご病気でいらっしゃるか、 どなたと住んでいらっしゃるか、それは問題ではありません。 ただ、彼らは家で暮らしたかった。 開院して1年、これが我々の現状です。 在宅医療に携わっていると、地域で

          【「地域包括ケア」掲げられた理想と 光と影】

          生き心地はどうだ

          「生きにくい世の中になった」とよく聞く時代になりました。 7月23日に明るみになった刑事事件について、 日本緩和医療学会が声明文を発表しました。 【緩和ケアは(中略)QOLを、痛みをはじめとする身体的な苦痛、心理社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛などを予防し和らげることを通して向上させるアプローチです】 「耐えがたい痛み」に苛まれ続けるとき、 人は生きる希望を失ってしまうから。 その痛みが何であるか――体の痛み、治せない病の辛さ、 社会で認めてもらえていないのではないかとい

          生き心地はどうだ

          命が茂る・新緑にACPを重ねて

          新緑の季節、人の命も輝きを増すかのようです。 私たちは毎日いろいろな場面に遭遇しながら奮闘しています。 今回はACPなんて大層なお話なのですが。 なんと言っても、これに尽きるのです。 「定命を全うしたい」 最近初めて目にした言葉です。定められた命。 私たちの定命はどこにあるのでしょうか。 「家にずっといたい」 どんなことがあっても―という前置きがある方もいます。 「もう死んでもええやな」と仰いながら、 血圧やコレステロールを気にしている人。お話していて心がほころびま

          命が茂る・新緑にACPを重ねて

          つながりを深めよう、今!

          在宅勤務に移行して、もうすぐ1か月が経とうとしています。 私たちは直接、物質的な空間を共有することは 自粛していますが、ネットワーク上で顔を突き合わせて集まり、 スタッフは相変わらず患者さんたちのことを一番に考えて一心に仕事しています。 彼女たちの真摯な姿勢、そして様々な状況にすっと対応してくれる柔軟さに、 頭の下がる思いです。 そして当院の体制が急に変わったにもかかわらず、変わらず連携して下さっている 各事業所のみなさま、医療機関の方々にも深く感謝申し上げます

          つながりを深めよう、今!

          コロナウイルスに関するお願い。

          創めたばかりのつたない文章で、一部の熱狂的なファン(!)を除き、 未だ読者数の伸びない当ページですが、 今夜は全世界に向けて(!)発信したいと思います。 当院は、先週末から在宅勤務を導入しました。 在宅医療を――患者さんを、その家族さんを、地域で頑張っている在宅スタッフのみなさんと、そして職員を、守りたかったからです。 この山陰にもCOVID-19の気配が漂ってきました。 今までに十分準備する時間はあったけれど、万全だなんて、 誰にも言えなかったんじゃないかな。

          コロナウイルスに関するお願い。

          地球より重いっていうなら答えてくれ・生命倫理のお話

          県内発生いまだ0件。お陰様で従業員一同体調良く活動しています。 緊急事態宣言、一層の自粛要請。 当院でもマニュアル作りを加速化させました。 日本医師会のプライマリケアの手引きをもとに、感染対策を整理。 マスクは毎日少なくなる。気道分泌物の微細な飛散に対応するための、 N95マスクの備蓄はほんのわずか。 ガウンが足りない。入荷未定。 ゴーグル・体温計・SpO2モニターも買い足せない。 気づいたら経験したことのない事態。 難しい文言をかみ砕いてみなさんにお伝えできるよう、資

          地球より重いっていうなら答えてくれ・生命倫理のお話

          猫と認知症とあなた

          宮沢賢治の童話「猫の事務所」を知っていますか。 主人公のかま猫は、寒がりなのでかまどの中で眠る癖があり、 「薄汚い」とほかの猫から疎んじられ、排除されます。 突然ですが、こんな想像してみてもらっていいですか。 あなたは一人で呑気に暮らしていて、そこは若い時からずうっと住み慣れた家だとしましょう。 幾瀬も過ぎて、すっかり歳を取って、体の動かしづらいところが出てきました。 疲れて頭がぼうっとすることもあるけれど、なんだ今も変わらずあなたは元気です。 するとある日突然、誰かが

          猫と認知症とあなた

          在宅医療の「かわいそう」な現実。どう向き合う

          「何だか見てるとかわいそうで…」 最近はたと気づきました。いつからその患者さんは かわいそうだったのか。 病気そのものがかわいそうなのか、 環境が整わないことがかわいそうなのか。 「こんな体 悔しいね」そりゃそうだ。 「やってらんない もうだめだ」そうだそうだ。 言葉にするのは空しいことじゃない。そこから現実と向き合う力が、 寄り添う勇気が生まれてくるから。 だけど「かわいそう」。 この言葉にはばねがない。辛い現実から希望を見出す、 大変で大切な取り組みに必要な、ばね

          在宅医療の「かわいそう」な現実。どう向き合う