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月途中就任の取締役報酬の考え方

取締役は会社との委任契約なので役員報酬を日割り計算することは委任契約の性質に反し、法人税法上の定期同額報酬の原則から日割り計算すると一部損金不算入という問題も生じるので、一般的には任期途中であっても満額支給するのが通例です。

一方、法的には、民法上の原則として受任者は特約が無ければ、委任者に対して報酬を請求することが出来ないとされていますので、取締役は特約が無ければ会社に対して報酬を請求することはできないことになります。(民法648条1項)

しかし、取締役と会社との委任契約に関しては、明示的または黙示的に報酬支払の特約が含まれていると解されており、実務上は原則的には取締役は報酬を受けることが出来ると解されています。

もっとも、このように取締役は原則として会社から報酬を受け取ることができると解したとしても、会社法361条が取締役に対する報酬は、定款または株主総会の決議で定めることとし、取締役の報酬を株主の自主的判断に委ねるとした法の趣旨からすると、定款または株主総会の決議によって、任期途中、例えば「月の16日以降に就任した者に対しては就任月は無報酬」と定めたのであれば、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない」とした民法648条2項の趣旨を鑑みても、取締役には会社に対してそれを不服としての具体的請求権は発生せず、当該取締役は会社に対して報酬を請求できないものと考えられます。

まとめると、月途中就任であったとしても就任月も全額支給するのが一般的ではあるものの、定款または株主総会の決議でルールを定め、初月無報酬としても問題にはならないという事になります。

  〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会




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