ヨドロウ(社会保険労務士法人 淀川労務協会)

業歴60年。大阪の「社会保険労務士法人 淀川労務協会」のアカウントです。(委託事業所数…

ヨドロウ(社会保険労務士法人 淀川労務協会)

業歴60年。大阪の「社会保険労務士法人 淀川労務協会」のアカウントです。(委託事業所数:約600社) 人事労務分野のコンサルティングと社会保険事務のアウトソーシングを主な業務としています。労働問題コラム「ヨドロウノート」を配信中。フォローお願いします! 06-6676-7750

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≪コラム≫ 減給の制裁は人権侵害?

少し驚いた相談事例がありましたのでご紹介させて頂きます。 RBA(Responsible Business Alliance)行動規範とは、電子機器業界中心に、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷に対する責任を促進するために示した基準であり、2004年にHP, IBM, DELLなどが中心となって作成したEICC (Electronics Industry Code of Conduct)が業界の枠を広げるために改称し制定されたものです。 近年、サプライヤーに対してRB

    • 傷病手当金支給申請と休業補償給付請求と雇用契約の解消

      例えば、上司からのパワハラが原因で精神疾患に罹患し休業を余儀なくされたと主張する者は、まず労災保険への休業補償給付請求を検討する事になります。 精神疾患がパワハラの影響を受けて発症した事が明らかな場合であっても、それが労災認定基準をクリアするか否かは別問題ですので、業務起因性が伺える精神疾患だけれども労災保険による給付は受けられないという事は起こり得ます。 因みに、令和4年度の労災認定率(請求件数に対する支給決定件数)は35.8%です。 労災請求を考える中で、認定は簡単では

      • 労働者死傷病報告書の提出で困っていること <労働者派遣>

        労働者派遣における労働者死傷病報告の提出手続きに関する法律関係は次の通りです。 イ.派遣先が派遣先所轄労働基準監督署[甲]に労働者死傷病報告を提出する義務(安衛法第97条) ロ.派遣元が派遣元所轄労働基準監督署[乙]に労働者死傷病報告提出する義務(安衛法第97条) ハ.派遣先が派遣元に派遣先が提出した監督署受理済の労働者死傷病報告(写)を送付する義務(労働者派遣法施行規則第42条) 施行規則第42条は「派遣先が派遣元に送付しなければならない」とされており、「派遣元は派遣先

        • 契約期間満了日付での解雇?

          例えば、令和5年1月1日~12月31日を契約期間とする有期契約の労働者(勤続期間6年)がいるとします。 当該労働者が10月1日に普通解雇事由に相当する不祥事を起こしたとします。 この場合、契約満了日が近いので、解雇ではなく、相対的に不当とされるリスクが低い12月31日付での雇止め(契約不更新告知)を一般的には選択します。 この雇止め予告通知をなした後に、当該労働者が無期転換申込権を行使したとします。 無期転換申込権における無期転換とは、「同一の使用者との間で有期労働契約が

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          労働者派遣における実労働時間管理と賃金と派遣料金の支払いの関係

          労働者派遣における実労働時間の把握責任等は次のとおりです。 これに基づけば、タイトルの問題は次のように整理されます。 イ)派遣労働者の実労働時間の把握は派遣先のみがその責任負っている。 ロ)つまり、派遣元は派遣先から提供された実労働時間情報に基づき計算を行い賃金を支払えばよい。 ハ)一方、派遣先から派遣元への派遣料金の支払いの根拠となる時間は、必ずしも分単位で支払わなければならない訳ではなく、労働者派遣契約(派遣元と派遣先との企業間契約)の取り決めによるので、法的な縛

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          弁護士からのタイムカード等の提出要請に素直に応ずるべきか?

          元従業員から委任を受けた代理人であるとして弁護士等から内容証明等の書面が届き、次のような書類の提出を請求されることがあります。 請求の根拠としては、「未払い賃金が発生しているため」とのみ記載され、「裁判手続きにおいて被告(使用者側)が争うのであれば、民事訴訟法220条、221条により主張立証責任の根拠としてどうせ提出しなければならないのだから、無用な手間を回避し紛争の早期解決を図るために最初から任意で提出しなさいよ」というのが言い分のようです。 確かに間違いではないのです

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          「過労自殺」と「本人の性格」

          神戸市東灘区の病院「甲南医療センター」で勤務していた26歳の男性医師が昨年5月に自殺し、本年6月5日付で西宮労働基準監督署が労災認定したとのことです。 報道によれば、死亡直前1か月の時間外労働は207時間50分で、3か月平均でも月185時間を超えており、自殺するまで約3カ月間、休日が1日もありませんでした。 正に、「常軌を逸した過酷な労働」であり、労災認定された以上、使用者の安全配慮責任は免れないでしょう。 さて、過労やメンタルヘルス等の問題が生じた際に、当該労働者のパーソ

          月途中就任の取締役報酬の考え方

          取締役は会社との委任契約なので役員報酬を日割り計算することは委任契約の性質に反し、法人税法上の定期同額報酬の原則から日割り計算すると一部損金不算入という問題も生じるので、一般的には任期途中であっても満額支給するのが通例です。 一方、法的には、民法上の原則として受任者は特約が無ければ、委任者に対して報酬を請求することが出来ないとされていますので、取締役は特約が無ければ会社に対して報酬を請求することはできないことになります。(民法648条1項) しかし、取締役と会社との委任契

          従業員からの未払い社会保険料の回収について

          私傷病休職による長期欠勤等により、支払うべき給与よりも社会保険料本人負担額が上回ってしまう場合には、社会保険料を控除し切れない事があります。 当該従業員から不足分が振り込まれるならば問題ありませんが、未納のまま退職され、支払いが為されない場合には会社は対応に苦慮することになります。 当該従業員に退職金がある場合には、相殺により一括控除が可能です。 但し、賃金から控除できるのは労働者が負担すべき前月の社会保険料に限られており(健保法第167条1項、厚年法第84条1項)、一括控

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          派遣元の使用者責任(不法行為責任)と派遣先の過失相殺

          労働者派遣契約(派遣元と派遣先)での損害賠償の取り決めで、派遣労働者が派遣先に損害を与えた場合、当たり前のように派遣元のみに使用者責任を負う事を求められる事があります。 労働者派遣では派遣労働者は派遣先の指揮命令下で業務に従事していて、派遣先が万全の管理体制を整えていたならば、器物の損壊や、現金違算、犯罪行為は回避・軽減できた(もしくはもっと早く発見できた)かもしれなかった訳ですから、派遣先にも過失割合は生じますし、例えばフォークリフトの接触事故等、直接雇用の労働者でも起こ

          派遣元の使用者責任(不法行為責任)と派遣先の過失相殺

          Google社による初めての退職パッケージについて

          Google合同会社(Googleの日本法人)の社員が同社からの退職パッケージに対抗するために労働組合を結成したとの事で、3月2日に記者会見が開かれました。 同会見によるGoogle社のパッケージは次のような内容との事です。 会見ではGoogle社からのパッケージメールも現物公開されており、それによれば直接的に退職するよう薦める内容はなく、パッケージに応じない場合には解雇となる旨も明示されていないようなので、現時点ではとりあえずは整理解雇ではなく「解雇を予定していない希望退

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          育休中のリスキリング「後押し」との首相答弁の問題について

          1月27日の国会で、岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」の1つとして育児休業中の人らのリスキリングを後押しすると答弁されました。これに対し、世論や識者等から大きな批判が集まっています。 2022年の流行語大賞にノミネートされた「リスキリング」とは、経済産業省の定義に従えば「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」となります。 「デジタル化による労働の自動化」、「経済環境のグローバル化」

          育休中のリスキリング「後押し」との首相答弁の問題について

          なぜ労働条件の一方的な通知で労働者を雇用することができるのか

          労働基準法15条1項は、労働契約の締結の際に、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示することを使用者に義務付けています。 明示すべき労働条件は、いかなる場合でも明示が義務付けられる事項(絶対的明示事項)と、それ以外で個別に取り決めた場合に明示が義務付けられる事項(相対的明示事項)に分かれます。 そして、絶対的明示事項は、昇給に関する事項を除き、原則として書面(労働条件通知書)により労働者に明示しなければならないとされています。 一方、雇用契約書とは、使用者と労働

          なぜ労働条件の一方的な通知で労働者を雇用することができるのか

          休職期間満了日までに私傷病が治癒しない事が最初から確実である場合の取り扱い

          私傷病(業務外の負傷や疾病)は、労働者の責任によるものです。 通勤災害も原則、この私傷病に含まれます。 私傷病を理由とした欠勤は、労働債務の不履行となります。 「使用者と労働者との間で取り決められた、労働契約に基づく労働者が使用者に労務を提供する義務」を労働者に帰責する事由により果たせない事になり、これが長期間に及ぶ場合には重大な契約違反という事になります。 つまり、私傷病による長期欠勤は普通解雇事由に該当します。 但し、日本は解雇規制が厳しく、私傷病による長期欠勤を理由

          休職期間満了日までに私傷病が治癒しない事が最初から確実である場合の取り扱い

          人事評価による減給を伴う降格の合理性

          会社が期待した役割を担えないと判断せざるを得ない管理職がいるので降格させたいが可能かというご相談を顧問先様から頂戴することがあります。 この場合の降格は、従業員が問題を起こした場合に適用する懲戒による降格(降格処分)ではなく、人事評価による降格になります。 まず、人事評価により降格させる場合には、「契約上の根拠」が必要になります。 「契約上の根拠」とは個別の同意を得るという方法もあれば、就業規則(人事評価規程等)に定められた合理的なルール(降格基準)に基づいて行うという方

          人事評価による減給を伴う降格の合理性

          「サイバーエージェントの固定残業代80時間問題」と「割増賃金率の目的」について

          インターネット広告大手のサイバーエージェントが、2023年春の新卒入社の初任給を42万円に引き上げるとのことです。(日本経済新聞2022年7月26日) 大きな話題となったのは初任時42万円という金額ではなく、この月額に「時間外労働80時間/月、深夜割増46時間/月」の固定残業代が組み込まれており、「基本給25万円+固定残業代17万円」に分解される点です。 ネット上では「法的に有効か、無効か?」を中心に議論が為されているように見えますが、少し視点を変えてこの問題を考えてみたい

          「サイバーエージェントの固定残業代80時間問題」と「割増賃金率の目的」について