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労働者死傷病報告書の提出で困っていること <労働者派遣>

労働者派遣における労働者死傷病報告の提出手続きに関する法律関係は次の通りです。

イ.派遣先が派遣先所轄労働基準監督署[甲]に労働者死傷病報告を提出する義務(安衛法第97条)
ロ.派遣元が派遣元所轄労働基準監督署[乙]に労働者死傷病報告提出する義務(安衛法第97条)
ハ.派遣先が派遣元に派遣先が提出した監督署受理済の労働者死傷病報告(写)を送付する義務(労働者派遣法施行規則第42条)

派遣先の事業を行う者は、労働安全衛生規則第九十七条第一項の規定により派遣中の労働者に係る同項の報告書を所轄労働基準監督署長に提出したときは、遅滞なく、その写しを当該派遣中の労働者を雇用する派遣元の事業の事業者に送付しなければならない。

[派遣法施行規則第42条]

施行規則第42条は「派遣先が派遣元に送付しなければならない」とされており、「派遣元は派遣先に送付を求めなければならない」とはされていません。
即ち、施行規則第42条の不履行(未送付)が認められた場合は、派遣元に帰責する事由により派遣先が送付できないような特別な事情(具体的には受け取り拒否等でしょうか)が無い限り、派遣先のみが労基署[甲]から咎められる事になるはずです。

従って、行政調査を行う場合には、①労基署[甲]が派遣先に対し送付済確認を行うか②労基署[乙]が派遣先からの死傷病報告(写)の送付を受けているかを派遣元に確認し、送付されていない事が判明した場合には、労基署[乙]から労基署[甲]に情報の共有を行い、労基署[甲]から派遣先に対して行政指導等を行うのが法的に正しい手続きのはずです。

ところが、実務では、派遣元が労基署[乙]に労働者死傷病報告の提出を行う(ロ.の手続のこと)際に、ハ.の労働者死傷病報告書(写)の添付を求められ、添付されていない場合には派遣元から派遣先に督促するように労基署[乙]から派遣元が指導もしくは要請されます。


「労働者死傷病報告の書き方(派遣」抜粋 熊本労働局 

この場合、派遣元は派遣先からの労働者死傷病報告書(写)の提出を待たなければロ.の手続を行えない事になりますし、提出遅延を避けるために未添付でロ.を提出した場合には、派遣元には本来責任がないにも関わらず派遣元から派遣先に督促を行うよう労基署[乙]から指示され、多大な事務負担が生じてしまいます。

いくら要請しても送付が遅れたり、送付しない派遣先もあるようで、労基署には法律に従った運用及び指導に改善頂きたいと働きかけているのですが、なかなか応じて貰えないですね・・・😿。

三浦 裕樹/MIURA,Yūki

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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