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2000年代どんな音楽が流行ってた?【US編前編】

2月12日にリリースされたPale Wavesのアルバム『Who am I?』が先行リリースの時点で2000年代のリバイバルだと音楽好きの間で大きな話題となっている。

前作とは大きく変わった、Avril Lavigneなどを彷彿とさせるサウンドと曲調は、幼少期を2000年代を過ごした僕ら世代にとっては懐かしさを覚える。
実際にフロントマンのHeatherも1995年生まれと、同世代として同じような音楽を聴いてきた影響もあるように感じる。

20年周期で音楽はリバイバルされていくと言われているが、その理論で言うと2020年代は2000年代のリバイバルの波が来るということになる。
そして実際Pale Wavesの新作や、昨年リリースされたBeabadoobeeの『Fake It Flowers』でもジワジワその波の訪れを感じることができる。
そこで、その2000年代にどんな音楽がリリースされていたのかをこの機会に振り返ってみたいと思います。

今回はその1回目、US編と題しまして主に2000年代のアメリカの音楽について振り返っていきたいと思ったんですが、やはり10年を振り返るのはあまりに膨大な情報量だったので、音楽市場的にまだアメリカが中心だった2005年あたりまでを前編とさせていただき、全2回に分けて書いていきたいと思います。

そして、その当時を小中学生のキッズとして過ごしてきた自身の主観で書いていくので、世代的に違いを感じることもあるとは思います。その点はご了承ください。
違う!となったらコメントでお待ちしてます。

全てがポップになっていく2000年代

個人的に2000年代は大きく前半後半で変わる分岐点があると思っています。
タイトルにも書いた通り"全てがポップになっていく2000年代"が個人的に振り返った時の率直な印象。特に2000年代の前半はその部分が見えてきます。

90年代でメインカルチャーへと躍進していったHip HopやR&B、グランジやスケートボードカルチャーから生まれたスケートパンクなどがメインカルチャーへと成長していったおかげで2000年代では商業的な音楽性の利用をされることが多くなった。
こういったことはどんな音楽性であれ大衆的になったものの宿命なのです。

1.ポップになっていくパンク

特にその部分を担ったのが、スケートパンクやメロディックパンク(メロコア)と呼ばれるジャンルの音楽。
90年代にカリフォルニアのオレンジカウンティを中心にスケートボードの文化と親和性を持って成長してきたパンクロックを主にスケートパンク(スケボー乗ってる野郎たちが聴いてそうな音楽)と呼び、その中心的なバンドとしてNOFXThe Offspringが台頭し、アメリカのみならず世界的なヒットを巻き起こす。

そしてGreen DayRancidの出現により90年代後半から2000年代前半にはメロディックパンクシーンは更なるピークを迎えるべく、"ポップパンク"へと成長していく。

ポップパンクの出現

音楽が大衆的になることを個人的に劣化したとは思わない。ただ、売れる音楽性に飛びついて商業的に音楽性だけを利用したがる人たちが多く現れることも確か。
まずポップパンクと聞いてピックアップしたい2バンドといえばBlink 182Sum 41

当時はアメリカで絶大な人気を持っていた音楽チャンネルMTVが、その当時人気のあった多くのポップパンクバンドを取り上げ、その人気が世界中に発信されるきっかけとなる。その代表的なバンドこそがBlink 182
とにかく毎回ふざけたMVで話題を呼び、"All The Small Things"では当時世界中で爆発的な人気を誇っていたボーイバンドのMVをパロディをしたり、街中を全裸で走り回る"What's My Age Again"など今ではSNSで大騒ぎになりそうなMVも当時の彼らの人気を決定付ける要因になった。

彼らの底抜けに明るいおバカなキャラ、下ネタ、スケートブランドのファションなどは当時のポップパンクバンドのひとつのスタイルとして確立された。

そしてSum41はカナダ出身の4人組バンド。Blink182と比較されながらも当時のポップパンクシーンで人気を博した。

Sum41はメロディックパンクのサウンドを持ちながらもメタルやBeastie Boys以降のラップ、日本ではミクスチャーロックと呼ばれるラップメタルやニューメタルの要素も盛り込んだサウンドが特徴。

"Still Waiting"のMVではバンド名をもっとかっこいいものに変えないかという会社側の提案で始まるのだが、そこで挙げられるバンド名にThe StrokesThe Vinesなど"The"が付くことバンドが非常に多く、その辺りのバンドが人気もあったことが伺える。
その辺りのバンドに関してはUK編で(The Strokesはアメリカだけど!!!!!!The Vinesもオーストラリアだけど!!!!!!)触れていきたいと思います。
そしてこのMVがThe Strokesの"Last Nite"のMVのオマージュにもなっているのも2000年代を象徴するポイント。

また、Sum41は日本でも人気があり、当時の日本でもAir JamHi-Standardなどの影響でメロコアはひとつのブームとなっており、他にもZebra HeadNew Found Gloryなどは本国以上の人気があったのではないかとも感じる。
ひとつ言えるのはこの当時のポップパンクバンドは全てアホなのだ。彼らにはモラルなんてものは存在しない。底抜けに明るければなんでもありだ。


ポップパンクアイコンの登場

このポップパンクブームがここまでの人気に留まらない大きな要因がAvril Lavigneの存在にある。

いつの時代にもMiley CyrusやTaylor Swift,Ariana Grande,Billie Eilishのようなその時代を象徴する少年少女たちの憧れのポップアイコンが存在する。そしてそのポップアイコンの音楽性は必ずその当時の一番ポップな音楽性を反映している。そのことは"Sk8er Boi"を聴けば一目瞭然である。
2002年、そんな2000年代を象徴するポップパンクアイコンはカナダから突如として現れた。Tシャツにジーンズにチェーンにドクロ、軽率にPunkの横に❤️を書いてしまう感じに、70年代から脈々と受け継がれてきたパンクは遂にここまで来たと感じた。

そして彼女の音楽性はポップパンクと少しダークなポストグランジ的なサウンドをミックスすることで、新たなポップミュージックのジャンルを切り開くことになる。
実際、Avril Lavigneの音楽性がこれ以降の2000年代のポップミュージックの音楽性の下地になっていることは間違いない。だからこそPale Wavesの新譜を聴いたときにAvril Lavigneと2000年代感を同時に感じたのだと思う。
この後、Avril LavigneとSum41のDeryck Whibleyが結婚したことは当然大きな話題となった。

Avril Lavigneが登場した辺りからよりキャッチーで、よりポップなバンドが多く現れる。
中でも個人的に印象が強いのがGood Charlotte,Simple Plan,The All American Rejectsの3バンド。
以前よりもどこか爽やかな印象を受けるのがポップパンクの大きく変わってきたところだと感じる。

このポップパンクの流れは、アメリカで1995年から開催されていたパンクロックバンドが多く出演するフェスティバル、Warped Tourのラインナップを振り返ることで見えてくる。

そして時代はエモへ...

ここまで書いてきたパンクロックの流れの裏で、90年代から続いてきたエモと呼ばれるジャンルの音楽がある。
このジャンルは特に派生が多く、定義も曖昧なため正確に説明することは難しいが、主に曲調よりも楽曲の内容を指すことが多く、繊細な思春期の時期の苦悩や自己のメンタルヘルスについてを歌う楽曲が多い。
元々のエモはスクリーモから派生したジャンルであったり、変拍子を取り入れていたりと音楽性に特徴があったが、それをポップに仕上げエモポップ、エモポップパンクというジャンルを発生させたのがWeezerであり、Jimmy Eat Worldである。

つまりこれまでのポップパンクというジャンルに"エモ"という新たな要素が加わることで2000年代後半にその人気は更なるピークを迎える。

そしてBlink 182は2005年に活動休止し、Green Dayは『American Idiot』が高く評価され、ロックバンドとしての地位を築いていく。
そして悲しいことに多くのおバカポップパンクバンドもエモ路線に舵を切るようになっていく。

その次なるエモポップパンクシーンに台頭してきたバンドとして絶対欠かせない存在がFall Out BoyMy Chemical Romance

このカリスマ的な音楽性を持った2バンドが2000年代後半のエモポップパンクのシーンを動かしていくことになる...。
この続きは後編で書いていきます。


2.ビルボード的ポップスの話

ようやくここから音楽チャートに関わってくる話をしていきたいのだけど、アメリカに住んでいたわけでもないのでこの辺りの事情は本当に疎いです。しかし、体感した知ってる範囲だけ書かせてください。

2000年代の前半といえば90年代後半から世界的にボーイバンドブームが巻き起こっていたので、Backstreet Boys*NSYNCの2グループの印象は強い。
ある意味で今のBTSのブームはこの時代のリバイバルも多少あるのかもしれない。

しかし、Backstreet Boysは2000年に入りそれぞれのソロ活動などが増え、*NSYNCは2002年に活動を休止する。
そして、*NSYNCの中心メンバーであったJustin Timberlakeがソロデビューし大ヒットし、2002年にグラミー賞を受賞。

そして、Beyoncéも同じようにDestiny's Childの活動休止を経てソロになり、"Crazy In Love"の大ヒットにより更に爆発的な人気を獲得する。

この当時に"かっこいい女性"がトレンドにあったのかは分からないが、No DoubtGwen StefaniP!nkの人気を見ても、かっこいい女性シンガーの人気があったように感じる。

ヒップホップ人気の加速

今や世界で1番聴かれている音楽になったヒップホップ。その転換期となったのがこの2000年代だと思う。
2000年代に入るとポップミュージックとヒップホップが融合し始める。パンクの時にも書いたように、音楽は人気になると大衆的になる。ヒップホップも例外ではないのだ。

そんな時に決まって名前が挙がるのがTheBlack Eyed Peas

多くの人がFergie加入後のイメージが強いと思うが、元々Fergie加入前はAtban Klann名義でN.W.A.Eazy-Eが社長をしていたRuthless Recordと契約していたほどのゴリゴリのヒップホップグループだったのだ。
そしてFergieが加入し、3rdアルバムで世界的に大ヒットして2000年代を代表する世界的なヒップホップグループとなる。

しかし、N.E.R.DKanye WestEMINEM が出てきたのもこの時期なのだからヒップホップはおもしろい。

2000年代前半にヒップホップの人気は拡大し、セールス的に成功したものの文化としての成長がなかった。
そんな2000年代に対し、Nasが2007年にリリースした"Hip Hop Is Dead"という曲がある。
いま振り返っても、この当時は一発屋と呼ばれるようなアルバム一枚リリースして消えていくような人たちがあまりにも多かった。

そして本当にその当時から才能のあった、PharellやKanyeは2010年代に更なる飛躍を遂げることになる。


3.忘れられがちなポストグランジ的アメリカンロック

日本での人気がイマイチだったせいで日本での認知度が異様に低いこのジャンル。そもそもポストグランジってなんだよっていう人も多いはず。
簡単に説明すると、90年代に流行したNirvanaPearl Jamのサウンドに影響を受け、それをもっと聴きやすく歌モノに仕上げた音楽性と思ってもらえればと思います。
とにかくこのジャンルが2000年代のアメリカのポップスの基盤になっていたことはこの当時のヒットソングを振り返ることで見えてくる。

初期のポストグランジこそNIckelbackCreedのような所謂男臭い、骨太で厚みのあるグランジのサウンドから直接の影響を受けたバンドも多かったが、次第に様々な発展を遂げていく。これぞ"ポスト"と呼ばれる所以である。

そしてポストグランジと呼ばれる音楽は徐々にメロディ重視の音楽性が主流に変わっていく。
特に1998年にアメリカでヒットしたGoo Goo Dollsの"Iris"はその流れを作った大きな存在であると思う。

美メロで多少甘ったるく、今聴くと古臭さと多少のダサさを感じる...。だからこそ時代の移り変わりと共に徐々に消えていき、懐かしさを感じる今にリバイバルされる価値のあるものだと思っている。

2000年代前半にはこうしたバンドの映画やドラマの主題歌起用が増え、そのイメージのせいでどれを聴いても映画のエンディングに聴こえる。
特にここに該当して名前があがってくるのはThe CallingLifehouseだと思う。

The Callingの"Wherever You Will Go"は日本でもヒットしたので多少の知名度はあるが、Life Houseに関してはアメリカと日本の知名度は天と地ほどの差である。ここがこのポストグランジと呼ばれるジャンルが残らなかった理由の1つにもあるような気がしている。 

他にもRob Thomas率いるMatchbox Twentyは世界中で人気のあるバンドだが、日本での人気は圧倒的に低い。Rob Thomasはソロでもグラミー賞を3部門受賞したり、ソングライターとして殿堂入りしているのにも関わらずこの日本での知名度の低さは逆にすごい。

そしてこのポストグランジを取り入れたAvril Lavigneのヒットによりさらにメロディを重視したサウンドが広まり、2000年代後半には更なる歌モノブームがアメリカを中心に広がっていく。
個人的な記憶としてもこの音楽性の音楽をアメリカンロックと呼ぶのだとずっと思っていたので、ポストグランジと聞いてなんだか色々腑に落ちた。しかしそれだけ当時のアメリカの主流の音楽となっていたと感じる。

一方で2000年代に人気を獲得してきた音楽性としてニューメタルというジャンルがある。ニューメタルといえばLinkin ParkIncubusなどのヘヴィメタルやグランジを経由した新しいメタルの形を指す。ラップメタルもこのジャンルに含まれることが多い。

このジャンルの音楽もジワジワとメロディ重視の方向性に変わっていったように思う。特に感じたのは2003年のHoobastankの"The Reason"の大ヒット。
なぜこれほどに人々が歌モノを欲したのかは分からないが、アメリカとして非常に大きな出来事であった911アメリカ同時多発テロの影響が大きいのではないかと考えた。
そのムードから歌モノのバラード曲が多く聴かれるようになったのではないかと思う。(当時感動押し付け系の映画が多く公開されたイメージもありますね…)

2000年代前半では全てのジャンルがポップになっていくことを中心にして書いてきたが、後半では様々な音楽性が合流していき、新たな音楽性や新しい扉がバタバタと開いていきます...。そしてアメリカだけが世界の音楽の中心ではなくなっていきます。
その大きな役割を担っているのがiTunes、YouTube、MySpaceです!
そんな続きは近日公開します!


まとめ

本当に個人的な主観で書いてきたので全くまとまってない気もするし、知らない音楽性についてはほとんど触れないようにしました。特にポップパンクが大好きなキッズだったのでその辺りが長くなってしまったのは宗教上の理由と思っていただけたら幸いです。(正直もっと挙げたいバンドはたくさんあるので別で書きます)
ただリアルタイムで観てきたといえど、この時期は小学生だったので知らないこともかなりあります。間違っている点があればご指摘いただきたいです。
こうして振り返ってみると音楽は流行するとポップソングとして大衆向けの音楽として量産され、飽きられては別のところからテンポやジャンルの違う新しい音楽が現れの繰り返しで成り立っているのだと改めて感じさせられました。おもしろいな〜。
特に幼少期の思い入れの強い楽曲が多いので、2000年代前半は懐かしくて思い出補正が色濃く出てしまう。

最後に当時大好きだったけど今では恥ずかしくてあまり言えないJesse McCartneyの"Beautiful Soul"を貼っておきます。

後編頑張って書きます!!


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