見出し画像

夏の締め括り 8回目のサマソニ DAY1

過酷。過酷だった。あー。終わった。楽しかったということよりも、第一に無事に終わった安堵感が大きい今年のサマーソニック。これまでに過去7回サマソニに参加しているけど、こんなに過酷だった年は振り返っても記憶にない。あったとしても今年は特に両日ともソールドアウトしていたので、ここまでのパニックは記憶にない。1日に何度も「サマソニってこんなだったっけ…?」と思った。2018年なんて涼しくてシャツを羽織りたくなるほどで、夜のビーチは寒いとまで感じて夜は稲川淳二の怪談を聞きながらロンTに着替えた記憶がある。
「過酷」という2文字が似合う2023年のサマソニ。この二日間のことを日記として書き残しておきたい。来年には「こんなに去年は大変だったんだ…」と振り返ってもらえるように。

8月19日 東京 DAY1


朝6時起床、前夜開催のソニックマニアでの楽しそうな友達のSNSの投稿を見たりしながら寝落ち。初日は友達と物販を買うために早く並ぶ約束をしての朝6時起床。そんなに物販のために気合いを入れたことはないけど、去年目の前でマネスキンのTシャツのサイズが切れた悲しみを覚えているから、今年は絶対…と気合いを入れた。実家に住んでいた頃から、サマソニは片道1時間半から2時間で行けるフェスという認識なので、フジロックや他のフェスほど準備も要らず、友達とアウトレットに行くくらいの軽いノリでいつも幕張へと向かう。コンビニもそばにあるし、イオンモールもある。いざとなれば電車で帰ることも可能だから何も心配がいらない。都市型フェスティバルの良いところは気持ちのゆとりにある。

海浜幕張駅は朝から人混み

外に出たら暑い。まだ7時なのに暑い。すごく嫌な予感がした。日差しだけでなく、空気そのものが暑い。それは幕張に着いた9時でも変わらなかった、というよりも増していく一方だった。
物販開始時間の9時に並ぶと既に前倒しで8時半に販売を開始していたらしいことを知る。あまりの暑さだったから列を早く捌きたいという理由から販売時間を前倒しにしたい気持ちは分かる。でも公式が提示している時間通りに来たのにその時点で遅いというのも不思議なものだ。しかもSNS等でそのアナウンスもなかったので、なんだかその時点でモヤモヤとしてしまう。まだ始まってすらいないのに。そんな気持ちで2時間並んだ挙句、マーチは全て完売。欲しかったものが買えなかったことは自分が来るのが遅かったことがあるので仕方ない。でもその場で後日通販があることを知らされて、さすがにこのレギュレーションの曖昧さには「何年サマソニやってるんですか?」と思ってしまった。後日でも事前でも通販があるなら開催よりも前に知らせるべきだと思うし、そしたらこの日体調を崩さずに済んだ人もいたかもしれない。そんな気持ちを抱えたままヘロヘロでキュウリの一本漬けを摂取。塩分と水分が同時にやってくる、物販売り場の近くにキュウリの販売ブースがあるのはそのため?スーパー美味しい。

ありがたいキュウリ

マリンステージのアリーナがもうすでにNewJeans待ちのオーディエンスで埋め尽くされていると聞いたので、久しぶりにスタンドで観ることにした。スタンドに来るのは2008年にThe Prodigyを観たとき以来。The Prodigyの爆音の衝撃が凄すぎて、これをアリーナで観たら死んでしまうのではないか…と中学生ながらに思ったものだった。
席についてもガッツリ日に照らされていてどこも快適ではない。でもそんな中、オーディエンスを上手に丁寧に沸かせていたのがSUMMIT All Starsだった。日本のヒップホップレーベルであるSUMMITのアーティストが一堂に会するのがこのSUMMIT All Stars。今回はJXDNのキャンセルによる急遽の出演ではあったけど、NewJeansを待っている多くのオーディエンスがいることを理解して、いつもより丁寧に手を振る場所、声出す場所を丁寧に指示してフロアを盛り上げていた。最後にはお決まり10分近くのマイクリレー"Theme Song"で終演。PUNPEEの「一緒にこの後はNewJeans楽しみましょう」の一言に最後までマイクリレーの上手さを感じた。フロアの誰も傍観者にしないこの精神は最高にヒップホップだと思った。

NewJeansが始まる頃にはもう既にマリンステージは入場規制。どうやら前日から最前列を取るために並んでいた人も多くいたらしい。ちゃんとしたフルセットでのライブ自体は日本では初。リハの時点でバンドセットであることが分かると、気持ちのいい鍵盤の音と共にバンド演奏だけの"Ditto"が始まる。灼熱なのに涼しい風が吹いたように感じ、自然発生的にオーディエンスが歌い始めて穏やかな空気がスタジアム内に漂った。その頃にはもうスタンドもほぼ満席で、立ち見も出ていた。こんなにマリンステージに人がいるのはRadioheadがヘッドライナーの時でも見たことがない。
初めて観るNewJeansのライブ自体は、メンバー1人1人の日本語の挨拶があったり、しっかりと王道のアイドルグループの形態だった。前半パートのバンドセットが特に良かったし、何よりも楽曲の良さがライブでも際立っていた。この先ここからサマソニで世界最速のヘッドライナーになっていくヴィジョンが見えたような気がした。パフォーマンスとかは全然まだまだ「可愛い」だけの印象でしかなかったけど、これからどうなっていくのか楽しみ。

NewJeansは入場規制

その後、NewJeans終わりの退場が間に合わず、外にいたオーディエンスがアリーナに入れないまま始まってしまったPalewaves。久しぶりに見たヘザーはフロントマンとして堂々としていて、時折Avril Lavigneと重なって見えたりした。久しぶりに聴いた"Television Romance"はしっかりと年月を重ねたバンドの貫禄があった。
ビーチステージでペトロールズが始まるので向かっていた途中で、救護室に運ばれていく人を何人も見た。その先の救護室もチラッと見えたけど、入場規制がかかりそうなほど人で埋め尽くされていて、この日の過酷さを物語っていた。これからもNewJeansのようなスターを呼びたいのであればサマソニはこれまで通りの「自己判断」でのロックフェス形態のレギュレーションでは賄い切れないかもしれない。

この日のビーチステージは星野源がキュレーションしているということもあって注目度が高く、この時間からたくさんの人の入り。星野源も登場し、MCで「ずっと最前でキープするようなことは止めてください」とアナウンス。アーティストから直に伝えることはとても大事なことだと思う。その後で最初のアーティストとしてペトロールズを呼び込む。「あなたの心のガソリン、ペトロールズです!」のお決まり(?)の挨拶から始まると、灼熱のビーチに3人が生み出す熱いグルーヴがさらに熱気を高める。そんな中で演奏された"雨"はいつものメロウなグルーヴよりも熱いロックでファンキーな面が色濃く見えたアチアチのステージだった。

その後、続けてUMIを観るつもりだったが、あまりの暑さと止まらない汗にやられて完全にダウン。もう立てないかもと思うくらいで、フラフラのまま水を求めて歩くもドリンクが売っている店がどこなのか全然分からない。ようやく見つけたもののビーチの方は店の数も少なく、どこも行列。みんな水を求めている。また、ソフトドリンクとアルコール類で列が分かれていないので、今すぐ水が欲しい人も同じ列に並ばなくてはいけない始末。比べるわけではないが、ここに関してフジロックはソフトドリンクだけの列を別で作っていたので絶対に参考にしてほしい。列に並びながら2回ほど吐きそうになった。

ようやく水を手にして遮光してるのかしてないのかよく分からないテントの影に入ると、UMIちゃんの優しい人柄が作る空気が少しづつビーチの空気を溶かしていって、少しずつ落ち着いていった。GREENROOM同様、宇多田ヒカルの"First Love"のカバーを披露するなど、相変わらずUMIちゃんの健気で愛の溢れたスタンスが心から好きだなと思った。GREENROOMで会った時にサマソニ絶対行くから!と約束したのでなんとか約束が果たせてよかった!

砂浜に設置されたビーチステージ
ビーチステージまでの道。今年はサウナが設置


その後もビーチとマリンに居続けると意気込んで前からタイムテーブルを組んでいたけど、もう完全に心が折れて予定外にメッセに移動して、ソニックステージのHolly Humberstone。名前と曲は数曲知っている程度だったので、どんなライブをするのかと思っていたらハッキリとオルタナバンドサウンドを全面に出していて前から聴いていた印象と違って、ライブ映えするアーティストだ!と思った。

サマソニ来たらとりあえずマグロ

その後はお腹が空いたのでサマソニ名物のまぐろ丼を食べた。サマソニは空調があるので、まぐろを生のまま提供できるというサマソニならではの利点があるのだ。半冷凍されたマグロのようなアイスのような刺身の冷たさが今日は本当にちょうどいい。
ここまで全く予定していなかった動きなので外のステージに後ろ髪を引かれながらマウンテンステージの、HONNEを観ることに。もうめっちゃよかった!最高だった。観る予定はなかったけどHONNEはずっと大好きだし、なんでそもそも観るつもりなかったんだろうと思うくらい良かった。これまでリリースされた各アルバムの人気曲を散りばめたセットリストで、Tom Mischのギターリフが印象的な"Me & You ◑"でフロアを盛り上げると、唐突にJamesの結婚の報告があり、どうやらハネムーンでまた日本に戻ってくるとのことだった。どうしてHONNEはこんなにも優しい空間を作るのが上手いのだろうと思った。結婚の報告の後にやった"no song without you"には思わずグッときてしまった。コロナ禍でリリースされたアルバム『no song without you』には何度も救われたし、ずっと支えになっていた。そんなことも思い出しもした。
そしてHONNEのライブは音楽の優しさや2人の空気感も相まって全体的に空気が温かくて穏やかだった。"Warm on a Cold Night"のコールアンドレスポンスの時にモニターに映るオーディエンスの表情がみんな笑顔で、それぞれが好きなように踊ったり手拍子したり歌ったりしていて、互いの自由を尊重しあっている一番好きなフロアだなと思った。

そしてようやく17時過ぎに少し暑さがおさまったので、マリンステージに向かう。ビーチステージの星野源へ向かう人たちの大量の人の流れを横目にマリンスタジアムへと入っていった。数日間迷い続けてギリギリまで迷ったがBlurを観ることに決めた。

思えば昔からサマソニは毎回マリンステージで締めくくってる気がする。マリン以外でサマソニを締めた年は2019年にFall Out Boyをマウンテンステージで観た時が初めてだった。そんなFall Out Boyが今年はマリンのヘッドライナー前の時間で演奏していることにエモい気持ちを抱きながらマリンステージに入場。僕の中学時代を支えた相変わらずのPatrickの歌声に上りながら、マリンスタジアムを見渡す。暗くなったこの時間帯のマリンステージに来ると毎回必ず初めてサマソニに来た2008年のThe Verveのステージを思い出す。巨大な野球場に聳え立つステージ、そこに集う大量のオーディエンスが生み出す熱気。10代の自分はそれだけでクラクラした。今考えても中学生と高校生の兄弟が2人だけでマリンステージのアリーナでThe Verveを見ている光景、なかなかレアだなと自分でも思う。

夜のマリンステージは最高潮

10年ぶりの来日、サマソニとしては20年ぶりの出演となるBlur。多くの人でアリーナは埋まっていた。サマソニのマリンステージは昔から転換時に暑い時には前方から放水をする文化がある。消防車のでっかいホースのようなものを上空に撒くのだけど、日が照ってる日中なら放水はありがたい。空気は涼しくなるし、服が濡れてもすぐに乾くから。それなのに夜の20時、少しスタジアム内の空気も涼しくなってきたところで突然謎の放水を始めたのだ。上から降り注ぐ大量の水、あたり一面から上がる悲鳴、それでも止まらない放水。地獄だった。地獄すぎて笑ってしまった。放水が終わった時にはフジロックですか?というレベルで上から下までびしょ濡れになった。湿度もあるからもう絶対に乾かない。もう汗なのか水なのか判別がつかないが、どちらにせよびしょ濡れなことには変わりない。誰でも簡単!びしょ濡れおじさんの出来上がりだ。

少し時間を押していた今日のマリンステージ。定刻より少し早くBlurのステージが始まった。すっかりおじさんになった4人が当時のような雰囲気でフラッとステージにやってくる。"St. Charles Square"から始まり、新旧織り交ぜたセットリストで展開していく。"Popscene""Beetlebum"などの名曲を連打し、その度にやっぱり変なバンドだなと思う。それは小中学生の頃に初めて聴いた時の印象からあまり変わっていない。正直キャッチーではないし、みんなで歌いたくなるようなアンセム曲も少ない。スタジアムにインディーロックバンドが立っている異様な感じだ。それなのにどうしてこんなに愛されているのだろうとなぜか唐突に不思議に感じてしまった。その疑問の答えはすぐに回収する事になるのだけど。
Damonは"Girls and Boys"ではNewJeansすらしなかった衣装チェンジをして、そこでちゃんとMVに登場していたDamonの象徴でもあるトラックジャケットを着てくる辺りがさすがとしか言いようがない。Damonは僕にとって永遠のファッションアイコンなのでこの演出は飛び上がるほどに嬉しかった。でも明らかに暑くてジャケットなど着ている場合じゃないのに、ジャケットを着て動き回って歌うDamonの姿にはプロ意識を感じたし、たびたびステージを降りてオーディエンスの中で歌ったりするその姿には「アイドル」を感じずにはいられなかった。ここ最近のBlurのステージは「90年代のブリットポップ黄金期を演じる」というテーマでもあるのだろうかと言うほど、自らが自覚して"Blurをしている"事にグッときてしまった。VJにもVHSテープの画質のような演出があったり、僕ら世代からしたらBlurは自分が生まれた時代の音楽なので、そんな90年代へとへ連れて行ってくれるタイムマシンに乗せてもらったような気分だった。そんな愛らしさとアイドル性を兼ね備えた4人が鳴らすスタジアム級のインディーロックは、親しみやすくて誰一人置いていかないロックバンドだと気が付いてしまった。そこに気が付いてからの最後の"Tender""The Narcissist""The Universal"の新旧アンセム曲の連続には涙が溢れた。終わった後の花火はなぜか上がらなかったけどめっちゃ良いライブだった。



サマソニ初日はここでおしまい。2日目は初日に比べると内容は薄くなると思うけど、多分書きます。書く、と思う。書く?

サマソニは僕にとって、クソガキだった中学生の頃にライブの楽しさとかを教えてくれた場所なので本当にいつもありがとうという気持ちしかない。でもこうしたらどう?みたいな提案は現場にいて毎年浮かぶので、そういう声は積極的にアンケートに書いている。SNSでなくて、みんなもそういう場所に書いておくれ。時期を後ろにずらしてほしいっていうのはもっともだけど、きっと行政の兼ね合いとかプロ野球の兼ね合いとか色々難しいのだろうなあとなんとなく想像はつく。来年以降どうするのか今すごい会議が行われているとは思うけど、みんながもっと快適に過ごせるようになったら良いよね。





この記事が参加している募集

夏の思い出

フェス記録

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?