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なぜ?補助金申請打ち切り発表

2023年12月20日。
日本でも報じられたためすでにご存じの方も多いだろうが、ドイツ政府がBEVの購入補助金の申請受付を17日(日)いっぱいで打ち切った。従来の計画では来年末の終了が予定されていたことから、1年以上、前倒ししたことになる。受付終了予告を伝えるニュースを前日のテレビで知り、驚いた。

予定していたGX・DX基金の財源の一部に違憲判決が下され、巨額の穴が開いたことから、政府は支出を大幅に削減しなければならない。自業自得とはいえ、その事情は分かる。しかし、補助金打ち切りの発表をその前日に行なうというのは一体、どういう腹積もりなのだろうか。正直なところ、何が何でも支出を減らしたいという焦り以外、感じることができない。

12月はBEVの駆け込み需要が発生していた。補助金の額が来年1月から3,000ユーロに引き下げられることになっていたためだ。年内に新車登録を済ませ、減額前の補助金(最大4,500ユーロ。メーカーの助成を加えると6,750ユーロ)を受給しようと消費者は考えたのである。新車登録手続きが完了しないと補助金を申請できないことから、多くの消費者は年内の登録手続き完了を前提にBEVの購入契約を締結した次第だ。

まさにそのタイミングで所轄官庁の連邦経済・気候省は補助金打ち切りのそっけないプレスリリースを発表した。この結果、当てにしていた補助金を受給できない人(購入契約は結んだものの新車登録手続きが未完了の人)が多数、発生している。購入価格が上がることから付加価値税負担も増える。自動車販売・修理業界団体ZDKによると、台数ベースで6万台が該当するもようだ。

はしご外し以外の何物でもないだろう。ドイツに長年住んでいるが、これほど拙劣な政府の措置は記憶がない。補助金受付の終了日を先に延ばし、購入契約をすでに締結した人が受給できるようにすべきだとの批判は与党内からも出ている。

犠牲になった市民が政府に強い不信感を持ったことは想像にかたくない。地を這う与党の支持率は一段と下がるだろう。それも自らがまいた種だと思う。ただ、政府の迷走が政治全般への不信感に発展し、極右の躍進につながったり、民主主義の基盤が掘り崩される事態にはなってほしくない。

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