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デザイナーを囲いこまず、野放しにするメリット

前職で勤めていた都内の制作会社。

ここでの経験がなかったら今のわたしはいない、と言い切れるほど、とてもお世話になった会社だ。

そこでの業務内容のおかげで、わたしは独立して仕事ができている。

本社には経理スタッフがいる。しかし代表を除いて、チームリーダー全員がデザイナー兼営業だった。

入社したスタッフは、まず各チームリーダーの下に配属される。
リーダーは、下記のような仕事を一貫して担当している。

・仕事の受注(営業)
・見積もり/価格交渉
・企画
・ディレクション
・デザイン
・入稿
・請求
・売上ノルマ管理
・スタッフの教育

新人はその中で「デザイン」の部分から覚え、いつかはリーダーと同じように、全ての工程に精通し、独り立ちをしていく、という道を辿る。

デザインスキルはもちろんだが、独立してから一番役に立っているのは「営業」「価格交渉」「価格相場の知識」かもしれない。

わたしが独立してから知ったのは、「価格交渉が苦手」「価格相場を知らない」というデザイナーが、とても多いということ。

わたしは前職在職中に、クライアントと価格交渉をしたり、クライアントの社内での決裁について知るという経験をたっぷり積むことができた。

つまりこの会社でチームリーダーになれば、おのずと「独立する」というビジョンを描くことができる。「デザイナー独立支援プログラム」を一貫して行なっているのだ。

退社するときには、もちろんこれまでの恩義も感じていたけれど、ここが自分の居場所じゃなくなったと思っただけだった。
他のメンバーも、独立できる力を身につけたから独立したし、転機について考えるタイミングだったんだと思う。

このプログラムを作り上げたのだから、「独立をサポートする組織」として退社後も繋がり、お互いに応援しあえる仕組みを作ればいいのに、と思う。
「卒業」という気持ちで退社を送り出せば、「いつか独立したい」というデザイナーのための会社として、大きな可能性があるはず。

ひとつの会社に終身雇用されるメリットはどんどん薄くなっている。そしてわたしのいる印刷業界は、媒体の減少や広告費削減により、大きく揺らいでいる。

手を離した独立組が、印刷業以外、例えばアパレルなどのデザイン職につくことも、きっとあると思うのだ。そのときに、別の事業から仕事が自然発生するようなことになれば、ひとつの業種に固執することなく、可能性を開いていけるんじゃないだろうか。

これから、ゆるく、薄い膜のようなネットワークで、関係を切らずに続く組織が作れないか、研究したい。

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