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雨好き

梅雨は苦手だが
雨は好き
まぁ我儘なものだ

晴天よりも曇天
曇天よりも雨天

晴天は眩し過ぎて
曇天は気が塞いで
雨天は出掛けよう

ひとが少なくてどこまでも歩いて行ける気がする


傘と長靴は特別で
水溜りの不思議や
植物の影にいる虫

それらは
まだ
父が壊れる前で
母とのんびりと
姉の傘を持って
迎えに行った道

その道は色んなことがあった

姉は無類の虫好きで
桜並木の下を通ると
次から次へと
母にゲジゲジを渡していた
母は笑いながら
受け取って
次から次へと
エプロンのポケットは
ゲジゲジで溢れていた

姉に見付からない様に
そっと葉っぱに戻していた


帰ると
おやつの時間があって
母と姉と三人で
エプロンをして
色んなおやつを作った

おやつを食べ終わると
丸めた新聞の広告を持って
母のストールを肩からかけ

大好きな「雨の慕情」を
振り付けありで歌う
特別な歌だった
歌詞を間違えても飛ばしても
拍手だった


大事な思い出


八代亜紀さん
あの歌をありがとう
黙祷


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