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大量消費社会からポリファーマシーについて考える①

今回、ポリファーマシーに関して少し違う観点からみていけると面白いかなと、他分野と横断させた形でのエコシステムのようなもについて考えていけたらなと思っています。

ポリファーマシーについて

まずはポリファーマシーについて、軽く確認していこうと思います。
まず、ポリファーマシーというのは実際どういう状態でしょうか。
今のところ、一貫した定義はまだないという印象です。ポリファーマシーの定義について調べているシステマティックレビューでは、一般的に5-6剤以上服用していることをポリファーマシーと指していることが多いとしながらも、服用日数を加味したり、適切か不適切かでポリファーマシーを分類しているものもあり、一貫した定義は難しいとしています。*1 さらに10剤以上の場合は、ハイパーポリファーマシーという場合もあります。*2 不適切なポリファーマシーとしては、適応なしでの処方、漫然投与、PIMs(Potentially inappropriate medications)などとの関連性も挙げられています。*3 このような背景からポリファーマシーの定義は、服用錠数などだけでは併存疾患まで考慮できないことから、「ポリファーマシー」と単純に括るのではなく、「適切なポリファーマシー(appropriate polypharmacy)」への用語の移行も提案されています。*1
ポリファーマシーの問題としては、フレイル、転倒、認知機能への影響などさまざまリスクが指摘されており*4、薬剤数が増えるごとにそのリスクは増加していくことが懸念されています。*5 また薬物治療によるリスクベネフィットを見ても、利益率は、高齢、併存疾患の程度、認知症、フレイル、余命の減少などの進行により利益率は下がっていくとの報告もあります。*6 コスト増加との関連性も検討されており、ベンゾジアゼピン系の薬やNSAIDsなどは、コストの大幅な増加とQALYの低下の関連が指摘されています。*7
ただ、一方で、どのようなポリファーマシーへの介入が最適なのかには議論が続いています。ポリファーマシーを薬剤数だけ、PIMsだけで見るなら、減薬できている試験もありますが、*8 臨床的なアウトカムを改善できているかどうかに関しては限定的な場合も多いようです。*3,9,10
この辺りは、ざっくり下記で考えてみていますので、そちらを参考にしていただければと思います。

ポリファーマシーに関しては、是正することがいいか悪いかは、まだまだ議論の余地があるのかなと思います。それは冒頭でも挙げたように、ポリファーマシーの定義自体が一貫していない現状もあり、また、WHOの健康の定義のように健康観の多様化なども関連しているかと思います。さまざまな要因から生じるポリファーマシーに対して、派生する問題も単一ではないため、どのような介入デザインがいいかをパターン化するのが難しいのではないかという印象です。
そのため、今回はポリファーマシー介入の是非というよりは、あまり考えてこなかったような、結びつけてこなかったような文脈から、ポリファーマシーのような課題に対して何か示唆になるようなものがあったらいいなと少し考えていけたらと思っています。
個人的に、大量消費社会の解消に向けた動きの一つであるサーキュラーエコノミーというのは、面白いのではないかと思っています。ポリファーマシーと少し似た部分もあり学びになる部分もあるかなと、今回のテーマにしてみようと思いました。ポリファーマシーのエコシステムを考える上で気づきとなる部分があればなと思います。
そのため、次回からは、大量消費社会やサーキュラーエコノミーなどについて学んでみようと思っています。

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【参考資料】
*1:Nashwa Masnoon,et.al.2017;PMID: 29017448
*2:Peter J Kennel,et al.2019;PMID: 30935411
*3:Eveline van Poelgeest,et al.2023;PMID: 37812379
*4:Farhad Pazan,et al.2021;PMID: 33694123
*5:Danijela Gnjidic, et al.2012;PMID: 22742913
*6:Doron Garfinkel,et al.2015;PMID: 26668713
*7:Frank Moriarty,et al.2019;PMID: 30705233
*8:Jesús Martínez-Sotelo,et al.2021;PMID: 34488034
*9:Justin Lee,et al.2021;PMID: 33568364
*10:Katharina Tabea Jungo,et al.2023;PMID: 37225248


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