ソリューションが多すぎる

毎日毎日、世の中に誕生する新商品。とりわけモノにおいて大ヒットしているのは、ニーズを満たす、いわば”ソリューション型”の商品が多いように感じます。

それらは「こういうモノが欲しかった!」と物欲を刺激し、「今までありそうでなかった」と賞賛され、爆発的に広まり売れてゆきます。


ニーズを顕在化して商品化

ソリューション型商品に共通しているのは、既存のアイテムの品質を高めただけのモノではないということ。つまり、単純にハイスペックな商品ではありません。

イヤフォンを例にとると、壊れにくかったり、音漏れしにくかったりするのはソリューションではありません。コードレスになったり、ヘアアクセサリーになったりするイヤフォンがソリューション型のモノだといえるでしょう。

なにが言いたいかというと、あくまでモノを使用するユーザーの行動に着目し、ニーズを顕在化して商品化したのがソリューション型の商品です。

そのニーズが一般によく言われていることではなく、日常において気づきにくければ気づきにくいほど、それに目をつけいち早く商品化する先行者優位は大きく、世の中に与えるインパクトも大きいものになります。


耳障りな音は聞かない”べき”なのか

ただしこういった商品は、あくまでそのモノ自身の存在を前提として認めています。ソリューション型の商品も、そしてそれを見つけよう、生み出そうとするマーケティングや企画の人も、「ニーズを満たそう」というにおいが染み付いています。

たしかに顕在/潜在を問わずニーズはたしかに存在し、それを解消して消費者の心を満たすのは素敵です。ぼくたちEVERY DENIMもそういった商品を提供してみんなに喜んでもらいたいのは間違いありません。

しかし、なにかそれだけじゃあいけないといった気持ちが、ぼくの中にふつふつ沸き立っているのも事実なのです。「ニーズを満たす」というおこないは、あくまで「これはこうあるべきだ」という規範の中に留まった行為であり、むしろその規範を見えにくく、隠すものだと考えるからです。

耳障りだと思われる音をより大きな音で隠したり耳を塞ぐような、そんなことのような気がしてならないのです。その音は、実はとっても素敵な音色かもしれないのに。


「こういうのも、アリなんじゃない?」

そもそもの「こうあるべき」という規範を揺さぶるモノを提案できるのが、ファッションの醍醐味なんじゃないかなぁと思います。とくに繊維を身にまとうアパレル産業の分野では、ソリューションというのは日進月歩の世界であるという理由もあります。

そういう風にして生み出された商品は、けっしてすぐには多くの人に受け入れられないでしょう。だれにとってもわかりやすい”ソリューション”が含まれているわけではないからです。

ただ、その商品が生み出されたことによって、「こういうのも、アリなんじゃない?」といった見方が生まれ、いろんな方向性や可能性が生まれる。徐々に多くの人に受け入れられ、いつしかムーブメントを巻き起こしカルチャーを創る。

絵空事に過ぎないかもしれませんが、そんなモノをいつか生み出したいなあと考えているのです。

山脇、毎日