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BONをつくりながら考えたこと

僕らにとって5年ぶりの新しい施設になる「DENIM HOUSE BON」。築90年以上の古民家を改装してつくった、1日1組のための“泊まれるデニム屋”。構想から1年半。ついに完成するこの宿を前に、BONにまつわるいくつかの思い出を、しばらく時間をかけて振り返ろうと思う。

まずなんといっても思い出すのは、"DENIM HOUSE BON"という名前を付けたときのこと。劇的なエピソードがあったわけではない、兄弟で考え続け、考え続け、淡々と時間が過ぎ、絞り出したように生まれたネーミングだった。

名前を考え始める際、まず初めに検討すべき事項は、同じ倉敷市児島で2019年から営む「DENM HOSTEL float」との関連性をどうするかということだった。floatになぞらえ、英単語を3つ続けるのか、頭にはやっぱりDENIMを持ってくるのか。

はたまたfloatにはとらわれず、スタイルも違うので(floatは5部屋の宿泊施設)自由に考えるべきなのか。そこを決めるのにけっこうな時間がかかった気がする。

結果的には今後のことも見据え「DENIM 〇〇 △△」という形を踏襲すると決めた。今回の宿は元・民家。宿泊者が"一つ屋根の下に集まる"という強いイメージがあったので、〇〇の部分は"HOUSE"にすることにした。

そして"BON"。これは日本の風習、"盆"からきている。死者を弔う本来の意味の盆ではないが、人を想うために人が集うという盆の特別さをモチーフとして借りた。漢字を分解すると皿を分ける、となる。ぜひBONでも集ったみんなで食卓を囲み皿を分け合ってほしい。

名前が決まったら、次はロゴの番だ。デザインは過去に「fuu sauna」「pile」を手掛けてくださった「hoo」の長野美鳳さんにお願いした。

BONを着想した上で大切にしたいたキーワードは「家・集う・囲む・分かち合う・盆・庭」など、こういった言葉や、BONに込めた想いを伝え、ロゴとしていくつかの案を出していただいた。

候補の中から最終的に決定したのが、こちら。

どの案も素敵だったのでいずれ紹介したいが、このロゴは他とは違う特別な印象を持っていた。B・O・Nのアルファベットを基調に、じんわりと、人が集う温かいニュアンスがある。具体と抽象のバランスも含め、DENIM HOUSE BONのロゴとしてピッタリだと思った。

無事名前とロゴが決まり、施設の顔となる暖簾を制作した。再生デニムの生地に大きくプリントしたBONの暖簾が入り口に初めて掛かったとき、建物に確かな息吹が吹き込まれたように感じたのを覚えている。


2023年の10月から本格的な工事が始まってからは、毎日大工さんや設計士さん、僕らが出入りしていた。ただ、そこはあくまで工事現場であり、建物だった。暖簾が掛かり、一気に宿としての様相を呈したBONには立派な風格があった。

これからたくさんの人を迎え、にぎやかな時間に寄り添い、季節とともに表情を移ろわせるこの施設を、愛を持って大切に育てていきたい。

続く。