「面白いから売れるのではない、売れているのが面白いコンテンツだ」
最近読んだ『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』という本がとても面白く、学びが多かったから備忘録的にまとめてみる。
本のタイトルにある「おいしい」は「面白い」に、「料理」は「コンテンツ」に言い換えられそうで、あらゆるコンテンツをつくる人にとって参考になりそうな本だった。
本の結論としては「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」という言葉に集約されているのだけど、個人的にとくに響いた3つのポイントを簡潔にまとめてみたい。
■「おいしい」かどうかは「客数増」がすべて
サイゼリヤでは、創業期からお客様が喜んでくれているかどうかを「客数」という数値に置き換えて考えてきたという。
お客様が店を気に入れば再来店してくれるはずだし、その数が増えるほどいいという、極めてシンプルな論理だ。
本の中では、お客様がまた店に来てくれるかどうかは、料理の品質以外にもそもそも店の用途が合っているかどうかなどでも決まるといったより詳細なことが語られている。
ただ何にも増して最重視している指標が「客数増」。客数が増えていたらその店の料理はおいしいし、逆に客数が減っていたらその店の料理はおいしくない。
当たり前の話でもあるけど、追うべき指標を極限的にシンプルにすることの本質に改めて気付かされるような話だった。
ちなみに、料理についてより細かな検証するときは、料理を「ルック(見た目)」「アロマ(食前の香り)」「テイスト(味)」「フレーバー(食後の香り)」「プライス(価格)」の5つの要素に分けるという。
これはそのままコンテンツにも当てはまりそうで、たとえば記事なら「タイトル+サムネイル画像(見た目)」「書き出し(食前の香り)」「内容(味)」「読後感(食後の香り)」「滞在時間?(価格)」など、要素ごとに検証するヒントにもなりそうだった。
■「なぜ自分はそう思うのか?」まで考える
コンテンツの作り手は、世の中の現象やトレンドへのアンテナをできるだけ高く張り、「なぜ、そうしたことが起きているのか?」を常に考えていたりする。社会とリンクさせて企画を考えるのが仕事でもある。
ただこの本には、「なぜ、そうしたことが起きているのか?」という問いへの答えを見出すだけでは「不十分だ」と書かれている。
一番大切なのは、「なぜそうしたことが起きているのか?」と物事を考えるだけでなく、「なぜ自分はそう思うのか?」ということまで、考え抜けるようになる習慣を身に付けることだ。
「なぜ、そうしたことが起きているのか?」の答えに対して「なぜ自分はそう思うのか?」を自問すること。それによって見えなかったことが見えてくるという。
言われてみると、たしかに「なぜ自分はそう思うのか?」を自問することはめちゃくちゃ大事なことだ。そもそも自分は「何を知っていて」「何を知らないか」を自覚することにもつながる。
客観的な事実に基づきながら、仮説を立てて実行して検証することは、ある程度の人ならできる。だけどその前提として、自分の無知を知らないと、事実に基づいた解釈をする際のバイアスに気づけない可能性がある。
「なぜ自分はそう思うのか?」は、あらゆることに応用できそうな問いでもあり、それなしに企画の良し悪しはジャッジできないなと思わされる指摘だった。
■事業に必要なのは「改善」だけでなく「改革」
商品やサービスの作り手は、より良くするための「改善」に日夜努めている。一方で、「この改善の積み重ねに未来はあるのか?」を問う機会はあまりない。
日々の「改善」も大切だが、それだけではいつかダメになることも、ここで強調しておきたい。時代の変化によって根本的な改革が必要になるときがやって来る。
これも、言われてみると当たり前のように思える。
例にあげられているのがテレビの技術革新で、「改善」の積み重ねだけならテレビの画質がどんどん美しくなっていくだけだったのが、3Dテレビは「改革」的な発想だったという(本の刊行が2015年とかなので一部情報が古い)。
普通に仕事をしているだけだと「改善」にとらわれてしまうことが多い。それはもちろん大切なことだけど、同時に視座を一段上げて、「改革」に取り組むことも必要だ。
とくにヒットではなくホームランを生むためには、既存の商品・サービスの「改善」よりも、新たな商品・サービスによる「改革」は欠かせない。そんなことにも気づかされた。
サイゼリヤにはしばらく行ってなかったけど、「近々行ってみよう」と思わされ、実際に行ってみてしまうような本だった。
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