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VOL.13寄稿者&作品紹介15 朝井麻由美さん

ウィッチンケア第12号での寄稿者&寄稿作紹介では、朝井麻由美さん原作のテレビ東京【水ドラ25】「ソロ活女子のススメ」のシーズン2が始まったこと、までをお伝えしましたが...あれから約1年。すごいっ! 人気シリーズとして定番化し、2023年も4月6日(5日深夜)から「水ドラ25」枠でシーズン3を放送中。また朝井さんの原作本も文庫化され、好評発売中です。その朝井さん、先月はABEMA Primeの〈【スープストック】子ども連れは迷惑? 無料の離乳食なぜ物議?子育てとソロ活&独り身どう共存?〉というトピックにゲスト出演していまして、その日のメイン・パーソナリティーはひろゆき。正直、私(発行人)は、視聴前にちょっとハラハラしていたんです、あのひろゆきが妙な角度からの屁理屈で暴れ出したらどうしよう、とか。杞憂でございました。自身のスタンスから「言うべきこと」をきちんと表明する朝井さんには余裕すら感じられ、見終わって、あれ、オレはなにを心配していたんだと(恥)。

朝井さんの今号(Witchenkare VOL.13)への寄稿作は「削って削って削って」。ご自身がかつてゴールデンタイムのテレビ番組(バラエティー)にひな壇出演したさいの雑感を綴ったものですが、しかし「雑感」とはいえ、この一篇は昨今のバラエティー番組が抱えている根本的な誤謬を鋭く突いているようで、ちょっと寒気さえ覚えました。具体的な番組名は秘されていますが、放映時間正味40分程度のプログラム。収録にかかった時間はその3倍弱で、台本もあるけれど、VTR収録中はフリートークと笑い声と拍手が鳴り止まなかった感じ(きっと、お笑い芸人が多数参加していたのかな)。《テレビでよく見るタレントの人たちは、毎日これをやっているというの? 嘘でしょ。こんなことばかりしていたら、すぐに骨と皮だけになっちゃうよ》。一度きりで懲りた、という朝井さんのこの感想が、とてもまともなものに思えました。

「最近のテレビはつまらない」みたいな言説は、たぶん1970年代からあったと思います。それでもここ数年のテレビが断末魔の様相なのは、その影響力の低下(テレビを見ない人の増加)が原因かな、と。もう「それでもいま見てくれている人(とスポンサー)」にしか顔が向いていないテレビ番組に出演して、心身を賭して笑いを取ろうとするなんて、なんだか不毛な重労働にしか思えません。といって、台頭しつつあるネット動画がいまのテレビ番組よりハイクオリティーなのかというと、それもよくわからない...でっ、そんなご高説を垂れているオマエ(私!)は何様なのか? あっ、ブーメラン∞。。。とにかく、朝井さんが《今、これを、真空パックしなくちゃ……物書きとして、文字にしておかなければ……と》の思いで記録したものを含む本作、ぜひみなさまにご一読いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

大勢いるひな壇で、たまに来る自分のターン以外は、頷く、驚く、表情を変える、笑う、手を叩く、をひたすら繰り返す。大部分を占めるのは笑うことなので、最後のほうは顔が引き攣りそうになっていた。一般人に毛が生えたくらいの自分がテンポよく会話に入れるわけもなく、台本で決められた発言をこなしたら、あとは二時間笑うだけのお仕事。ときどき色気を出して会話に混ざってみようとしても、私のモソモソした声はよく通るタレントの声にかき消される。せめて邪魔しないように。せめて盛り上がるように。「そこにいてもいい存在」でありたくて。必死になって「笑った」。笑い顔が多いほうが、編集する人がワイプで使いやすいことくらいは知っている。途中から何が面白くて何が面白くないのか、もうよくわからなくなっていたけど、ただただ、笑った。

〜ウィッチンケア第13号掲載「削って削って削って」より引用〜

朝井麻由美さん小誌バックナンバー掲載作品:〈無駄。〉(第7号)/〈消えない儀式の向こう側〉(第8号)/〈恋人、というわけでもない〉(第9号)/〈みんなミッキーマウス〉(第10号)/〈ユカちゃんの独白〉(第11号)/〈ある春の日記〉(第12号)

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