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第一回 【K林製薬記念】 福祉用具ネーミングセンス杯


先日たまたま福祉用具デモに同席した際、「その名前、分かりやすいわね」という利用者さんの声から思い付きましたるこの企画。

ダジャレはおっさんの心を震わせるだけではなかった、ちゃんと役に立つのだという学びに至り、手元の福祉用具カタログからイカしたネーミングセンスの用具を勝手に表彰してしまうのである。

評価基準はこちら。

1、一度聞いたら忘れなそう
2、名は体を表しているっぽい
3、オリジナリティが感じられなくもない

現在コウジカビの無限の可能性のために苦境に陥っている、あの会社のセンスをリスペクトしつつ、独断と偏見でいってみよう。



たちあっぷ【矢崎化工(株)】


この色はだんだん見納め?

住宅改修における壁付き手すりの最大のライバルであり、またパートナーでもあるこの製品。
椅子やベッドからの立ち上がりに絶大な力を発揮しているが、それに相応しいネーミングである。

ちなみに慣れ親しんだ色のこのシリーズ、実は生産終了しており、「たちあっぷ2」としてもっとシックな色合いになるとのこと。

タスカル【シンテックス(株)】

こちら畳んだ時の幅、約24cm

介護給付にならないにも関わらず、現場で割によく見かける昇降機の古豪、タスカルをピックアップ。
自力で階段昇降が難しくなった場合に活躍する、固定式の階段昇降機の中でも、直線型はここのものがスリムで使いやすい印象である。
ホント助かるわ、と思われている方も全国に多数だと思う。
なので日本の住宅設計者の皆様、将来これを入れられる余地がある階段のプランニングをぜひお願いします。特に下段側に余裕をば。

アルコー【(株)星光医療器製作所】


他にもいろいろあります

どちらかというと病院でよくお目にかかる、無骨系の歩行器やリハビリ用具一族。
歩こう!の系統の歩行器やら並行棒やらはみんなこの製品グループに入れられており、かたちより名前から入る方向性に好感が持てる。

苦しいリハビリの友が、そんなネーミングであることを知れば、もうひと頑張りしようかという気持ちも湧いたりするのではないだろうか。


低床こまわりくん【(株)カワムラサイクル】


移乗もしやすい親切設計

日本家屋の狭い廊下も何のその、という小回りが特徴の6輪車いすもいろいろあるが、あえて八丈島のキョンを彷彿させるという、ギリギリを攻める姿勢に敬意を表してのランクイン。
まんまのネーミングだが、先行者のキャラの濃さは幸いにして受け継がれておらず、有能な福祉用具である。

i-POT【象印マホービン(株)】

見た目は普通

某りんご社とアイホン(株)さんがかつて商標権で揉めたことがあった(今は手打ちとなっている)。果たしてこの製品はどうなんだろうと思っていたら、2022年にiPodは生産終了。完全勝利である。この結果には、かの孫子も喜ばれたであろう。

そして、この使用履歴を携帯通信にて送信してくれる見守りポットは、昨年通信機能が強化された新型が発売された。あの音楽プレイヤーと比べると諸行無常を感じる話であるが、人間がお茶を飲むという営みに注目した、この製品の地味な先進性を褒めるべきだろう。
なお残念なことに介護保険給付では使えないので、念のため。

つるべー【モリトー(株)】


赤いハンガーが目印です

日本の介護用リフトの伝説がランクイン。社長さんの書かれた社史は涙なしには読めない。床走行型が主流だった吊り上げリフトを、狭い家に適合した固定式にするという発想がなければ、日本のリフトの在宅化はずいぶん遅れていたはずだ。人力で持ち上げない介護を在宅に導入できるようになった立役者である。また吊り具などの開発にも力を入れていらっしゃいます。

移乗困難ケースの切り札たる、リフト+脚分離スリングシートの使用法教育に介護ロボの開発予算を充てていたら、日本の持ち上げ介護はほぼ絶滅に追いやることができていたのではないだろうか。口惜しいことである。


スカットクリーン【パラマウントベッド(株)】

こちらは女性用レシーバー付き

この企画において、このロングセラーの自動排泄処理装置を忘れてはいけない。スカっと綺麗、だからスカットクリーン!排泄の歓びを鮮やかに切り取り、そして排泄トラブルの辛さからの解放を的確に表したネーミングではなかろうか。

ベッドサイドに置いて、寝ながらに横向き排尿可能なこの製品、夜間は薬剤の血中濃度が下がるなどで動きにくくなる方が、オムツを使わずに暮らすための切り札である。
20年くらい前の旧型は手元のレシーバー側にスイッチがなく、液体検知でモーター作動するというドキドキの仕様だったが、今は手元スイッチもついて心理的にも安心。
本体はレンタル、レシーバー等は特定福祉用具で購入品になります。


番外 バディー【(株)モルテン】


天井と床とを突っ張って固定するよ

サッカーボールなどでお馴染みのモルテンさんの製品。相棒という意味です。突っ張り型の貸与手すりは、もう一社さんとの熾烈なマッチレースが繰り広げられているのだが、福祉用具屋さんはこの2種の製品の違いを理解して、よく使い分けていて頭が下がります。

ところで番外にした理由はこれ。手元に約20年前のパンフレットがあったのだ。

ん?
!!!

なるほど〜、最初はこの名前だったのね、というちょっと恥ずかしいかもしれない秘密をこっそり明かしてみる。
でもダジャレK林製薬風味からの改名後、現場で見かけることが増えたように思う。実はオシャレな改名が功を奏した製品でもあるのだった。


いやぁネーミングって、本当に難しいですね。


※参考文献


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