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フロフタ&ギャンブル ~手すりの好敵手たち ② 浴室編

①からの続き、浴室編である。


浴室でも手すりに対して、いくつかのライバルが立ちはだかる。シャワーフックや浴槽廻りの混合水栓に給湯器リモコン、などがあるが、これらはもはや雑魚敵である。ボスに当たる前にバッサバッサと斬っていこう。

シャワーフック

近年はこんなものが登場し、旋風を巻き起こしている。

ユニットバスの壁が鋼板である場合、マグネットアクセサリーの登場以降、シャワーフックや棚はもはやつけ放題である。なので、手すりに合わせてフックを取り外しても、これひとつ導入しておけば、欲しい位置にだいたい設置できるし、あとから移動もできる。

また、縦棒に沿ってシャワーフックが移動できるスライドバーがついている場合も、最近のものは手すりと同等の強度を持たせている。こちらはそれを確認し、もし旧型のひ弱なバーだった場合は、手すり増設をお勧めしている。

混合水栓

いわゆる吐水口である。英語でいうとspout。噴出するが転じて、べらべら喋りまくる、という意味まであるらしい。
そんな存在感のある浴槽への吐水口だが、最近のユニットバスではもはや絶滅危惧種である。給湯器とつながる、浴槽内の循環金具から全自動のお湯張りや足し湯、足し水もできるし、シャワーが届けばお掃除もできるので、要らなくなったのだ。

たまにこれが残っているケースもあって、そういう場合はその操作を考慮して手すりの位置が決まるけど、これは利用者さんの動作を見て淡々と対応するのみである。

それぞれ使えるかを確認して付ける

給湯器リモコン

撤去や位置の移動は難しいが、そのものが薄型なので、その操作の妨げにならない手すりの位置を考慮するくらいか。また、操作パネルの一部はフラップ型(開閉式)になっていることが多い。その内側の操作ができなくなると困るので、その点も注意して手すりを設置する。なのでリモコンをまたいで手すりを設置するようなことはあまりお勧めできない。

あと、周囲に手すりを取り付けるときは配線に絡む可能性がゼロではないので、いちおう注意しながらやる。で、設置が終わったあとに電源がつくかの確認はやらねばならぬ。幸い今のところ、点かなかったことはない。

雑魚はこれで片付けた。では気を引き締めてラスボスに向かおう。


風呂ふた


これだけは、非常に厄介なことになっている。
新しいお風呂ほど、こいつが強敵になっているのだ。その理由が、

「省エネルギー」

だからである。
魔法びん浴槽とか、サーモバスとか、そんな商品名に聞き覚えのある方もいるであろう。

これらはその性能を高めるために、浴槽の外側を発泡スチロールで巻いている。そして、上からも熱が逃げないように、専用フタにも断熱を施す。その結果、朝になってもまだお湯が温かく、二酸化炭素排出量削減にも寄与し、お財布にも優しいありがたいお風呂となる。

それはそれで良いのだ。だがこれを見てほしい。

我が家の10年落ちの断熱フタ

縁にカビが生えてますね、とか随分くたびれてますね、とかそういう話をしたいわけではなく。

断熱専用フタは、厚く、大きいのだ。

なので、そのための保管スペースをあらかじめ確保してあるのだが、それがほぼこの位置になる。出し入れの際は手前側にスライドするか、下からフックの内側にはめ込む物が多い。なので、

洗面所への出入りや、浴槽出入りのための手すりをつけたい時に、付けられる場所がない問題が発生しているのだ。

以前はよく見たロール式の蓋なら、このように何も問題はなかったのだが。

浴槽と脱衣室出入り兼用手すりです

ま、困っていてもしょうがない。

浴室の出入りについては、ドア開閉時の安定はともかく、浴室入口の出入りについてはこれでなんとかなる。

脱衣室側につければいいじゃない

問題は浴槽への出入りである。

ならそれについても、反対側から跨げばいいじゃない、と思うと、
そちらにも落とし穴がありがちである。

洗い場のカウンターがあると壁に触りにくい

洗い場のカウンターや、浴槽の出っ張り部分(半身浴をしたり、足を乗せたりする部分)があって、出入りにはそれらが微妙に使いにくいケースが生まれている。なので、福祉用具のバスグリップを頼ったりして調整したりする。

ちなみに最近のユニットバスだと、そのあたりを一体的に調整してデザインされたものもある。

LIXIL 戸建住宅用システムバス「リデア」カタログより

この画像の製品は、さらにフタの1/3をバスボード状に折りたたみ設置出来るようにして(上画像)、残った2/3のフタ開閉時の持ち上げ手間を減らしている。また、横手すりが壁面全体をまわるように設置ができるようになっているが、出幅は普通の手すりより抑え気味である。個人的には今ユニットバスを入れるならこれを試したい。

というわけで、メーカー各社の競争のなかで、この問題は徐々に進化し、解決に近づいている様子ではある。でも、筋力が衰えた高齢者にとって、かさばる風呂蓋の開閉が自力で可能か、そしてそれが必要な手すり設置の妨げにならないかという問題は、やっぱりやってみないとわからない、ギャンブルである部分があるのだ。

そんなギャンブルなどできない、安全策を取りたい。

そういったときは、その妨げになりそうな壁への手すり設置をあきらめて、貸与品のこれを使うこともある。

こちらは高さのあるバージョン

なぜか浴室用手すりなのに介護保険では貸与対象の、
「ふくよく床置き式手すり 水回りにもってこい」である。

いざというときに動かせる、何なら返却できるのがメリット、
置き型なので引張動作に弱く、掃除が面倒なのがデメリット。

だが、入浴廻りの切実な相談を受ける立場として、背に腹は変えられない時の引き出しとして覚えておいて困ることはない。

このように、お風呂のフタは本当に侮れない。なので、現地調査の際には、身体動作確認だけでなく、生活動作の確認も必要である、といつも心してかかるようにしているのであった。
たぶんこれがADL(日常生活動作)だけでなくIADL(インスツルメンタルADL:手段的日常生活動作)もね、というやつですね。

おまけ

また、さっきはサラッと流したが、ロールの蓋にも落とし穴はある。

さてどこに気配りが足りなかったでしょう

おわかりだろうか。

BEFOREがこれ

そう、バスグリップ併用の場合、反対側に低い横手すりをつけるとロールフタの操作が困難になってしまうのであった。設置時に動作を確認した際に、横手すりを下げてほしいと言われて、設置してから気づいたよ。

やらかしの記録シリーズで取り上げようかと思ったが、フタの話でこれを入れないのも何だなと思い、恥ずかしながらこちらでお伝えする次第である。

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