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言葉の宝箱 0752【やさしい人って、いろいろなことが見えるから。心がすり減ったのかもしれないね】


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『小説の書きかた』須藤靖貴(講談社2015/9/4)

神奈川県立横須賀文翔高校文芸部は2年生ばかりの総勢4人。
キミコ、ハルノ、カエデの女子3人は大造の指導の下、
小説誌の新人賞に共作で応募し、文化祭で発表することになった。
原稿用紙300枚を10枚ずつ、女子3人がリレー形式で書いていくという。
大造は編集者の役回りだ。
キミコは悩んだ。4月までサッカー部にいて、
小説なんて書いたことがないのはもちろん、まるで読んだことがない。
*アイポ(アイポイント/小説の語り手のアイポイント=視点を定める)
*ストップ&ゴー(体言止めを気にしない)
*シルコジオ(汁粉・塩/悲しいときこそ明るく描く)
大造の文章指導は独創的だ。独自のメソッドで書き進み、
夏の千葉・内房合宿で、プロの小説家の藤堂久作に出会い、
共作小説は順調に仕上がっていく。
キミコもなんとか小説作法を身につけていったが……!?

部活で小説新人賞に共作で応募する話。ハウツー本としても愉しめる。


・「共同体?」
「共通の目的で人が集まること。高校も、クラスも、部活も。家族もね。
豊かで幸せになろうって共通の目的がある。
きみたちには『いい小説を書こう』って共同体だ」(略)
「共同体づくりをテーマにしている小説は多いんだよ。
共通の目的を持っているけど、人って気質も能力もそれぞれだから、
すんなりいかないことのほうが多い。
それは小説の大きなテーマになるんだ」 P135

・やさしい人って、いろいろなことが見えるから。
ひょっとしたら、心がすり減ったのかもしれないね。
だけど、やさしくない人より百倍すてきだよ P137

・小説を書くって、孤独に耐えることなんだ P223

・総じて好感の持てる作品だったが、やはりなにかが不足している。
「これを書かなきゃ生きていけない」といった迫力。
「こんな作品は、ほかのだれにも書けやしないだろう」という闘争心。
おそらく原因は、作品の核となる思いつきを、突きつめていないせいだ。
自らの思いつきをとことん愛し、鍛え、大きくする。
それがいちばん大事なことかもしれない。
こぢんまりとまとまった上手な作品よりも、
下手でもエネルギーに満ちた作品が新人賞をとることはめずらしくない。
完成度より爆発力。着地より飛翔 P248

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