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はじめに
 4月20日~5月4日は穀雨(こくう)です。穀雨とは、穀物を成長させるために潤す春雨の時期を指します。春に芽吹いた草花が成長をはじめ、水分を得てグングンと大きくなっていく時期です。また、この時期は春の土用の時期と重なり、根を張り始めた植物の成長を妨げることから、昔からむやみに土を掘り起こさない方が良いと言われています。
 一方、この時期は湿度が高いことから、身体の不調も多く、心と体のバランスが乱れるため、思い悩みやすい時期でもあります。そのため、余分なものを発散させることが大切です。
 
節気のサイン
 穀雨は草木が芽吹き始め、いきいきしている時期です。
季節の始まりの初候には、チューリップが咲き乱れるとともに、ゴボウや鯵が旬を迎えます。また、この時期は朝がとても暖かくなることから、「春眠暁を覚えず」というようになかなか起きられない時期です。そして、季節が進む次項では、ヨモギが旬を迎えます。ヨモギはミネラルや食物繊維が多い上、殺菌作用もあることからヨモギ餅などヨモギを混ぜた多くの食材が食卓にのぼり始めます。また、五風十雨ともいわれ、5日に1回風が吹き、10日に1回雨が降るという、過ごしやすい時期になります。
終わりである末候にはボタンの花が咲き、サザエやこごみという山菜が旬を迎えます。そして、立春から数えて八十八目の夜は八十八夜と呼ばれ、茶摘みの時期であるとともに、夏の始まりを教えてくれる季節のサインとなります。
 
カラダの特徴
 穀雨は、雨が降り穀物にはとてもよい季節ですが、人間にとっては湿度が高く、体調を壊しやすい時期です。特に、この時期の雨によって体内に湿気を貯めこむと、外界の水分とも重なり、身体がおもだるくなり、むくみます。そのため、この時期は水分コントロールがとても重要です。さらに、湿度が高く暖かいことで、食中毒も発生しやすく、胃腸を壊しやすい時期でもあります。体が熱くなったからと言って冷たいものばかり飲むと、身体がむくみ、だるくなるだけでなく、胃腸の調子も悪くします。
 なお、この時期は春の疲れがたまり、心身ともに不調を起こすことから、思い悩みやすい時期でもあります。元々ストレスは胃腸を壊すことから、身体だけでなく、心の状態をコントロールすることが何よりも大切です。
 
こころの特徴
 穀雨は、春の疲れも重なり、体調も優れないことから、何かと思い悩みやすい時期です。東洋医学では思い悩むと胃腸を壊しやすいことが知られています。更に、水分代謝の不調による胃腸への負担も少なくありません。
 そのため、体調を整えるだけでなく、思い悩まないように心の管理をすることが何よりも大切です。身体の不調は心に多くの負担をかけます。心身ともにケアが必要な時期です。
 
カラダとこころの養生
 この時期で大切なことは、水分コントロールとストレス解消です。時期的に雨が多く、体内に水分が貯まりやすいことから、水分の取りすぎには注意しましょう。なお、体内の水分状態は舌の上に生えている苔の状態でわかります。正常では苔(こけ)は認められません。しかし、体内に水分が多くたまっているときは苔が多くなります。特に、黄色い苔はストレスにより胃酸分泌が過剰となり、胃腸に熱を持っている状態、白い苔はストレスが長期間続くことで全身の筋肉が硬くなり循環が悪くなるとともに、体が冷えている状態を表しています。
 毎日、舌の苔の状態を確認し、黄色い苔は心の管理を、白い苔は身体の管理を行うことが大切です。
 
食養生
 この季節に効果的な食材は「よもぎ」です。「よもぎ」は消毒殺菌作用があるとともに、止血にも用いられます。また、お灸にも用いられる万能な植物です。特に、食した場合は利尿作用があり、止血作用もあることから血尿や生理過多などの出血による貧血にも用いられることがあります。
 
お勧めのツボ
 この季節にお勧めのツボは、「内関(ないかん)」です。内関は、手首の内側のしわ中央から指3本分ほど離れた部位で、吐き気やむかつきなどの胃腸のコントロールに用いられるとともに、気分を落ち着けたり、安定させる作用もあります。なお、内関はつわりや抗がん剤による吐き気、乗り物酔いなどにも用いられることから、様々な吐き気の軽減に有効です。
 
この時期に多い症状の対処法
思い悩む
 この時期は心身の疲れがピークになることで、心と体のバランスを崩しやすい時期です。東洋医学では心身一如と言われるように、心と体は繋がっていると考えていることから、普段以上に些細なことでも不安になり、何かと思い悩みやすい時期となります。そのため、心身のバランスを整え、心を落ち着かせ、安定させるようにしましょう。
一生懸命頑張りすぎでいる頑張り屋さんタイプは、身体が硬いために、水分代謝をはじめとした循環がうまくいっていません。まずは、身体の筋肉を緩ませ、身体を動かすことで身体の調子を整えることから心の状態をコントロールしましょう。また、生活リズムが乱れることによっておこる生活習慣タイプは、食習慣が悪く、心をコントロールするためのセロトニンなどの神経伝達物質の材料を食物から摂取できず、バランスよく作れない可能性が考えられます。そのため、食事の内容を見直す必要があります。
最後に年齢による加齢タイプは、体力の低下が疲れを招き、思い悩みやすい状態にある可能性があります。体力をつけることで、心と体のバランスを整えましょう。
 
タイプ別ストレスの対処法
 頑張り屋さんタイプは、身体が硬く、全身の循環が滞っている可能性があります。そのため、全身の循環を良くするためにも一定リズムで歩くことが大切です。特に歩行のリズムはとても重要です。平均的な歩行速度は100ビートと言われていますが、心を落ち着けるには90-80ビートの比較的ゆっくりとしたリズムが良いと思われます。ゆっくりとしたリズムで1日15-30分ほど、日光を浴びながら歩いてみましょう。
生活習慣タイプは、食事の偏りが原因です。特に心の状態をコントロールしているセロトニンという神経伝達物質はトリプトファンと呼ばれる豆類や鶏肉などに含まれている成分が必要です。これらの物質をふんだんに取ることが大切です。また、セロトニンの合成にはトリプトファンの摂取に加えて、ビタミンB6(にんにく、しょうがなど)、炭水化物(くだもの、イモ類など)と太陽の光に当たることが大切です。
最後に加齢タイプは体力をつけることが大切です。そのためには、ゆっくりした動きを基調としたスロトレスクワットが効果的です。スロトレスクワットは通常のスクワットとは異なり、屈伸を繰り返すのではなく、曲げた状態を数秒程度キープする運動を1日30回程行ってみましょう。屈伸を繰り返すよりも筋肉に負荷がかかり、筋力をつけるには効果的です。
 
おわりに
 穀雨は、春の疲れがたまるだけでなく、季節的に雨も多いことから体調を崩しやすい時期です。疲れが重なると胃腸に負担をかけるだけでなく、心のバランス乱し、些細なことでも気になり、思い悩みやすくなります。そのため、生活の根底を見つめ直し、運動と食事のバランスを整えるようにしましょう。
 なお、次は夏の季節になります。夏はさらに色々なものが活発に動くことから、疲れが増して、心のトラブルを起こしがちです。春の疲れは春のうちに解消し、身体も心
もリフレッシュした形で、新しい季節を迎えましょう。

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