ティーソーダ 3
小さな泡がのぼっていく様子は美しい。
泡と一緒に紅茶の香りも鼻の先まで立ちのぼってくる。
なんという茶葉の香りなのか私は知らない。
すがすがしく、すっきりとした香りだ。
この香りに諭されて、体に染みついていた心配事がだんだん小さくなっていく。
頭の中に溜まり続けた、ぐずぐずとした考えは、小さく小さく萎んでいって、ものすごく濃い、ぎゅうっと詰まった塊になる。もうこれ以上は無理というほどに小さくなると、その瞬間、いきなり、ぶわっと拡がって、細かい細かい霧に変わる。そして、その霧は、あっという間に私の中から逃げていってしまう。
空っぽの体が心地よい。
この空洞には紅茶の香りだけがある。
澄みきったさわやかな香りが充満している。
(つづく)
「ティーソーダ」は「金魚」のつづきのおはなしです。
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