金魚 10
小さな紙切れが落ちているのが目にとまると、それを手帳に挟んでおいた自分のメモ用紙に違いないと思い込み、駆け寄り拾って確かめる。
メモではない。ただの紙くずだと確認しても、そのままその場に落としていくこともできず、ごみ箱を探す羽目になる。
ごみ箱を見つけて紙切れを捨ててしまうと、今度は、さっき捨てた紙切れは本当に自分のメモ用紙ではなかっただろうかと疑いだす。
実際にメモをなくした覚えはない。
だけど、もしもということを考えてしまう。
考えだしたらもうだめで、どうやっても心配を拭い去れない。
どうにもこうにも落ち着かない。
(つづく)
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