見出し画像

【天気】日本海側に大雪をもたらすJPCZとは

■ 日本海側の大雪

 日本海側の各地が大雪で大変なことになっていますね。。新潟県・富山県を中心に、48時間・72時間の降雪量で記録を更新している地点が多々あります。

 福井や富山の平地でも積雪が1mを超えている地点があり、平年比300%以上となっている地点も多いようです。日本海側と言えども平地で1mの積雪は滅多にあるものではなく、各地で道路の立ち往生などが生じています。

 アメダスの富山の積雪深を見てみると、1/9時点で127cmとなっており、1985-1986年のいわゆる六一豪雪とよばれる大雪と匹敵する積雪深となっています。少なくともここ30年間では最大の積雪深となっているようです。

■ 冬型の気圧配置

 日本海側で冬場に雪が降るのは、いわゆる「西高東低の冬型の気圧配置」のパターンです。日本の西側に高気圧があって、日本の東側に低気圧があって、日本付近の等圧線が縦縞になるような天気図です。毎年冬場になると何回かこういう気圧配置になるので、天気予報でもよく話題になると思います。

 冬型の気圧配置になると、大陸から冷たい北西風が日本に流れ込んできます。そしてその冷たい季節風は、日本海の温かい海水に温められて雲になります。「海が温かいわけないやろ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、真冬のマイナス何度という空気より、実は海面(5~15度)の方が暖かいんですね。だから大陸からの乾いた冷たい空気が、日本海から水蒸気と熱をもらってしまうので雲ができるわけですね。

 そして日本海を進む間にその雲はぐんぐん成長して積乱雲になります。この積乱雲は夏場とは違いそれほど雲頂は高くないのですが、そもそも冬という事で気温が低いため、降ってくるものは雪です。

 それが本州の日本海側にぶつかると同じ場所で雪が降り続くので、日本海側の山岳域を中心に大雪になるんですね。

 ひまわりの衛星画像を見ても、大陸から少し進んだところで雲ができ始めていることが分かります。その先の進行方向の日本海は真っ白になっていることが分かりますね。これが雪をもたらす積乱雲です。

 ここでポイントが1つあります。なんとこの現象、「大陸から冷たい風が吹くだけ」で起こってしまうんですね。だって冷たい風が日本海側を通過すると自然と雪雲が発達してくれるので、自然の側からすれば「冷たい北西風を日本海に送り込む」だけで良いので、日本海側に雪を降らすことは超イージーモードなんですね。

 この風の吹き方は先ほどの「西高東低の冬型の気圧配置」の時に起こり、そのたびに日本海側で2~3日は雪が降り続きます。冬場は大体1週間周期ぐらいで冬型とその他の気圧配置を行ったり来たりするので、ひと冬の中にこのような冬型は何度か見られます。

 関東のように雪があまり降らない地域でも、冬型の気圧配置になると冷たい北西風が吹くので寒くなります。その回数が多かったり少なかったりすることで、今年の冬は寒かった・暖かかったという違いになります。

 でも今回の大雪で話題になっているのは富山・金沢・新潟などの平地ですよね。普段の冬型と何が違うのでしょうか。

■ JPCZ

 今回は普段の冬型に加えてJPCZと呼ばれる現象が合わさることで、大雪に拍車がかかっています。

 JPCZは、日本海寒帯気団収束帯と呼ばれる収束帯です。Wikipediaを見てみましょう。

日本海寒帯気団収束帯(にほんかいかんたいきだんしゅうそくたい、Japan sea Polar air mass Convergence Zone, JPCZ)とは、冬季に日本海で形成される、長さ1,000km程度の収束帯のことである。

 ざっくりとイメージを解説します。大陸の中国と北朝鮮の国境付近には長白山脈という2500m級の山岳域があり、大陸からの季節風がそこを通る時に、空気が南北に分離してしまうんですね。

 その南北に分離した風が日本海で再び合流するのですが、その合流した地点では、風がぶつかって上昇する作用が働くので、更に積乱雲が発達しやすくなってしまうんですね。。

https://himawari8.nict.go.jp/ja/himawari8-movie.htm

 そして全体の風の流れは2~3日程度ほぼ同じ方向に吹くので、合流地点で発達した積乱雲が流れる方向が、2~3日同じ地域に向いてしまうんですね。今回はこのJPCZの位置がほとんど変わらなかったことにより、その矛先が富山・金沢・上越あたりに向いてしまい、ここ数日でもの凄い量の雪が降りました。

 夏場の梅雨前線や線状降水帯も、こうした風の収束域が長時間停滞することによって同じ地域に長い時間強い雨が降り、大規模な災害をもたらします。

 風が吹いたことによって日本海側に広く雪が降ることは予測できるのですが、この収束帯がどこでできて、その雲がどこに流れて行って、どのくらいの期間続くのか、という点は一気にスケールが小さい現象になり予測が困難です。

 風の流れが少しずれると佐渡ヶ島になるかもしれないし、年末のように島根や鳥取まで下りてくることもあります。とにかく収束して線状になった強い雨や雪がどのエリアにかかりそうか、そしてそれがどのくらい停滞しそうか、という点は現在の気象予測でも最も難しい予測の1つだと言えます。

 予報の精度は年々向上しているので、今回の豪雪も数日前から注意は促していたのですが、やはり実際に降ってしまうと被害は出てしまいますね。。今後数日は雪が止みそうなので、今回の大雪で被害に遭われた地域の除雪やライフラインの確保などが進むことを祈ります。

※12日は反対に関東で雪になることが予想されます。積雪はしないと思いますが、関東の皆様も交通機関の乱れなどにご注意ください。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?