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虫売り(その2 全2回)

そこで、すず虫を飼育して増やせないかと工夫してみたんだけどうまくいかず。あちこちにスズムシの飼育がうまいもんはいないかと野菜売りしながら見つけていたんだよ。そこにきてくれたのがキリヤマというお侍さん。ちっぽけなお殿様の家来だったらしいけど、武士の仕事はそっちのけでスズムシの飼育の研究を一生懸命にしてくれたんだ。あれやこれや、失敗しながらもやっとスズムシの累代るいだい飼育『子孫を続けてう』に成功したんだ。
土の中にあるすず虫の卵をダニなんかの虫が食い荒らしてしまう。そこで、水につけた桜墨、その墨を土の上に乗せて置く。するとダニが出てくることなく卵が守られたんだ。墨にはダニを退治する力があったんだね。このことを発見したキリヤマさんは本格的にカメで飼育を始めたんだ。沢山のすず虫が増えていった。それからは天秤棒に乗せられて四方八方へと売られていったんだよ。
江戸の町では、あちこちの路地から路地へとスズムシの音色が流れていったよ。きっと、お夕飯を食べながらスズムシの声を聞いていたことだよね。
最後まで読んでくれてありがとう、ポン!

#雑学

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