雲水(うんすい)とこんにゃく問答 その2(全2回)


和尚さんが言うのには、炭火を投げ上げた訳は、
「晩方(ばんかた)になれば、あの雲水がきっと帰って来るじゃろう。こうして火を高く投げるとはな、まだ陽が高い。お天道様(おてんとうさま)太陽が高いから、そこらを回って来いということなんじゃよ。」
やっぱり、その日の晩にあの雲水がまたお寺へやってきた。今度は三人で櫓(ろ)を囲んで話をしたんだよ。最初に雲水が言ったよ。
「わしが両手の親指と人差し指とで、ちっこい丸をこさえて見せたのは、にってんじ、という問題だった。そしたらお前が両腕ででっかい丸をこさえたから、がんてんじ、という答えだと返すじゃないか。次にわしが、三千世界と質問したら、お前は五本の指を出してみせて、(五戒で保つ)(ごかいでたもつ)と答えるじゃないか。最後の四本指で、(四恩は)と聞いたら、あかんべーをして見せたから、目の下にあり、ということじゃ。それで答えは全部あっていたから、偉いっちゅうつもりで、頭を下げたんじゃよ。」
それを聞いて、お爺さんは恥ずかしそうに言ったよ。
「ほう、ワシが考えていたのとは、えらく違っているわい。最初に小っこい丸を見せられた時は、お前んとこのこんやくは、こんなに小さいんだろ?と言われたと思ってなぁ。冗談じゃない、こーんくらいでっかいぞ、と両腕で丸を作ったんじゃよ。そうしたら、三本指を見せられたから、そのこんにゃくを一つ三文で売れっちゅうことだなと思ってな。何言ってんだい、こんなにでっかいやつを、たった三文なんぞで売れるか。五文よりかまけはせんぞと、五本の指を出した。そしたら、四本の指を出して、四文にまけろと言うじゃないか。びた一文まけたくはないから、いやだと、あかんべーをした訳じゃよ。そしたら、謝って頭を下げたから、そらみろと如意棒(にょいぼう)でこつりとした訳じゃ」
「おうおう、ワシは小突かれ損だったのぉ」
三人は笑いながら、美味しく炊いたこんにゃくを食べながら夜更けまで話をしていたってさ。

最後まで読んでくれて、ありがとう。

お休み、ポン!

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