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せとのもの祭の雨(その1 全3回)

愛知県の瀬戸市で開かれる『せともの祭』のお話を聞いたよ。
ポンと昔。
谷田川やだがわをずっと上って、猿投山さなげやまふもとに瀬戸の町はあるんだ。
この瀬戸の奥には、たじみ、とき、みずなみ、なんていうとってもいい土の出る所が多いから昔から、焼き物が沢山作られていたんだ。
江戸時代の中ごろ。
この瀬戸の焼き物師に腕のいい民吉民吉がいたよ。
いい土があると聞けばどの山にでも行って、土を見つけていたんだ。
「民吉よ。旅のもんに聞いたがな。天草あまくさには白くてうすい茶わんなんかを焼くいい焼きもんがあるってことだ。瀬戸物とは違ってな、つやつやと手触りのいいもんらしい」
「天草とはどこじゃ?」
「遠いさ。九州の一番遠い所じゃよ」
民吉はその話を聞いたらもういてもたてもいられなくなってしまったよ。その白くてつやつやしたという器を見てみたい。どうしてもその焼き方を知りたい。
「天草へ行ってくるからの」
民吉はね、お嫁さんと子供にそう言うと天草へ向かって旅立ったんだ。何か月もかかってやっと天草の町にたどりついた。そうして煙突えんとつのあるところを一軒一軒訪ねていったんだ。
「こちらで作るこの白い焼き物の作り方をどうか教えてください」
民吉は玄関先に置かれていた器を見て一生懸命いっしょうけんめいに頼んだんだよ。
「この焼き物の作り方は、秘伝じゃ。他国のもんに教えることは、お上からもきびしくいましめられてるでな。気の毒だがあきらめてくだされ」
主人はこう言うばかりだったよ。でもね、民吉はあきらめなかった。毎日毎日頼みにいったんだ。

今日はここまで、よんでくれてありがとう!続きは明日のお楽しみ!お休み、ポン!

#瀬戸物 #加藤民吉

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