幽霊の恋 その2(全5回)


萩原新三郎(はぎわらしんざぶろう)が釣りをしていると、コロリコロリと良いお琴の音がするんでな。新三郎は岸に上がって、お露さんの家の裏口に行ってみたんじゃよ。そこにはな、女中のお米(およね)さんがいて、部屋の奥にいるお露さんのところへと案内してくれたんじゃよ。お露さんも新三郎もな、若いもん同志、話がよくあってなぁ。楽しく話をしていたんじゃよ。新三郎は毎日毎日お露さんところへ通っていったんじゃと。
そんなある日のことじゃよ。お露さんがお近づきのしるしにと言って、母上の形見だという秋草の綺麗な模様のついた香炉(こうろ)をくれたんじゃよ。香炉というのはな、いい匂いを出すもんを薫く(たく)器のことじゃよ。新三郎は喜んで、その香炉をもらったんじゃ。と、その時じゃよ。
「おお、お国と源次郎め。よくもよくも、わしをこんな目にあわせたな。え、えーい」
障子(しょうじ)をさらりと開けて、ものすごい形相(ぎょうそう)の平左衛門(へいざえもん)が、刀を振り上げて部屋の中に入ってきたんじゃよ。お露さんはびっくりして、新三郎さんをかばったんじゃ。平左衛門の刀は、お露さんの白い首に降り下ろされてしまった。新三郎もな、お露さんの体の下から転げ出たところを、串刺しにされてしまったんじゃよ。

「ははは、思い知ったか。お国め、源次郎め。ははは、思い知ったか」
平左衛門は大声で高笑いするとな、自分のお腹に刀を差して、そこで死んでしまったんじゃ。その時じゃよ。
「うーむ、おや? 確かに私は殺されたはずであるのに。生きているではないか」

今日はここまでだよ。
今日も読んでくれて、ありがとう。
続きは、また明日。ポン!

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