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せとのもの祭の雨(その3 全3回)

民吉はね、そのご褒美でお殿様から大きなお屋敷やしきをもらったんだよ。お嫁さんと子供と幸せにらしていたんだ。
そんなある日。天草から民吉のお嫁さんがたづねてきたんだよ。突然にいなくなってしまった民吉をさがしてここまできたんだ。
「天草から来た者です。民吉さんのお家はこちらですか?」
旅疲れのせいか元気がなかったよ。
「はい、私が民吉の妻ですが、あなた様は主人が天草にいた時のお知り合いでございますか?」
「え、民吉さんの奥さんですか?」
天草のお嫁さんはその時すべてを知ったんだ。
「いいえ。知り合いではございません。人違いのようでした」
天草のお嫁さんはね、庭で遊ぶ民吉に良く似た子供がいるのを見たよ。そうして、ゆっくり歩いてこの瀬戸の町を後にしていったんだ。
民吉の伝えた焼き物は日本中に広まっていったよ。瀬戸物といえば、民吉が伝えた磁器のことさ。
瀬戸の町ではね。民吉を『かまかみ神社』におまつりして
年に1度、
9月に『せともの祭』をしているんだって。
今でもその日は、瀬戸川沿いに、ずらりと焼き物を並べた露店ろてんがつずいているよ。大勢の人たちでにぎわっているんだ。
でもね、毎年きまってこの日には雨がふるんだって。
土地の人たちは
『天草の女の人が泣いてるよ』
って言っているんだって。
『せともの祭』にる雨は天草のお嫁さんの涙だったんだね。

最後まで読んでくれてありがとう、ポン!

#瀬戸物 #加藤民吉

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