中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と中臣鎌足(なかとみのかまたり)との出会いと乙巳の変(いっしのへん)その3(4分割)


645年の6月12日のことだよ。中大兄皇子が19歳の時のことさ。宮中(きゅうちゅう)の大極殿(だいごくでん)で唐三国(とうさんごく)、百済、新羅、高句麗(くだら、しらぎ、こうくり)の使者の上表分(じょうひょうぶん)を読み上げて、朝鮮から持ってきてくれた貢物(みつぎもの)を受け取る儀式だったんだ。

この儀式に参加した人たちはね。皇極天皇(こうぎょくてんのう)(中大兄皇子のお母上だね)の他、中大兄皇子の親戚の人たちばかりだったんだよ。その他にも身分の低いものが何人かこの儀式にはいたんだよ。

この日の儀式に蘇我入鹿(そがのいるか)はこの中で一番遅れてお部屋に入ってきたんだ。すると、御所(ごしょ)のすべての扉が静かに締められた。入鹿は気づいていないんだよ。そこへ道化役の芸人が入鹿に近寄ると、おどけて、
「そちらのお剣をお預かりますわん」
なんて言ったものだから、つい入鹿も剣を笑いながら渡してしまったよ。儀式は静かにおごそかに始まっていった。外は雨が降り出してきた。蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらのやまだのいしかわのまろ)が上表文(じょうひょうぶんを)読み上げ始める。これが合図だったんだ。けれどね、若い武人の佐伯連子麻呂(さえきのむらじこまろ)と稚犬養連網田(わかいぬかいのむらじあみた)は一番後ろの席で剣を隠し持って震えていたんだよ。天皇と同じように力を持っている蘇我入鹿を剣で刺すなんてことがあまりにも恐れ多くてね。急に怖くなってしまったんだ。

今日はこごまで、また明日。ポン!

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