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虫売り(その1 全2回)

縁日では、虫かごで、りーん、りーんとないているスズムシを売っているのを見たことあるよね。
この虫売りってね、日本ならではのものらしいよ。
平安時代の歌の中にはかごに入った虫の音を聞くというのがあるから、1千年以上前から楽しまれてきたことなんだね。江戸時代には虫売りがはやっていたって。
ポンと昔。
今から300年くらい前のこと。元禄文化の華やかなころ。所は江戸の神田。忠蔵ちゅうぞうさんは毎日朝と夕方に天秤棒てんびんぼうにいろんな野菜をのせて、江戸の町中を売り歩いていたんだ。
昼間の暑さに変わって夕風が気持ちよくなってき夏も終わりごろのことさ。
上野の根岸で、スズムシがきれいにないていた。スズムシたちがあっちからこっちからと大合唱さ。途中ころころとコウロギが歌っている。忠蔵さんは天秤棒を下ろしてちょっと休んで聞いていたんだよ。
もともと虫が大好きだった忠蔵さんは早速そこらにいたスズムシを何匹か捕まえて家につれて帰ったんだ。
長屋の忠蔵さんの家からはスズムシのいい声がする。
「1ぴき分けておくれよ」
近所の人から言われて分けてあげたんだ。すると、それを聞きつけて、また別の人がもらいに来た。
「よっしゃ、こりゃ虫で商売になるぞ」忠蔵さんはそれからというもの、すず虫を取ってきては野菜といっしょに天秤棒に乗せてスズムシを売ったんだ。それがよく当たった。よく売れたんだって。

今日はここまで、読んでくれてありがとう!続きは明日のお楽しみ!お休み、ポン!

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