安珍と大蛇になった清姫 その1(全3回)

ポン!
これはな、和歌山県の有田・日高地方に伝わる有名な有名なお話じゃよ。
昔、陸奥の国の(今の福島県)の白河にな、安珍(あんちん)という若い修験者がおった。
修験者ってのはな、山の中でお坊さんになるための勉強と厳しい訓練をしている人たちのことを言うんじゃよ。

ある時、安珍は熊野参りをするためにな、遠く紀伊の国まで旅に出たんじゃよ。紀伊の国とはな、今の和歌山県じゃよ。その旅の途中、真砂(まなご)の村でな、庄司清次(しょうじきよつぐ)さんという庄屋様の家に泊めてもらったんじゃ。たいそう親切にもてなしてもらったんじゃと。その清次さんには13歳になる清姫という娘があってな、清姫もかいがいしく世話をしてくれたんじゃと。安珍もな、親しく清姫と話をしたんじゃと。

ところがな、その夜のことじゃと。安珍が、さて床につこうかと思ったときにな、部屋の襖がそっと開いたんじゃと。安珍はびっくりして身構えたんじゃよ。それは清姫じゃったと。
「安珍さま。わたくしはあなた様のお嫁になりとうございます。どうか私も連れて行ってくださいまし。」
清姫はな、安珍を一目見た時から胸が苦しくなるほど大好きになってしまったんじゃな。
「私はまだ修行中の身だし、これから熊野権現さまの神にお参りに行くところじゃから、、、」
と断ったんじゃがな。清姫はな、なんでかんで連れて行ってくだされてと言うんじゃと。ほとほと困ってしまってな、
「それほどまでにおっしゃるのなら、熊野参りを済ませた帰り、必ず今日から三日後にここに寄りましょう。それまで待っていてくだされ」
と行ってしまっちゃんだと。

今日はここまで、また明日、ポン!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?