舳倉島(へぐらじま)の風 その1(全2回)



ポンと昔のことじゃよ。
能登(のと)の輪島(わじま)っちゅうところに伝わるお話じゃ。

ずうずうーんと昔のことじゃ。
輪島の漁師たちがの、いつものように海に魚を獲りに出たんじゃ。さっきまではそりゃあいい天気じゃったのに、急にビューっと風が吹いてきてな、ひどい嵐になってしまったんじゃ。
小さい船じゃからな、低い波の谷からぐうーんと波のてっぺんまで一気に、ほおり投げられたりしてな。皆、生きた心地はしなかったそうな。けどな、運が良かった。気が付いたらな、どこかの島に打ち上げられておったんじゃ。
「ここはどこじゃいのぉ?」
漁師たちは、浜に上がってどうしたものかと、途方に暮れておったんじゃ。そこへな、一人の若者がどこからともなく来てな、
「私は、舳倉島(へぐらじま)に住む大蛇(だいじゃ)でございます。お願いがございます。実は、向こうの島から訳もなく大ムカデが攻めてきて、困り果てております。どうかお助け下さい。」
と言ってな、クルクルと大蛇の姿に変わったんじゃと。漁師たちはな、びっくりして声も出なかったそうな。そうしているとな、ピカーンと稲妻が光ってな、ゴゴンと海の波が叫んだかと思うとな、そりゃあでっかい大ムカデが飛んできよったんじゃ。

今日はここまで、また明日。ポン!

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