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看護師と患者が一緒にコーヒー?オランダの在宅ケア

以前から興味のあった命にかかわる仕事(病院や介護、グリーフケア)について、海外事例の収集と翻訳をはじめます。のんびり更新の予定です。

ふらっと寄った本屋さんで目に止まった本「ティール組織」。

こちらにオランダのユニークで先進的な介護事情が紹介されていたので、要点を箇条書きでご紹介します。

先に結論を述べると、「患者一人ひとりを大切にした自主的な介護で、医療費も削減された」です。

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従来の在宅ケアは劣悪だった!?

オランダでは19世紀以降、地域看護が行われてきた。地域看護とは、地元の看護師が病人や高齢者の自宅を訪問し、在宅ケアを提供するサービス。

それまでの地域看護は、生産性が過度に重視されたことで、患者宅訪問と処置が機械的になっていた(あらゆる処置に標準時間が設定され、守らなければならない。在宅ケアは時間との争いだった)。

また効率を重視するために、担当する看護師は頻繁に変わることとなった。すると患者の健康状態におけるささいな変化に気づくことができず、医療の質は低下した。患者と看護師の双方にとって負担があるシステムだった。


在宅ケアに革命がおこる

そんな状況に革命がもたらされたのは、2006年「地域看護」という意味のビュートゾルフが設立されたときだった。

看護師が10〜12名のチームに分かれ、約50名の患者を受け持つ。

従来とちがうのは、かなり多くのことを看護師が自主的に決められる点。

具体的には
・どの患者を何人受け持つか
・新しい患者の受け入れ
・ケアプランの作成
・休暇や休日のスケジューリング
・業務管理
・オフィスの決定
・現地のコミュニティにどう溶け込んでいくか
・どの医師や薬局と協力していくか
・どう現地の病院と協力するか

これらを看護師チームが話し合い決めることができる。


患者は一人の人間として尊重される

その結果、一人の患者に対して、一人か二人の看護師が担当することになり、深い信頼が築かれるように。

患者は一人の人間として扱われ尊重される。看護師は、病状や患者自身を理解するためにじっくりと時間をかける。ときにコーヒーでも飲みながら(!)患者と向き合うことも。

ビュートゾルフは「患者がどうしたいか?」を真剣に考えている。目的は、患者ができるだけ自分の面倒を自分で見られるようにすることだ。

それはたとえば、家族や友人、近所の人など、お世話してくれる支援ネットワークをつくること。看護師がそのネットワークをつくる手助けをすることもある。

ビュートゾルフは、できる限り自分たちが実質的に「余計な存在になれる」よう努力している。


革命の成果

ビュートゾルフによる成果は以下の通り。

・一顧客あたりに必要とした介護の時間は、ほかの介護組織よりも40%近く少ないことが明らかに

・患者が緊急病院へ入院するケースは、ほかの組織の3分の2

・平均入院期間が短い

医療費削減効果
(オランダ国内の在宅介護施設がすべてビュートゾルフと同じ成果を上げると、毎年オランダでは20億ユーロ近くが節約できる。アメリカの人口に比例して考えると、およそ490億ドルに相当。)


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