見出し画像

(服を)買う・手放す・生き返らせる

世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」。今回のテーマは「服」、インドネシア在住の武部がお送りします(前回の記事「私の短いジャカルタの夜」はこちら)。
ハッシュタグは #日本にいないエッセイストクラブ 、ぜひメンバー以外の方もお気軽にご参加ください。
過去のラインナップは、随時まとめてあるマガジンにて!

 「コロナ禍ですっかり服を買わなくなった。必要ないし……」という声はけっこう耳にするが、私に関してそれはあまり当てはまらない。ここ1年半、日用品以外の買い物に出ることはほぼなかったのに、服はだいぶ増えた。なぜかといえば、価格がリーズナブルで、オンラインで注文できるすてきなインドネシアの地元ブランドがどんどん出てきていているから。インスタグラムをつらつら見ていると、次々とおすすめが出てくる。そして私は、うっかりポチってしまうのだ。

 思えばインドネシアに住み始めた90年代は、街に欲しい服が売っておらず非常に困った。一番ひどかったのは妊婦時代、パステルカラーのヒラヒラフリル+リボンのワンピースしか売っておらず、日本でまとめてカタログで注文して実家から送ってもらっていた。2000年代にはZARAやMANGOが入って来た。救われた!と思った。同じころ、インドネシアのローカルブランド(X) S.M.Lが誕生した。パサールバルというジャカルタの古い商店街で売っている古着にハマった時期もあった。10年近く前になるかと思うが、今でも気に入って着ている服もある。少しずつ増えてきた素敵ローカルブランドを集めたイベントBrightspot Marketが始まったのが2009年、セレクトショップThe Goods Dept.が開店したのが2010年。ここに行けば欲しい値段で欲しいものがある、という嬉しい状態がようやく出来上がってきた。しかしそれも最近飽きてきたな…と感じていたところガゼン盛り上がって来たのがインスタグラムやオンラインショップ。場所を持たずとも個人的に作って売って発送することができる機動性のせいか、服や布が大好きであろう人たちが立ち上げた個性的なブランドが星の数ほど登場してきた。そして、その中から好みを見つけるのがとにかく楽しい(というか、向こうからこういうの好きでしょ、と煽ってくる)。地元のデザイナーを応援するという大義名分もある上、それまで頼っていたファストファッション離れができるのも嬉しい。

 新しい服が増えたならば、古くて着ない服は手放すに越したことはない。ここ数年で引っ越しを何度か行っているので、そのたびにクローゼットを整理しては寄付をしてきた。それでも着ない服はまだまだたくさんある。さて、今度はどこに寄付するのがいいかな…とインスタ上で情報収集をしていた時に出会ったのがSetali Indonesia(スタリ・インドネシア)だった。

画像1

心を鬼にして整理した成果。大型のショッピングカートに山積み。一応、娘が大きくなって入らなくなった服もあるので、全部私のものというわけではない。

 Setali Indonesiaでは、15㎏につき30万ルピア(2400円くらい)を払うと古着を引き取ってくれる。服の状態は不問。向こうで手配した業者が指定した日に家に取りに来てくれるのだが、私の場合、たまたまメッセージでやりとりしているうちに日本好きだったり共通の友人もいることがわかって意気投合したオーナーのインタンが「うちに遊びにおいでよ!アトリエもあるし、リスニング・バーもあるから!」と言ってくれたので、自分で持っていくことにした(リスニング・バーについては後ほど)。

画像7

インタンのアトリエ

 受け取った古着はまず仕分けを行い、状態の悪いものは切り刻んでごみ銀行に持っていくのだそう。そうでないものは、いろいろ組み合わせてアップサイクリングを行う。つまり、あれやこれを組み合わせて、まったく新しい服に仕立て上げるのだ。インタンはこの活動を大学在学時の2004年から行っているという。インドネシアでごみ問題に対する意識が高まって来たのはここ数年のことだし、中でもファッションのごみ問題が注目され始めたのはつい最近のこと。彼女の目の付け所の鋭さ、コミットメントの強さには驚くべきものがある。ちなみに彼女の今の夢は日本に留学して、刺し子など日本の伝統的なアップサイクリングについて研究することだそう。

インタンとその作品。

 アップサイクリングに関して言えば、自分が寄付した服の中からお気に入りのものを選んで、自分用に作ってもらうこともできる(料金別)。私もこのためにいくつか手放しがたい服を選んでお願いしているところ。出来上がったらこのページで写真をアップしよう。

さて、リスニング・バー。

画像3

画像4

 こちらは彼女が夫とやっているSUBOという名前の隠れ家バーで、完全予約制をとっている。ここについて説明しようとすると陳腐になりそうで怖いからやめときますね。よい音楽と、食事と、おすすめカクテルと。とにかく幸せな気分に満たされる場所。ジャカルタの宝!東京は高円寺のSub Storeのオーナーとインタンの夫さんが兄弟どうしなんだそう。

前回の走者は、沖永良部で起業をしてますます元気なみんなのネルソン水嶋さんでした。

ネルさん、絶対派手シャツ似合う!インドネシアでネルさんに似合いそうなのがある。これこれ。


次回の走者は久々に登場、カタール在住のフクシマタケシさん!
前回の記事はこちらです。

フクシマさんに似合いそうなのはこれかしら。服に関しては一家言ありそうなフクシマさんの記事、お楽しみに!

(12月8日付 追記)
アップサイクルの服が出来上がってきたので自慢。

かなり気に入ってます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?