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同人誌の感想:久慈川栞『標本整理箱』

久慈川栞さんの『標本整理箱』を読みました。

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「公園で怪獣を散歩させていたら職務質問された」「わたしたちは指輪の上で踊る」「なつのおばけ」「或る監督員の記録」と、それぞれに趣が異なる四つの幻想譚が収録されています。

それぞれの物語の題材(ネタといいますか)は、「●●が怪獣として飼われている話」「人間の寿命が近づくにつれて、だんだん透明になっていき最後に●になる話」「帰省先で『なつのおばけ』と出会う話」「(発電所の監督員の目を通じて描かれる)ある国家の話」とわりあい端的な言葉で言い表せるのですが、それを「どんなアプローチで描くのか」とというところが、とても面白かったです。

たとえば「公園で~」はすべて会話文だけで書かれていますし(ラノベ風の長いタイトルもまた面白いですし)、「ある監督員の記録」はその名の通り監督員の日記という体裁で、ある国家とその国民が辿る運命が間接的に描写されています。

「わたしたちは指輪の上で踊る」は変えれば切ない純愛モノにもできそうですし、「なつのおばけ」はともすると「となりのトトロ」みたいなノスタルジックかつファンタジックなお話にもできそう。
私個人の感覚にすぎませんが、そういうお話のほうが多そうな気がします。
でも実際はどちらかというと怖気が立つようなお話に仕上げられていて、個性的で強く印象に残りました。

私は「ある監督員の記録」が特に好きです。
社会主義国家的な全体主義と資本主義国家的な格差社会の悪いところドリみたいな国だな……日本もこの国に似てるとこあるよな……などと思いながら読み進めたので、最後の結末にはぞっとしました。

イベント参加情報&通販情報

『標本整理箱』は、明日2021/9/26開催の文学フリマ大阪で頒布があります。
久慈川さんの「かめねこ書房」のブースは「D-19」とのことです。→webカタログ

また、同日オンライン開催のイベント「ジャンル迷子オンリー vol.0」で通販購入も可能です。
「かめねこ書房」は「え6」です。

BOOTHはこちら。

『標本整理箱』以外も全部面白そうなので全部買っちゃえばいいんじゃないかな!

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